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『浦霞』 株式会社佐浦 【宮城】

味よし、キレよし 芳醇な香り広がる格調高き美酒

 東北随一の都市、杜の都仙台から仙石線に乗り、冬枯れの田園風景の中を30分ほど揺られると、本塩釜の駅に着く。ここは、塩釜港を控える港町。そして、奥州一之宮として全国から深い崇敬を集める堂々とした風格の鹽竃しおがま神社がある。今回訪れた「浦霞」の蔵元、(株)佐浦は、この鹽竃神社とゆかりの深い蔵元である。

 信仰の厚かった伊達藩から、鹽竃神社に奉納する御神酒造りの看板をもらったのが、享保9年(1724年)。この年が正式な創業とされる。すでに260年余の歴史を持つ蔵元である。建造されてから120年以上は経つという、どっしりとして、何とも言えない風情のある酒蔵に、その長い歳月がうかがわれる。




訪れたのが、ちょうど仕込みの最中だった。蔵人たちが忙しそうに立ち働き、活気に満ちている。酒蔵に入ると、ふわっとあま酸っぱい香りに包まれる。ブクブクと発酵を重ねる麹は、「いい酒になる、なる」と、声なき声を発しているかのようだ。「原料のいい条件を整え、吟味して、よりいい酒をつくる、これがうちの信条です。」と社長の佐浦氏は語る。
 仕込みは3月いっぱいまで行われる。そして4月になり、槽がけされ(絞られ)、できあがった新酒は、頃合を見て、火入れ殺菌されてから土造蔵の中でタンクに貯蔵され、そして静かに熟成されていく。数か月寝かせることで、酒がならされ、まろやかな味と香りが生まれるのだという。新酒がもてはやされる風潮の中、佐浦では、あくまでも本物の酒の味と香りにこだわっている。香りを出すのが得意というだけに、その香りのよさは天下一品。特別吟醸をいただいたが、口に含んだ瞬間、芳醇な吟醸香が広がる。味があるのに、スッキリとキレのいいのどごし。飲みあきしない極上の味だ。そのコツを杜氏の平野氏に尋ねてみた。「酒の味を大きく左右するのは、麹、酒母、醪。これをつくる過程できめ細やかな配慮が必要です。」とても、ひと言で語れるものではなく、長年の経験に培われた杜氏のカンに他ならないだろう。


 残念なことに、特別吟醸は年に2回、数量限定で出荷されるだけである。吟醸酒のレベルを高く位置づけているだけに、それほど量のつくれるものではない。そこで、比較的手に入りやすいものとして「浦霞禅」がある。厳選した米を55%に磨き上げ、吟味してつくられる純米酒だ。一般的には充分“吟醸酒”で通用するところを、あえて“吟醸タイプ”としているところにも、酒に対すこだわりがうかがえる。ラベルの「浦霞禅」は、松島瑞巌寺128世の住職加藤隆芳老師(号は五雲軒)の筆による。また、禅画の大家淡川康一氏によるユーモラスな画は、ほてい様が禅問答をしているところだという。
 冬の三陸沖でとれたばかりの、小粒だが味のいい生ガキとの相性は抜群。上等の白ワインに優るとも劣らない。寒さ厳しい東北で、蔵人たちの愛情を一身に、丹精こめてつくられる酒の旨さを、しみじみとかみしめた。


※このページは1984年から1998年にかけて発行された、丸文株式会社広報誌『MIA』ならびに『MIA別冊』に掲載されたものです。お名前、その他の表記等については取材日現在です。



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