ステッピングモータの基本:種類、用途、動作原理|MPSニュースレター

センサレスで位置調整が可能なステッピングモータの応用分野は広範囲に渡ります。この技術論文では、その基本について説明しています。動作原理、構造、制御方法、用途、ステッピングモータの種類、およびその長所と短所について学べます。

イントロダクション

*本記事は2020年4月にMPS社ホームページに投稿されたCarmine Fiore氏の論文を基に翻訳、作成されました。

ステッピングモータは、モータの軸がステップを実行して回転する、つまり一定の角度だけ移動することを主な特長とする電気モータです。この機能はモータの内部構造により得られ、センサを必要とせずに、ステップがどのように実行されたかを数えるだけで、軸の正確な角度位置を知ることができます。この機能は幅広いアプリケーションにも適合します。

ステッピングモータの動作原理

すべての電気モータと同様に、ステッピングモータには固定部分(ステーター)と可動部分(ローター)があります。ステーターには、コイルが配線されている歯があり、ローターは永久磁石または可変リラクタンスの鉄心です。さまざまなローター構造については後で詳しく説明します。図1は、モータの断面図を示しています。ここでは、ローターは可変リラクタンスの鉄心です。

図1.:ステッピングモータの断面

ステッピングモータの基本的な動作原理は次のとおりです。1つまたは複数のステーター相に電圧を加えると、コイルに流れる電流によって磁場が生成され、ローターがこの磁場に整列します。 違った相に順番に与えることにより、ローターを特定の量だけ回転させ、目的の最終位置に到達させることができます。 図2に、動作原理を示します。 最初に、コイルAが通電され、ローターが生成される磁場に整列します。 コイルBに通電すると、ローターは時計回りに60°回転し、新しい磁場に整列します。 コイルCが励磁されている場合も同様です。 図ではステーターの歯の色は、ステーター巻線によって生成される磁場の方向を示しています。

図2.:ステッピングモータのステップ

ステッピングモータの種類と構造

分解能(またはステップサイズ)、速度、およびトルクの両方に関するステッピングモータの性能は、構造の細部に影響されます。同時に、モータの制御方法にも影響を与える可能性があります。実際には、ローターとステーターの構成が異なるため、すべてのステッピングモータの内部構成(または構造)は同じではありません。

ローター
ステッピングモータの場合、基本的に3種類のローターがあります。

•永久磁石ローター:ローターは、ステーター回路によって生成される磁場に整列する永久磁石です。 このソリューションは、良好なトルクとディテントトルクを保証します。 これは、コイルが励磁されているかどうかに関係なく、非常に強くはないですが、位置変化を阻止することを意味します。 このソリューションの欠点は、他の種類に比べて速度と分解能が低いことです。
図3は、永久磁石ステッピングモータの断面図です。

図3.:永久磁石ステッピングモータ

•可変リラクタンスローター: ローターは鉄芯で出来ており、磁場に整列する独特の形状をしています(図1および図2を参照)。このソリューションを使用すると、より高い速度と分解能を達成することが簡単になりますが、発生するトルクが低くなり、ディテントトルクがなくなります。

•ハイブリッドローター:この種類のローターには独特の構造があり、永久磁石型と可変リラクタンス型とのハイブリッドになります。ローターには、歯が交互に配置された2つの柱頭があり、軸方向に磁化されています。この構成により、モータは永久磁石型と可変リラクタンス型の両方の利点、特に高分解能、速度、およびトルクを持つことができます。この高い性能はより複雑な構造を必要とするため、高いコストを必要とします。図3に、このモータの構造の簡単な例を示します。コイルAが励磁されると、Nに磁化された柱頭の歯がステーターのSに磁化された歯に整列します。同時に、ローター構造により、Sに磁化された歯はステーターのNに磁化された歯に整列します。実際のモータはより複雑な構造をしており、ステッピングモータの動作原理は同じですが、図に示されているものよりも歯数は多くなっています。歯数を多くすると、モータは0.9°までの小ステップサイズを実現できます。

図4.:ハイブリッドステッピングモータ

ステーター
ステーターは、ローターが整列しようとする磁界を生成する役割を持つモータの一部です。 ステーター回路の主な特性には、相数と極対の数、および配線構成が含まれます。 相数は独立したコイルの数ですが、極対の数は、各相が主たる歯の対をどのように使用しているかを示します。2相ステッピングモータが最も一般的に使用されますが、3相および5相モータはあまり一般的ではありません(図5および図6を参照)。

図5.:2相ステーター巻線(左)、3相ステーター巻線(右)
図6.:2相単極対ステーター(左)および2相双極対ステーター(右)文字は、A +とA-間に正電圧が印加されたときの磁場

ステッピングモータ制御

ローターが整列する磁場を生成するために、特定の順序でモータコイルにエネルギーを供給する必要があることは前もって説明しました。コイルに必要な電圧を供給するためにいくつかのデバイスが使用され、それでモータが適切に機能できるようなります。我々が持つモータにとって身近なデバイスから始めてみます。

•トランジスタブリッジは、モータコイルの電気的接続を物理的に制御するデバイスです。トランジスタは、電気的に制御された遮断器と見なすことができます。これは、閉じたときにコイルを電源に接続し、コイルに電流が流れるようになります。各モータ相に1つのトランジスタブリッジが必要です。

•プリドライバは、トランジスタの活性化を制御し、必要な電圧と電流を提供するデバイスであり、MCUによって制御されます。

•MCUはマイクロコントローラユニットで、通常はモータの使用者によってプログラムされ、プリドライバが特定の信号を生成して目的のモータ動作を行います。

図7は、ステッピングモータの制御方式を簡単に表したものです。プリドライバとトランジスタブリッジは、ドライバと呼ばれる単一のデバイスに収めることができます。

図7.:モータ制御の基本図

ステッピングモータドライバの種類

市場にはさまざまなステッピングモータドライバがあり、特定アプリケーション向けにさまざまな機能を披露しています。最も重要な特性には、入力インターフェースが含まれます。最も一般的な選択肢は次のとおりです。

•Step/Direction -Step端子にパルスを送信することにより、ドライバはモータがステップを実行するように出力を変更します。その方向は、Direction端子のレベルによって決定されます。

•Phase/Enable -ステーター巻線の各相に対して、Phaseは電流の方向を決定し、相が通電されている場合にEnableを実行します。

•PWM -ローサイドFETとハイサイドFETのゲート信号を直接制御します。
ステッピングモータドライバのもう1つの重要な機能は、巻線両端の電圧のみ、またはそれに流れる電流をも制御できる機能です。

•電圧制御では、ドライバは巻線の両端の電圧のみを調整します。発生トルクとステップ実行速度は、モータと負荷特性にのみ依存します。

•電流制御ドライバは、生成されるトルクをより良く制御するために活性コイルを流れる電流を制御し、システム全体の動的挙動を制御するため、より高度なものとなっています。

ユニポーラ/バイポーラモータ

制御にも影響を与えるモータのもう1つの特長は、電流方向がどのように変化するかを決めるステーターコイルとの取り合わせです。ローターの動きを実現するには、コイルに通電するだけでなく、コイル自体によって生成される磁場の方向を決める電流方向を制御することも必要です(図8を参照)。

ステッピングモータでは、電流方向の制御の問題は2つの異なる方法で解決されています。

図8.:コイル電流方向に基づく磁場方向

ユニポーラステッピングモータでは、1つのリード線がコイルの中心点に接続されています(図9を参照)。 これにより、比較的単純な回路とコンポーネントを使用して電流方向を制御できます。 中央リード線(AM)は入力電圧VINへ接続されます(図8を参照)。 MOSFET 1が活性化した場合、電流はAMからA+に流れます。 MOSFET 2が活性の場合には電流はAMからA-に流れ、反対方向の磁場を生成します。
上記で指摘したように、この方法はより単純な駆動回路を可能にします(2つの半導体のみが必要です)が、欠点は、一度にはモータ内で使用されている銅の半分だけが使用されることです。これは同電流がコイルに流れるとして、すべての銅が使用された場合に比較して、磁場強度が半分になることを意味します。さらに、これらのモータは入力として、より多くのリード線を使用する必要があるために構築が困難です。

図9.:ユニポーラステッピングモータ駆動回路

バイポーラステッピングモータでは、各コイルには2つのリード線しかありません。方向を制御するには、Hブリッジを使用する必要があります(図10を参照)。 図8に示すように、MOSFET 1と4が活性化した場合、電流はA +からA-に流れますが、MOSFET 2と3が活性の場合、電流はA-からA +に流れ、反対方向の磁場を生成します。 このソリューションでは、より複雑な駆動回路が必要ですが、モータは使用されている銅の量に応じて、最大トルクを達成できます。

図10.:バイポーラステッピングモータ駆動回路

技術の進歩に伴いユニポーラの利点はあまり重要ではなくなり、バイポーラステッピングが現在、最も一般的です。

ステッピングモータ駆動テクニック

ステッピングモータには4つの異なる駆動テクニックがあります。

•ウェーブモードでは、一度に1つの相のみが励磁されます(図11を参照)。簡単には、相の+リード線から-リード線に向かう場合(例:A +からA-)、電流は正方向に流れていると言います。それ以外の場合、方向は負です。図の左から、電流はA相でのみ正方向に流れており、磁石で表されるローターは、それによって生成される磁場に整列します。次のステップでは、B相でのみ正方向に流れ、ローターは時計回りに90°回転してB相によって生成される磁場に整列します。その後、A相は再び励磁されますが、電流は負方向に流れますので、ローターは再び90°回転します。最後のステップでは、B相で電流が負に流れ、ローターは再び90度回転します。

図11.:ウェーブモードのステップ

•フルステップモードでは、2つの相が常に同時に励磁されます。 図12は、この駆動モードの違ったステップを示しています。 ステップはウェーブモードのステップと似ていますが、最も大きな違いは、このモードではモータに流れる電流が多くなり、強力な磁場が生成されるため、モータがより高いトルクを生むことができることです。

図12.:フルステップモードのステップ

•ハーフステップモードは、ウェーブモードとフルステップモードの組み合わせです(図12を参照)。 この組み合わせを使用すると、ステップサイズを半分にすることができます(この場合、90°ではなく45°)。 唯一の欠点は、モータによって生成されるトルクが一定ではないことです。これは、磁場が両方の相が通電されている場合は強く、一方の相のみが通電されている場合には弱いためです。

図13.:ハーフステップモードのステップ

•マイクロステップは、ステップサイズをさらに細かくして一定のトルク出力を得ることができるため、ハーフステップモードのさらなる強化と見なすことができます。これは、各相を流れる電流量を制御することによって達成されます。このモードを使用するには、前述のソリューションと比較してより複雑なモータドライバが必要になります。図14は、マイクロステップの動きを示しています。 図の左から順に、IMAXが相を流れることができる最大電流である場合、最初はIA = IMAXおよびIB =0。次のステップでは、電流はIA = 0.92 x IMAXおよびIB = 0.38となるように制御されて前のものから、時計回りに22.5°回転する磁場を生成します。このステップでは、45°、67.5°、および90°の位置に動かすために、異なった電流値で繰り返されることになります。これによりハーフステップモードと比較して、ステップサイズを半分にすることができますが、さらなる先が可能です。マイクロステップを使用すると非常に高い位置分解能が得られますが、この優位性は、モータを制御するためのより複雑なデバイスと、各ステップで発生するトルクが小さくなることを犠牲にしています。確かに、トルクはステーター磁界とローター磁界間の角度の正弦波に比例します。したがって、ステップが細かいほど、トルクは小さくなります。これにより、一部のステップが失われる可能性があります。つまりはステーター巻線の電流に変化があっても、ローター位置は変化しないことになります。

図14.:マイクロステップ

ステッピングモータの長所と短所

ステッピングモータの動作原理を理解したところで、他のモータ種類と比較した長所と短所をまとめておくと便利です。

長所
•ステッピングモータは内部構造により、モータの位置を検出するセンサが不要です。モータは「ステップ」を行って動くので、そのステップを数えるだけで、その時点でのモータの位置を求めることができます。
•さらに、ステッピングモータの制御は非常に簡単です。モータはドライバを必要としますが、正しく動作するための複雑な計算や調整を必要としません。一般的には制御の労力は、他のモータと比較して低くなります。マイクロステッピングにより、最大約0.007°の高い位置精度を達成できます。
•ステッピングモータは、低速で良好なトルクを提供し、位置を保持するのに最適であり、また寿命が長い傾向があります。

短所
•負荷トルクが高過ぎると、ステップを逃す可能性があります。これは、モータの実際の位置を知る方法がないため、制御に悪影響を及ぼします。ステッピングモータでマイクロステッピングを使用すると、この問題がさらに発生し易くなります。
•モータは、静止している状態でも常に最大電流を消費します。これにより、効率が低下して過熱が発生する可能性があります。
•ステッピングモータはトルクが小さく、高速ではかなりの音を発生します。
•最後に、ステッピングモータは電力密度が低く、トルク-イナーシャ比が低いです。

要約すると、ステッピングモータは安価で制御しやすいソリューションが必要な場合や、高速での効率や高トルクが必要のない場合に適しています。

結論

その特性によりステッピングモータは、簡単な位置制御と位置を保持する機能が必要な多くのアプリケーションで使用されています。

プリンタ:プリントヘッド、紙送り、スキャンバー
DSLRカメラ:絞り/焦点調節
3Dプリンター:XYテーブルドライブ、メディアドライブ
ビデオカメラ:パン、チルト、ズーム、フォーカス
ロボット:アーム、エンドエフェクター
彫刻機:XYテーブルモーション
ATMマシン:明細書移動、トレイエレベーター