現場で役立つ 待機時消費電力対策

 Texas Instruments(以下、TI社と表記)のカプラレス・高効率な電源IC UCC28630を使用して、欧州を中心に厳格化の進む待機電力規制への対策について考えてみましょう。

待機時消費電力とは?

電化製品の電源プラグをコンセントに差し込んだだけで、動作していない状態を「待機状態」と呼び、この待機状態の時に消費している電力をまとめて「待機時消費電力」と呼びます。

一般的に待機時消費電力には次のようなものがあります。

  • 電源スイッチをOFFにした状態で
    • 使用する機器の表示部やタイマなどが消費する電力。
    • 使用する機器のLEDが状態を知らせる時に消費する電力。
    • 使用する機器がリモコンなどの、外部からの操作信号を待ち受けするために消費する電力。
    • 充電式の機器が充電以外で消費する電力。
  • これらの待機時消費電力は、本体の電源プラグを抜くことでゼロにできますが、実際にはその製品の使いやすさを考えると電源プラグを毎回、抜いておくことはできません。
  • しかし、この待機時消費電力は電気を使っているという意識のないままに電力が消費されており、ムダにエネルギを消費していることから、欧州を中心に世界的に待機電力規制と省電力化への規制が注目されるようになってきています。

国際的な省電力化への波

国際的な省電力化が注目される一方で、この国際規格に対して現行のIC製品・回路構成では、追従しきれない状態になってきています。

  • 待機時の低消費電力化
  • 高効率化
  • 小型・軽量化

主な国際規格
●80PLUS
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●ENERGY STAR
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●アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)外部電源規制レベル
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システムの省電力化に有効な対策

皆さんは、どんな消費電力対策を行っているのでしょうか?

  • プロセッサ・マイコンなどのスリープ機能を使っての待機電力抑制?
  • LED・インターフェース関係の効率的な使い方?
  • システム内に点在している電源IC1つ1つの効率改善?

もっとも有効なのは、電源プラグからの入力を一番最初に受けるAC/DC(AC電源を機器が使用するDC電源に変換する)電源IC部分の効率です。ここでの変換効率が低ければ、以降の他のシステム全体をどんなに省電力対策を行ったとしても、大きく影響しません。

機器全体の電源効率は、このAC/DC変換部分の効率が支配的ですので、逆にこの部分の効率を上げることができれば、機器全体の省電力化を行うことができます。

UCC28630の特長

今回、ご紹介するUCC28630は高効率と低待機時消費電力を実現するAC/DC向けの電源ICです。
UCC28630は、65W~130W電源設計で88%を超える平均変換効率が実現でき、特に10%の軽負荷時には87%の変換効率を実現できます。 制御方式はフライバック制御方式型でトランスの1次側でレギュレーションをおこなうことで、2次側からのフィードバックをなくし、帰還回路のフォトカプラが不要になります。

特長
●スイッチング周波数が最大120[kHz]、ディザリングによりEMIノイズが低減
●DCMモード動作、過負荷/ピーク電力をサポートするCCMへの移行
●高速起動用700[V] JFET内蔵
●高速過渡応答のための高速ウェイクアップ機能
●外部NTCのシャットダウンピン インターフェース
●保護機能:過電圧、過電流、過熱、AC UV
●パッケージ:SOIC-7

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UCC28630EVM-572の特長

UCC28630EVM-572はUCC28630フライバック電源ICの評価キットになっており、ユーザにとって3つメリットがあります。

メリット1

  • 評価キットにはUCC28630を動作させるのに必要な周辺部品が実装されており、安定化電源とパワーメータ、電子負荷を接続するだけで、すぐに測定を開始できます。

メリット2

  • 実際のアプリケーションで発生する定常状態・過渡状態などの、さまざまな条件下で測定・評価ができます。

メリット3

  • ユーザーズ・ガイドも用意されており、それを見ながらユーザの使用条件に合わせて回路定数を変更して評価ができます。

UCC28630EVM-572の仕様動作条件

  • 入力電圧範囲:90~265 [Vrms]
  • 出力設定電圧:19.5 [V]
  • 最大出力電流:3.34 [A]
  • スイッチング周波数:0.2 ~126.7 [kHz]

UCC28630EVM-572の評価

実際にUCC28630EVM-572を評価します。
今回評価する項目

  • 効率測定
    • 効率測定ではUCC28600EVM-65との比較データもご紹介します。
  • 待機時消費電力測定

動作させるUCC28630EVM-572の回路図は以下の通りです。

UCC28600EVM-65とは

今回効率での比較として、65W出力のフライバック制御方式のUCC28600EVM-65を使用します。UCC28630と大きな違いとしては、UCC28600は2次側からフォトカプラを使用してフィードバックするタイプになります。フォトカプラを使用することで、低待機時での効率の違いを後から出てくるグラフからも確認できます。

比較するUCC28600EVM-65の回路図は以下の通りです。

UCC28630EVM-572の評価

以下の測定環境で評価します。
●効率測定

UCC28630EVM-572の評価

●待機時消費電力測定
※パワーメータ (横河計測株式会社製 WT310) 消費電力ソフトウェア

UCC28630EVM-572の結果 効率

UCC28600EVM-65の効率比較 全体(効率レンジを0%~100%)
UCC28600EVM-65の効率比較 拡大(効率レンジを80%~90%のところを拡大)

UCC28630EVM-572の結果 消費電力レポート

消費電力ソフトウェアを使用して、待機時による消費電力を確認しました。
このソフトウェアを使用すると、下記のようなテストレポートを作成できます。

担当エンジニアからの一言

今回の測定結果からもわかるように、UCC28630は待機時電力も54[mW]で、負荷効率が最大負荷の20[%]の時に87[%]を維持できますので、システムの省電力化に役立つ電源ICです。 さらに、トランスの1次側でレギュレーションを制御することで、フォトカプラなしでレギュレーションができるため、基板サイズを縮小することができます。フォトカプラなしでの回路設計が可能なため、フォトカプラの経年劣化によるシステムへの影響を考慮する必要がなくなり、システム設計も容易になります。 UCC28630は、今回ご紹介したメリットを有することから、低消費電力が望まれる小型で汎用的なアプリケーション ...例えば、ACアダプタ、スティック型掃除機、液晶テレビなどには、最適なデバイスと考えられますので、ぜひご検討ください。

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