SAME70 マイコンでBLDCモータを回そう[イントロダクション編]

Microchip Technology 社(以下、Microchip社と表記)の低電圧モータキットMCLV-2ボードで、BLDCモータを簡単に回すことができます。

本シリーズは、MCLV-2ボードとSAME70 PIMの環境を使用して、実際にモータを回すところまでの具体的な手順を4回に分けて説明します。第1回はイントロダクション編として、これらのボードについて説明します。

低電圧モータキット:MCLV-2の概要

MCLV-2(製品番号:DM330021-2) とは、Microchip社から供給されているBLDCモータ向け低電圧モータキットです。各種モータ制御マイコンを搭載したPIM(Plug In Module)というモジュールを搭載することが可能です。

MCLV-2の概要

  • 定格電力48V / 10Aの三相インバータブリッジ
  • 特定のdsPIC33E / CおよびPIC32MKデバイスにあるマイコン内蔵オペアンプを使用する機能
  • センサ付きモータ制御用のホールセンサ/直交エンコーダ・インターフェイス
  • センサレスBEMF制御の相電圧フィードバック
  • シングル・シャント・ベクトル制御用のDCバス電流検出抵抗
  • デュアル・シャント・ベクトル制御用の相電流検出抵抗
  • 過電流保護
  • 入出力制御スイッチ
  • 速度入力用ポテンショメータ
  • PWM出力用のLEDインジケータ

プラグインモジュール:SAME70 PIMの概要

SAME70 PIM(製品番号:MA320203)はATSAME70 32ビットArm® Cortex®-M7 MCUデバイス(SAME70Q21)を搭載したプラグインモジュールで、1.27mmピッチの100ピンのヘッダピン(25ピンx4本)を介して以下のモータキットに接続することが可能です。
・低電圧モータキットMCLV-2 [DM330021-2]
・高電圧モータキットMCHV-3 [DM330023-3]

今回はこのプラグインモジュールを低電圧モータキットMCLV-2 と組み合わせて使用していきます。本環境で動作するセンサレスFOC(ベクトル制御)のパッケージが用意されており、また、プラグインモジュールにはエミュレーション用のヘッダピン(10ピンJTAG/SWと8ピンPICkit4コネクタ)が実装されており、モータのソフトウェア開発やデバッグ等を行うことが可能です。

MCLV-2+SAME70 PIMのブロックダイアグラム

以下にMCLV-2+SAME70 PIMの全体ブロックダイアグラムを示します。

①内部電源回路
MCLV-2やPIMボードに供給する各種電源を生成します。

②モータドライバ
PIMから6本のPWM信号を貰い、プリドライバを経て、6個のMOSFETでBLDCモータを駆動します。この回路にはモータ電流を計測するシャント、シャントアンプ、モータのバス電圧を計測するための分圧回路、過電流を検知するFault回路があり、モータ制御マイコンのADCやGPIOに接続されます。

③SAME70 PIM
いわゆるモータ制御のプログラムが走る心臓部になります。搭載されているマイコンは、300MHzクロック動作かつ、浮動小数点演算が可能で、高性能な製品です。

モータを接続する際の検討事項

モータ評価用ボードを動かす場合、そのキットで許容されているモータの電流値やモータバス電圧について、あらかじめ確認しておく必要があります。それらの値を確認するには、モータドライブ回路図から、シャント、シャントアンプ、モータバス検出用の分圧回路を調べる必要があります。

シャントおよびシャントアンプ回路

シャントでモータの電流が検出されて、シャントアンプにて、マイコンのADCが取り扱える電圧(0V~3.3V)に変換されます。ユーザガイドの回路図から、これらの回路に着目して、どの範囲のモータ電流の検出ができるかを検討してみましょう。

モータ駆動回路は、右図の様に、プリドライバU18:IR2181とMOSFET Q3, Q4で構成されています。そのMOSFET Q4とGNDの間に、シャントR16: 25mΩが接続されています。このシャントでモータ電流を計測しますが、そのシャントの両端が次のシャントアンプに接続されます。ここで、シャントを流れる電流値をIshuntとしておきます。

そして、モータ電流値の検出のために、右図のシャントアンプで抵抗の両端の電位差を増幅し、IMOTOR2というマイコンのADC端子に接続されています。

このシャントアンプのゲインは、
     30k/(1k+1k)=15(倍)
となります。

ユーザガイドの回路図によると、VREFは3.3Vの中点電圧1.65(V)となっているため、ADCへ接続されるIMOTOR2の電圧は、右式のように表せます。
ADCの入力電圧は最大3.3V、最小0Vなので、IMOTOR2(V)にこれらの最大、最小電圧を代入して、シャントに流れる電流Ishuntを逆算すると、
・IMOTOR2=3.3Vの場合 Ishunt=4.4(A)
・IMOTOR2=0Vの場合 Ishunt=-4.4(A)
となります。

すなわち、このシャントおよびシャントアンプを使用した場合、マイコンで計測できるモータ電流は、±4.4(A)となります。

モータ・バス電圧(VBUS)検出用分圧回路

続いて、モータのバス電圧(VBUS)を検出する回路について調べてみましょう。

下記VBUSにはマイコンのADCが接続されるので、VBUSは0V~3.3Vの電圧に変換されます。VBUSの電位を3.3Vにする電圧が何Vなのかを分圧回路の式から逆算します。

この様に、DC+に印加できる計算上の電圧は52.8(V)となります。

モータのスペックの確認

今回使用する Anaheim Automation 社のモータ (製品型名:BLY172S-24V-4000)のスペックを確認します。まず、本モータのデータシートから、その定格電圧と定格電流を調べます。

確認した項目と判定結果は以下のとおりです。

これまでの結果から、ボードの改造(シャントの部品やアンプのゲイン、分圧抵抗値の変更など)を行わずに、このモータを回すことができそうです。

まとめ

今回はイントロダクションとして、MCLV-2ボードとSAME70 PIMボードの概要を説明しました。また、モータ「BLY172S-24V-4000」を例に、モータを接続する際に注意するポイントを説明しました。
次回は、本ボードを動かすためのソフトウェア(MPLAB® X IDE +Harmony V3+モータ関連パッケージ)の導入について説明します。

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