私が所属する部署は、新しい商材により社会課題を解決しようという使命があり、ただモノを販売するのではなく、コト、つまり体験やサービスを提供しようと活動しています。現在担当しているのは、マイクロ波を使ったワイヤレス給電(WPT: Wireless Power Transfer)のライセンスビジネスです。通常は、電源ケーブルやバッテリーで電気を供給しますが、ワイヤレス給電とは、天井などに設置した送電装置から電波を発し、受信した電波エネルギーを電力に変換することによって送電するというもの。これが実用化されると配線が不要になってレイアウトが自由になる、バッテリー交換が不要になってメンテナンスフリーになるなどのメリットがあります。アプリケーションとしては、量販店やコンビニエンスストアなどの電子棚札や工場・物流倉庫の電子タグ・センサー機器をターゲットとし、Society5.0*の実現に向けて大きな期待が寄せられている新技術です。ただ、電波を使うので電波法に従う必要があり、現状はWPTが使える環境整備を図っている段階です。新たな無線通信技術によるサービスやシステムの早期実現などを図ることを目的に設立された団体にも参加し、多くの企業や研究者と一緒に電波法の規制緩和などを働きかける活動もしています。
*Society5.0:
内閣府が掲げる、サイバー空間(ネットワーク等仮想空間)とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会。
AIやロボットなどの先端テクノロジーを用いて、現在の情報社会(Society4.0)での課題を解決します。
全く新しい技術なので、どうアピールするかなど体制づくりも含めて、すべてがチャレンジです。まず、お客さまが自社の製品にWPTをどう取り込めるかを実際に体験していただけるように本社の地下にデモルームを作りました。また、興味を持っていただいたお客さまにWPTの実証実験や性能評価をしていただけるよう、チームの先輩と一から回路を設計してオリジナルの評価キットを作り、販売だけでなくレンタルも行っています。レンタルという業態は丸文では初めてなので、営業支援部隊などに相談しながら社内のシステムづくりにも取り組みました。さらに、お客さまがWPTを導入する際に、丸文がより踏み込んでサポートできるよう、無線技術士の資格を取りました。いろいろな新しいことを整備していかなければならないのは大変ですが、まっさらなステージで自分たちのやりたいことを発案して推進していける楽しさがあります。苦労はあるものの、一つひとつ新しいことがカタチになっていくことを実感できて、とてもやりがいがあります。
新しい仕事を組み上げていくには自分だけでできることに限界があるので、チームの先輩、課のメンバーはもちろん、営業支援や法務、広報など間接部門の人たちも巻き込んでいます。対外的には、お客さまのリクエストからまだお客さま自身も気づいていない本当の要求や課題を引き出して解決していきたいと思っています。最初に配属された技術部隊では、とにかく一人前のエンジニアになりたいと一点集中で突っ走ってきました。技術営業に異動してからは、ただ技術を深めるのではなく、お客さまの課題は何か、さらに市場や社会の課題は何かなど視野を広げて自分の仕事がどういう価値があるのかを考えながら仕事をするようになりました。商社のカタチはどんどん変わっていると思いますが、なぜ丸文がその技術を取り扱っているのか、丸文からその技術を導入するとどんなメリットがあるのか、従来からある商社のノウハウや価値に加え、新しい付加価値をどうつけていくか、それが使命かなと思っています。その一つがワイヤレス給電という新しい技術で、その技術を使って、どう社会課題を解決していくかを提示していきます。今の一番の目標は、WPTが世の中で運用され、どんどん広まっていくことです。