MPS(Monolithic Power Systems)の回転センサー MagAlphaとは|MPSニュースレター
機械を制御・監視するためには、回転位置または回転速度の検出が不可欠です。これまでは、低速のアクチュエータに対してはポテンショメーター、サーボモーターのような高速な場合には光学式エンコーダーが広く使われてきました。
ポテンショメーターには低コストというメリットがあります。しかし、摺動部があるため摩耗や環境に起因する湿気や汚れの影響を受けるというデメリットもあります。また、光学式エンコーダーは高精度ですが、複雑な構造のためコストが高くなります。
上記の課題は、ホール素子を実装した回転磁気角度センサーを使うことで解決できます。
今回は、お客様の様々な問題を解決するMPS社の回転磁気角度センサー MagAlpha™をご紹介いたします。
MagAlpha™のメリット
MagAlpha™の主なメリットは下記の通りです
- 8~14bitの分解能で SPI(標準)に加え SSI、ABZ、PWM、UVWをオプションでデータ出力
- 非接触の磁気センシングにより高信頼性で長寿命
- 低価格、小型パッケージ
- エンドシャフト(回転軸に垂直)、サイドシャフト(回転軸に水平)での検出をサポート
MagAlpha™は、垂直なホール素子アレイ構造により、回転する磁石からの磁界の水平な成分を検出します。回転する磁石は、径方向に着磁された磁石を用います。MagAlpha™センサーは、お客様のご使用条件に応じて、以下のように磁石の位置を選択することができます。(Figure. 1)
Figure. 1 エンドシャフトとサイドシャフト
従来製品:出力の遅延が大きい
回転磁気角度センサーにおいて従来の製品はFigure.2で示したように、X、Y軸のホール素子のアナログ信号をA/D変換し、逆正接(tan-1)計算をすることで角度αを得る方法が用いられていました。
しかし、この方法だとtan-1 計算に時間を要し、測定角度と実角度の角度出力の遅延が数百usと大きくなってしまいます。
Figure.2 従来製品の動作イメージ(tan-1演算)
MagAlpha™の利点:出力の遅延が小さい
従来製品のようなA/D変換やtan-1演算を行わない画期的な方法を採用したのが、MPS社のMagAlphaです。
IC内部に設けたホール素子アレイでホール素子を電子的に360°回転させることで、位相aを直接読み取ることができます。位相は高速カウンターでデジタル化し読み取った後、低遅延のデジタルフィルターで処理され、角度出力として出力されます。角度出力の遅延は大きくても10usとなり、従来製品の数十分の一にまで遅延を小さくすることができます。
Figure.3 MagAlpha™ 原理イメージ図
一定速度で回転している場合の角度出力のずれは、遅延時間(10us) x 回転速度(角度/秒)で計算できます。
(※)回転速度が遅ければ問題ないですが、速度が速くなると遅延が問題になります。
MagAlpha™で毎分10,000回転の場合、毎秒 166.7回転ですから 166.7 *360= 60,000°/秒の回転になります。従って測定角度と実角度で10us*60,000 =0.6°のずれが生じます。
MagAlpha™では従来製品の数十分の一程度にまで遅延が抑えられています。
Figure.4 定速度での角度遅れイメージ 出典(MA330 datasheet)
MagAlpha™の分解能について
MagAlpha™製品ラインアップで、エンコーダーの代わりとして制御用に使われる製品は10bit、12bit、14bitです。(8bit製品もあり、回転ノブ向けなどHMI用として準備されています。)
下の表は、MA732およびMA330が、レジスターで時定数/デジタルフィルター帯域(fcutoff)を設定できる範囲と時定数固定の製品群を示しています。時定数が小さいほど(帯域が広いほど)加減速への追従性に優れますが、分解能とのトレードオフになります。
MagAlpha™の出力インターフェイスについて
MagAlpha™は出力インターフェイスでも豊富なバリエーションがあり、お客様の用途に応じて最適な製品をお選びいただけます。
全てのMagAlpha™にはSPIが搭載されていますが、SSI出力、インクリメンタルABZ出力、PWM出力、モーター用UVW出力を持つ製品もあります。他のオプションとして、
- 予め不揮発性メモリで設定した磁場の強さ閾値との比較出力端子(MAG)
- side shaftで使う場合の線形化レジスター設定※
- ゼロ位置のレジスター設定
などがあります。すべての設定は、IC内部の不揮発性メモリで保存できます。
製品ファミリー
MA7xxシリーズ:位置・速度制御用に最適です
MA3xxシリーズ:UVW信号を持ちモーター制御用に最適です
MA78xシリーズ:自動Wake Up機能がありポータブル機器など低消費電力用途に最適です
MA8xxシリーズ:ボリューム、ロータリースイッチなど低速のHMI向けです。
MagAlpha™評価キット
評価キット、評価ソフトウエアもご用意しております。ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
- PC USBインターフェイス基板+付属ケーブル
(EVKT-MACOM) - 回転knob評価ボード(EVKT-LT-KNOB)
Test board(stick type)を挿入して回転knobとして使用できます。 - テストボード
XXXは各型番の製品が実装されております。- TBMAxxx-LT-Q-00A (stick shape)
- TBMAxxx-RD-Q-00A (round shape)
- 評価用ソフトウエア Macom App Software はMPS社HPよりどなたも無償でダウンロードできます。