SiC MOSFETと推奨ゲートドライバの紹介
SiC MOSFETの駆動には専用のゲート・ドライバが必要ですが、Si MOSFETに用いられるゲートドライバと何が違うのかご存知でしょうか。
今回はSiC MOSFETが求めるゲートドライバの特徴についてと、Wolfspeed inc.(以下Wolfspeed社)が提供するSiC MOSFETと
Analog Devices(以下ADI)が提供するゲートドライバの推奨組み合わせについて紹介します。
Si MOSFETとSiC MOSFETの違いは?
基本構造はほとんど変わらない
SiとSiC用いたMOSFETの構造はほとんど同じです。
違いは半導体の材料としてSiとSiCどちらを用いているかであり、内部構造や駆動方法も同じなため、
SiとSiC MOSFETはゲートドライバに求めることも同じになります。
ですが、SiCは材料の特性や使用される環境がSiとは異なるため、それに応じたゲートドライバが必要になります。
ゲートドライバとは?
Power MOSFETを駆動するためのIC
MOSFETはゲート端子に電圧を印可することでON/OFFの制御が可能です。
実際には寄生容量(Cds,Cgs)に電荷を充電または放電してゲート-ソース間の電圧を制御することによってON/OFFの制御をしています。
Power MOSFETも動作原理は同じですが、Power MOSFETは大電力を扱うため、より大きな”力”でゲート-ソース間の寄生容量を充電・放電する必要があります。ここで言う”力”はゲートドライバのスペックでは最大供給電流で示されます。
信号などを扱う小さなMOSFETなどはマイコンのGPIOなどの供給電流でも駆動が可能ですが、
Power MOSFETとなるとGPIOでは供給電流が足りないため、専用のゲートドライバを用いて駆動する必要があります。
SiC MOSFETがゲートドライバに求める内容とは?
Si MOSFETとSiC MOSFETの違いは材料の違いのみでゲートドライバに求める内容も同一なので、ON・OFFするだけであればSi MOSFET用のゲートドライバでも可能です。
ですが、SiC MOSFETにはSiC特有の課題があるため、SiC MOSFETの性能を最大限に引き出すためにはSiC MOSFET専用のゲートドライバが必要です。
課題1.ゲート電圧に対する要求事項
SiとSiC MOSFETがONする最低限のゲート電圧(Vgs Threshold)は2〜4V程とほぼ同等ですが、SiC MOSFETは推奨されるゲート電圧(Recommended Vgs)が最大で15〜18V程のため、Si MOSFETよりも高いゲート電圧が必要です。
また、アプリケーションによってはMOSFETをOFFするために負電圧が必要になるケースもあります。
このようにSiとSiC MOSFETはゲート電圧範囲が大きく異なるため、それに応じたゲートドライバが必要になります。
課題2.ゲートドライバ内で“絶縁”されている必要がある
SiC MOSFETは650V~1700Vなど非常に高い電圧を扱うアプリケーションで使用されます。
ゲートドライバは低電圧で動作するMCUと高電圧を扱うSiC MOSFETの間で使用されるため、
故障などによって低電圧側と高電圧側がショートしないように必ず内部で絶縁されている必要があります。
絶縁方法は誘導性、容量性、光結合があり、各社ゲートドライバを扱うメーカによって絶縁方法が異なります。
Wolfspeed社のSiC MOSFETとADI社のゲートドライバ
Wolfspeed社ではDiscreteのSiC MOSFETや2つ以上のMOSFETを内蔵したModuleタイプの製品を提供しており、
それぞれの製品に適したADI社のゲートドライバも紹介しています。
下記はWolfspeed社のSiC MOSFETの製品群と推奨するADI社のゲートドライバの組み合わせ表になります。
Wolfspeed社のSiC MOSFETはADI社の絶縁ゲートドライバICと組み合わせることでより効率的で信頼性の高い設計が可能です。
すぐに使用できる評価ボードが用意されていますので、両社製品を組み合わせてご評価してみてはいかがでしょうか。