産業機器に求められるインターフェース製品のご紹介
産業機器アプリケーションでは、機器間のデータ通信を確実かつ効率的に行うことが求められます。一方で、周囲温度やノイズなどの厳しい環境で使用されることが多く、これらの課題解決には多くの苦労を伴います。今回は、産業機器向けのインターフェース製品を多く提供するAnalog Devices Inc.(以下、アナログ・デバイセズ社)の代表的なインターフェース製品を取り上げ、それぞれの技術的な特長と適用例をご紹介します。
産業機器アプリケーション
一例として以下がプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)のブロック図です。左側が入力インターフェース、右側が出力インターフェースとなりバックプレーンとの通信には適切なインターフェース規格が必要です。
どのインターフェース規格を選択すれば良いかは、下記の条件を確認すれば絞り込んでいくことができます。
- 通信場所:装置間、基板間、デバイス間
- 通信距離:30cm以内、~1m、~10m、~40m、~100m、~1kmなど
- 通信速度:10kbps以下、~100kbps、~1Mbps、~10Mbps、~100Mbps、~1Gbpsなど
- 伝送路:基板上パターン(マイクロストリップライン?)、ケーブル(同軸ケーブル、ツイストペア、多芯シールドなど)、絶縁の必要性の有無
- 接続方式(トポロジー):1対1、1対 複数、複数 対 複数 など
- アプリ(規格・使い方):RS-485、CAN、Ethernet、USB、IO-Linkなど ⇒ 規格が決まっていれば迷うことはありません。
では、これらを踏まえて代表的なインターフェース規格とその代表製品をご紹介します。
RS-232, RS-422, RS-485
アナログ・デバイセズ社は、非絶縁型インターフェースやiCoupler技術を必要とするデジタル・アイソレーション等のアプリケーションに適したさまざまなRS-232、RS-422、RS-485トランシーバを提供しています。 RS-232仕様を使用すれば、比較的短い距離(最大50フィート)を隔てて置かれた1つのトランスミッタと1つのレシーバ間において、最大20kbpsのデータレートで信頼性の高いデータ伝送ができます。最近のRS-232トランシーバ・チップは、さらに短い距離(最大5フィート)で最大1Mbpsのデータレートを実現できます。 RS-485仕様は真のマルチポイント通信ネットワークの条件を満たしており、RS-422仕様はシンプレックス・マルチドロップ標準の条件に対応します。
真のRS-232トランシーバ(±15kV ESD保護、最小10nA、3.0V~5.5V、最大250kbps): MAX3232E
独自の低ドロップアウトトランスミッタ出力段は、+3.0V~+5.5V電源で内部デュアルチャージポンプを使用して真のRS-232動作を行います。チャージポンプは、4個の小型0.1µFコンデンサがあれば+3.3V電源で動作します。各デバイスは、250kbpsのデータレートで確実に動作し、その間RS-232出力レベルを維持します。MAX3232Eは、業界標準のMAX232とピン、パッケージ、および機能コンパチブルです。
RS-485/RS-422対応トランシーバ(AutoDirection制御付き、ハーフデュープレックス):MAX13487E
+5V、ハーフデュープレックス、±15kV ESD保護されたRS-485/RS-422対応のトランシーバであり、ドライバとレシーバを各1個備えています。電源投入時や通電中の挿入時にバス上の誤った遷移を排除するホットスワップ機能を内蔵しています。
独自のAutoDirection制御を備えており、ドライバ入力がドライバイネーブル信号と併用されて差動バスを駆動する絶縁型RS-485ポートなどのアプリケーションに最適です。MAX13487Eは低減されたスルーレートのドライバを備えているため、EMIが最小限に抑えられ、不適切な終端処理ケーブルによる反射が低減されます。このため、最高500kbpsのエラーのない転送が可能になります。
CAN
アナログ・デバイセズ社の非絶縁型CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)トランシーバは、データ層リンク、ハードウェア・プロトコル(たとえばアナログ・デバイセズ社のBlackfin®プロセッサに組み込まれているもの)、CANバスの物理的配線の間の差動物理層インターフェースです。
CANトランシーバー(+5V、4Mbps 、±40Vフォルト保護、±25V CMR、および±40kV ESD保護内蔵): MAX33042E
産業アプリケーション用の保護を内蔵した+5V CANトランシーバーです。過電圧保護が必要な機器用に±40Vの拡張フォルト保護を備えています。また、±40kVヒューマン・ボディ・モデル(HBM)の高ESD保護やISO 11898-2 CAN規格(-2V~+7V)を上回る±25Vの入力コモン・モード範囲(CMR)も備えています。これにより、このデバイスは中程度の電気的ノイズが2つのノードやシステム間のグランド・レベルに影響することがあるアプリケーションに最適です。コントローラのエラーまたはTXD入力の障害によって引き起こされるバス・ロックアップを防ぐためのドミナント・タイムアウトを内蔵しています。tDOMより長時間にわたってTXDがドミナント状態(ロー)のままの場合、ドライバはリセッシブ状態に切り替わり、バスを解放して他のノードの通信を可能になります。
産業用イーサネット物理層デバイス
The ADI Chronous™産業用イーサネット物理層(PHY)ポートフォリオには、標準的な10Mbps、100Mbps、1Gbpsのソリューションがあります。また、シングルペア・イーサネット向けの新しい10BASE-T1L技術も備わっています。 アナログ・デバイセズ社の業界をリードする低遅延、低消費電力のPHY技術は、サイクル回数とシステムの消費電力を削減することで、決定論的アプリケーションにおけるデータ伝送と信号の完全性を最大限に向上します。この技術は、産業用ネットワーク間の信号の同期に優れており、TSNの開発を支援します。超低消費電力10BASE-T1L製品のこのポートフォリオにはPHYとMAC PHYの両方のソリューションがあり、設計時の柔軟な選択を可能にすると共にシステムの使用可能電力の最適化を支援します。
10BASE-T1LイーサネットMAC-PHY(堅牢な産業用、低消費電力):ADIN1110
ADIN1110は、超低消費電力で単一ポートの10BASE-T1Lトランシーバー設計で、産業用イーサネット・アプリケーション向けに設計され、ロング・リーチ10Mbpsシングル・ペア・イーサネット(SPE)についてIEEE® 802.3cg-2019™イーサネット規格に準拠しています。ADIN1110は、メディア・アクセス制御(MAC)インターフェースを内蔵しており、4線シリアル・ペリフェラル・インターフェース(SPI)を介して、さまざまなホスト・コントローラと直接接続できます。このSPIを使用すると、内蔵MACなしで低消費電力のプロセッサを使用できるため、システム全体の消費電力を最小限に減らすことができます。SPIは、Open Alliance SPIプロトコルまたは汎用SPIプロトコルを使用するように設定できます。
産業用I/O, IO-Link
アナログ・デバイセズ社の産業用デジタルおよびアナログ入出力(I/O)ICのポートフォリオは、市場で最高レベルの堅牢性を提供し、より柔軟なソリューションを実現するための極めて高い集積度とソフトウェアの設定可能性を備えています。デジタルI/O信号は、ノイズの多い過酷な環境で動作する産業オートメーションおよび制御機器により、リモート・デバイスとコントローラの間でオン/オフ・ステータスをやり取りするために使用します。電流を制限する機能により、消費電流と発熱を抑えることができます。
IO-Link®インターフェースは、シグナリングとパワー・オーバー・ケーブル・テクノロジーを組み合わせて、スマート・センサーやアクチュエータとの通信をシンプルにします。集中制御と最適化生産への要求に対応するため、産業オートメーション・システムの相互接続やインテリジェント化の度合いが高まるにつれ、IO-Linkは重要なデバイスの1つになりました。
デジタル入力(DI)
産業用デジタル入力(DI)ICは、工場フロアのセンサーからの高電圧信号と、産業用コントローラなどのオートメーションおよび制御機器にみられるより低い電圧との間をインターフェースします。
- オクタル産業用シンク/ソース・デジタル入力:MAX22196
・産業用24VまたはTTLレベルの8つの入力をロジック・レベルの出力に変換。
・各入力チャンネルを、シンク(P型)またはソース(N型)入力として個別に設定できます。
・単一の電流設定抵抗で、タイプ1/3、タイプ2、TTLまたはHTL(高インピーダンスの24Vレベル)用に入力を個別に設定できます。
・最大20mAの負荷電流を供給できる5Vリニア電圧レギュレータを内蔵。
デジタル出力(DO)
産業用デジタル出力(DO)ICは、産業オートメーションおよび制御アプリケーションの高電圧出力信号の高速スイッチングに使用します。
- 産業用保護、クワッドチャネル、ローサイドスイッチ:MAX14919A
・チャンネルあたり0.8Aの出力電流、TA=125°CでRON(typ) 140mΩ (max 300mΩ)
・抵抗で設定可能な高精度電流制限は、100mA~800mAの範囲の保証された動作電流を供給
・出力を並列に接続してより高い負荷電流を実現することが可能
・60V 耐性、±1kV サージ保護および±8kV 接触 ESD 保護を統合、TVSダイオード不要
デジタル入出力(DIO)
デジタル入出力(DIO)ICは、コントローラがチャネルを電子的にデジタル入力またはデジタル出力のいずれかとして、ハードウェアの変更を必要とせずに設定できます。
- 4チャネル産業用デジタル出力/デジタル入力:MAX14906
・チャネル単位の設定自由度によって広範囲のアプリケーションを実現
・出力:ハイサイド、プッシュプルまたはハイインピーダンスモード、RON_HS = 120mΩ(typ)
・入力:ソフトウェアで選択可能なタイプ1および3(2.3mA)、またはタイプ2(7mA)
・SafeDemag™によって無制限のインダクタンスの高速ターンオフが可能
IO-Link®
IO-Link®インターフェースは、シグナリングとパワー・オーバー・ケーブル・テクノロジーを組み合わせて、スマート・センサーやアクチュエータとの通信をシンプルにします。集中制御と最適化生産への要求に対応するため、産業オートメーション・システムの相互接続やインテリジェント化の度合いが高まるにつれ、IO-Linkは重要なデバイスの1つになりました。
- IO-Linkトランシーバ(保護内蔵):MAX22515
・選択可能な制御インターフェース(ピンモードまたはI2C)、2つのリニアレギュレータ、および堅牢な通信用のサージ保護を備えています。
・このトランシーバは、1つのC/Q入出力チャネルおよび1つのデジタル入力(DI)チャネルを備えています。
・内蔵発振器はIO-Link機器用のクロック生成を簡素化します。
・全IO-Linkラインインターフェース端子(V24、C/Q、DI、およびGND)は逆電圧保護、短絡保護、
ホットプラグ保護および±1.2kV/500Ωのサージ保護を内蔵しています。
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アナログ・デバイセズ(NASDAQ: ADI)は、物理的世界とデジタル世界の架け橋となり、インテリジェント・エッジでのブレークスルーを実現する、グローバルな半導体企業です。
アナログ・デバイセズは、アナログ、デジタル、そしてソフトウェアの技術を組み合わせて、工場のデジタル化、モビリティ、デジタル・ヘルスケアの進歩に寄与し、気候変動に取り組み、高い信頼で人と世界とを接続するソリューションを実現しています。2022会計年度の収益は120億ドルを超え、世界で約25,000人の従業員と125,000社のお客様を擁するアナログ・デバイセズは、現代の革新者たちに「想像を超える可能性」を提供します。