ミリ波レーダーとLiDAR(ライダー)の違いとは?それぞれのメリットも解説
近年、自動運転技術の進化に伴い、ミリ波レーダーとLiDAR(ライダー)は注目を集めており、自動運転システムにおいては環境認識や障害物検知など、欠かせない役割を果たしています。
この記事では、ミリ波レーダーとLiDAR(ライダー)の違いをはじめ、それぞれの活用範囲やメリット、そして導入時の注意点について詳しく解説します。
ぜひ、今後の知識や活用の参考にしてください。
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ミリ波レーダーとは
ミリ波とは、波長が1〜10mm、周波数が30〜300GHzの範囲にある電磁波のことを指します。短い波長を持つため、より細かい対象物の検出や高精度な測定が可能です。
ミリ波レーダーは、このミリ波の電磁波を対象物に照射し、反射して戻ってきた電磁波を解析することで、対象物の位置などの情報を高い精度で測定する技術です。自動運転技術では、障害物の検出や車間距離の維持などに活用されています。
また、ミリ波レーダーの検出方法には、FMCW方式とパルス方式の2種類があります。
ミリ波レーダーの検出方式
先述した通り、ミリ波レーダーの検出方式には、主に「FMCW方式」と「パルス方式」の2つがあります。
「FMCW方式(周波数連続変調波方式)」は、周波数に変化を持たせながら連続的に電波を発射し、対象物から跳ね返ってきた反射波との周波数差を測定することで、対象物までの距離や速度を計算します。高精度な距離測定が可能で、近距離から中距離にある対象物の検出に向いています。
一方で、「パルス方式」は、短い間隔で電波をパルス状に発射し、その電波が対象物に反射して戻ってくる時間を測定することで、対象物までの距離を計算する方式です。電波を放射する時間が極めて短いため、FMCW方式と比べて消費電力が低いという特徴があります。
ミリ波レーダーの活用範囲
ミリ波レーダーは、短い波長と広い帯域幅を持ち、物体の動きや状態を高精度に検知する技術として、多くの分野で活用が進んでいます。
特に近年では、ADAS(先進運転支援システム)の普及によって、ミリ波レーダーを自動車へ搭載することが多くなっています。車両周辺の障害物や他車との距離、相対速度を正確に把握することで、安全性や運転支援の精度向上に大きく貢献しています。
また、ドローン分野でもミリ波レーダーは重要な役割を果たしています。ドローンは、周囲の物体との距離を高精度に測定することで、障害物を的確に回避し、安全な飛行を維持できます。
さらに、産業機械においてもミリ波レーダーは活躍しています。産業機械は、人や物体との距離を正確に把握しながら動作することで、安全性と作業効率を両立させることが可能です。
今後、ミリ波レーダーはさらなる技術革新とともに、介護分野やスマートホームなど、さまざまな新しい分野での活用が見込まれています。例えば、介護現場では入居者の動きや状態をモニタリングし、異常を早期発見するシステムとしての活用が期待されています。
LiDAR(ライダー)とは
LiDAR(ライダー)とは、「Light Detection And Ranging」の略であり、光を使ったセンシング技術を指します。その名前の通り、光(Light)を用いて対象物との距離や形状を高精度に測定するシステムです。
LiDARは、レーダーレーザーとも呼ばれ、主に近赤外線(750nm〜1,000nm)の波長を使用します。この近赤外線を対象物に照射し、反射して戻ってくる光を解析することで、対象物までの距離や形状、位置関係を詳細に把握することができます。
「2D LiDAR」と「3D LiDAR」がある
LiDARには、「2D LiDAR」と「3D LiDAR」の2つの種類があります。
「2D LiDAR」は、光を水平に走査させることで、対象物の平面上の距離情報を取得することができます。この技術は、主に平面的な物体の検出や障害物回避などに活用されます。
一方で、「3D LiDAR」は、高さ方向の情報も取得できるため、立体的な計測が可能です。これにより、周囲の環境をより詳細かつ正確に把握することができ、自動運転技術や精密なマッピング、測量分野で広く利用されています。
本記事では、より高度な計測技術である「3D LiDAR」に焦点を当てています。
LiDARの活用範囲
LiDARは、短い波長を扱う特性から、エアロゾルや大気中の浮遊物質の計測システムにも活用されています。
センシング技術では、波長よりも小さな対象物を検知することはできないため、短い波長を持つLiDARは、非常に細かい対象物の検知や解析が可能です。
また、LiDARはその高精度なセンシング能力を活かし、自動運転をはじめ、航空測量、ロボット掃除機、ゴルフ距離計、さらには体操競技の採点といった幅広い分野で活用されています。
ミリ波レーダーのメリットと注意点
ミリ波レーダーは、自動運転技術や産業機械、ドローンなど、さまざまな分野で活用されるセンシング技術です。以下では、ミリ波レーダーのメリットと注意点について、それぞれ詳しく解説します。
ミリ波レーダーのメリット
ミリ波レーダーの最大の特長はコストパフォーマンスの高さです。LiDARと比較して価格が安価であり、近年アンテナを半導体パッケージに実装した製品もあり大量生産にも適しているため、幅広い分野への普及が進んでいます。また、小型・軽量化が可能な点も大きな利点です。
さらに、天候に左右されにくいのも強みです。雨や霧、雪といった悪天候下でも安定した動作が可能であり、天候に依存しない確実なデータ取得が期待できます。加えて、リアルタイムでのデータ処理や瞬時の判断が求められる状況でも優れたパフォーマンスを発揮します。
加えて、ミリ波レーダーは遠距離の対象物を高性能に検知できる技術を備えています。特に高速道路での車両検知や広範囲な監視システムなど、遠距離でも安定した性能を発揮する点が評価されています。
ミリ波レーダーの注意点
一方で、ミリ波レーダーには技術的な制約や苦手分野も存在します。特に課題として挙げられるのが、対象物の種類を区別することが苦手な点です。LiDARと比べミリ波レーダーは分解能が低いため、たとえば、人間と自転車を区別するのが難しいことがあり、特定のシチュエーションでは誤認識が発生する可能性があります。
また、ミリ波レーダーは小さな物体や反射率の低い物体の検知も苦手とされています。さらに、近距離での検知が難しいという弱点もあります。対象物との距離が近すぎる場合、正確な検知が難しくなることがあり、システム設計や配置の工夫が必要となります。
LiDARのメリットと注意点
LiDARは、高精度な距離測定と立体的なデータ取得を可能にするセンシング技術として、自動運転や測量、産業機械などさまざまな分野で活用されています。
以下では、LiDARのメリットと注意点について詳しく解説します。
LiDARのメリット
LiDARの最大の特長は、距離測定の精度が非常に高いことです。
また、LiDARは高解像度かつ高密度なデータを3次元的に取得できるため、物体の形状や位置関係を立体的に捉えることができます。障害物の識別や空間認識が非常に優れており、自動運転技術や精密測量、さらには都市計画など、幅広い分野での応用が進んでいます。
LiDARの注意点
一方で、LiDARにはいくつかの課題や制約も存在します。まず挙げられるのは、天候に左右されやすいという点です。雨や霧、雪などの悪天候下では、レーザー光が散乱してしまい、正確なデータ取得が難しくなることがあります。
また、コストが高いという点も実用化が進まない要因のひとつとされています。加えて、LiDARは色の識別が苦手という特性もあります。レーザー光を使用するため、対象物の色や質感を正確に識別することは難しく、特定の物体を区別する際に限界が生じることがあります。
まとめ
ミリ波レーダーとLiDARは、どちらも高精度な検出技術として、自動運転や産業分野で不可欠な役割を果たしています。ミリ波レーダーは「天候に強く、遠距離検知に優れる」一方で、LiDARは「高解像度で立体的なデータ取得が得意」という特徴があります。
今後も、技術はさらなる進化を遂げ、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えることでしょう。
丸文株式会社のミリ波レーダーは最先端技術を活用し、人検知や水位計測等のレベルセンシング、車両検知、非接触バイタルサインモニタリングを実現します。防犯設備やオフィス、駐車場、介護現場など、さまざまな環境で安全性と効率性を向上させる革新的なセンサーソリューションを提供します。