ミリ波レーダーの課題とは?メリットや活用方法などについても解説
ミリ波レーダーは、自動運転技術や介護分野、さらにはドローンなど、多岐にわたる分野で活用されている注目の技術です。しかし、そんなミリ波レーダーにもいくつかの課題や弱点が存在します。
本記事では、ミリ波レーダーの抱える課題点に焦点を当てながら、活用分野についても詳しく解説します。
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目次
●まとめ
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ミリ波レーダーとは
ミリ波レーダー(またはミリ波センサー)は、ミリ波帯の電波を使用して対象物との距離、速度、角度を測定する装置です。この技術は1930~40年代に開発されたマイクロ波レーダーを基に発展しました。
特に自動車業界では、車載用ミリ波センサーが広く採用され、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術の基盤として利用されています。
ミリ波レーダーの仕組み
ミリ波レーダーは、高周波のミリ波を送信し、その反射波を受信して動作します。
まずミリ波の信号をシンセサイザーと呼ばれる装置で合成します。そして、送信アンテナから発信されたミリ波が物体に反射して、受信アンテナで反射波を受信します。そうして送受信した情報を信号処理することによって、対象物との距離、速度、角度が計算できる仕組みです。
ミリ波レーダーの課題・弱点
ミリ波レーダーは自動運転技術やADAS(先進運転支援システム)において欠かせない存在ですが、いくつかの課題や弱点もあります。ここでは、主な課題について解説します。
反射率の低い物体の検知が困難
ミリ波レーダーは電波の反射を利用して対象物を検知する仕組みですが、非金属や反射率の低い素材(たとえば布やプラスチック)では十分な反射波が得られないため、検知が難しくなる場合があります。
この特性が原因で、特定の状況では物体の認識が不十分になることがあります。
近距離の対象物を検知しづらい
ミリ波レーダーは長距離の対象物を検知する能力に優れていますが、車両周辺の近接障害物の検知には向いていません。そのため、超音波センサーやカメラなど、他のセンサーと併用する必要があります。
ただし、一部の製品では近距離の物体も検知できるものが開発されています。
小さな物体を検知しづらい
ミリ波レーダーの性質上、落下物や飛んでいる鳥など、小型で細かい物体の検知が難しい場合があります。この弱点は、自動運転車が予期しない障害物に直面した際に問題となることがあります。
極端な悪天候下では性能が低下しやすい
ミリ波レーダーは雨や霧に強いと言われていますが、非常に激しい雨や雪などの極端な悪天候では電波が散乱・減衰し、検出性能が低下するリスクがあります。そのため、悪天候時の安全性に影響が出る可能性があります。
対象物以外の物体に遮られる恐れもある
ミリ波レーダーは直進性が高いため、視界内にある障害物(たとえばトラックの荷台や立ち木など)が検知を妨げる場合があります。また、不要な反射波が生じると、正確な検出が難しくなることもあります。
ミリ波レーダーの利点
ミリ波レーダーは、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)を支えるセンサーとして多くの利点を持っています。以下で詳しく解説します。
LiDARと比べて価格が安価
ミリ波レーダーの大きな利点の一つは、LiDARと比べてコストパフォーマンスに優れている点です。LiDARはレーザー光を使って対象物の距離や形状を詳細に測定するセンサーで、高精度な3Dマッピングが可能という特長があります。
しかし、その高精度ゆえに価格が高く、大量生産や広範な普及には向いていないとされています。一方、ミリ波レーダーは必要な性能を維持しながら、より低価格で提供できる点が評価されています。
天候に左右されにくい
ミリ波レーダーは電波を利用しているため、光を使うカメラやLiDARと比較して、環境要因の影響を受けにくいという特長があります。
極端な環境下を除けば、雨や霧、雪といった天候でも安定した動作が可能です。そのため、光学センサーが苦手とする状況でも性能が低下しにくく、悪天候や暗闇での使用にも適しています。
遠距離対象物の検知が得意
ミリ波レーダーは、高い周波数帯を使用するため直進性が強く、遠方にある対象物を検知する能力に優れています。例えば、高速道路での車間距離の測定や、高速で接近する物体の検出において非常に有効です。
こうした性能は、自動運転車が安全かつスムーズに走行するために欠かせない要素となっています。
汎用性が極めて高い
ミリ波レーダーは、自動運転車のセンサーとしてだけでなく、さまざまな分野で広く利用されていることが特徴です。例えば、産業用センサーとして機械の動きを検知したり、ヘルスケア分野では心拍や呼吸を非接触で推定したりする用途に活用されています。
また、セキュリティ分野では侵入者の検知に、ドローンでは障害物を回避するためのセンサーとしても使用されています。
多岐にわたる用途に対応できる点から、ミリ波レーダーは極めて高い汎用性を持つ技術であると言えます。
ミリ波レーダーの活用方法
ミリ波レーダーはその高い汎用性と精度を活かし、さまざまな分野で活用されています。ここでは、自動運転システムからヘルスケア、防犯システム、ドローンまで、代表的な活用例を解説します。
自動運転システム
ミリ波レーダーは、自動運転車の周囲認識技術において重要な役割を果たしています。このセンサーを使用することで、車両周辺の物体を検知し、距離や速度をリアルタイムで把握することが可能です。
具体的には、自動ブレーキや車線維持といった先進運転支援システム(ADAS)に加え、高速道路での車両追従や障害物検知といった機能が実現されています。
ヘルスケア
非接触型の生体センサーとして、ミリ波レーダーはヘルスケア分野でも活躍しています。心拍や呼吸の微細な動きを検出し、健康状態をリアルタイムで監視できるため、高齢者見守りシステムで活用されています。転倒や異常動作の察知に役立ち、安全性と利便性を提供しています。
防犯システム
防犯システムの分野では、建物や敷地内への侵入者を検知するためにミリ波レーダーが利用されています。この技術は、動きや距離を高精度で検知できるため、夜間や悪天候でも侵入をリアルタイムで察知し、警報を発することが可能です。
また、自動ゲートや扉の開閉を制御するセンサーとしても活用され、効率的な防犯を支えています。
ドローンの自律飛行システム
ミリ波レーダーは、ドローンの自律飛行における重要なセンサーとしても採用されています。飛行中に周囲の物体を検知し衝突を防ぐだけでなく、風の影響を受ける環境下でも安定した飛行を実現します。
また、配送ドローンでは着陸時の安全確保や地形把握にも応用されており、より安全で効率的な運用を可能にしています。
まとめ
ミリ波レーダーは、自動運転車の周囲認識技術をはじめ、ヘルスケアや防犯システム、ドローンの自律飛行など、幅広い分野で利用されている重要な技術です。一方で、反射率の低い物体や近距離の障害物の検知が難しい、極端な悪天候下で性能が低下するなどの課題も存在します。
こうした課題を克服するには、他のセンサーとの組み合わせや技術のさらなる進化が鍵となります。ミリ波レーダーの活用は、自動運転車だけでなく、さまざまな産業での効率化や安全性向上に大きく貢献しており、今後も需要は増加していくでしょう。
当社で取り扱うミリ波レーダーは、人検知や車両検知、非接触のバイタルサインモニタリングなどの用途に活用されています。