【対立から協調へ】Wi-Fi 7とローカル5Gの共存が拓く、次世代DXの姿
はじめに:「どちらを選ぶか」から「どう組み合わせるか」の時代へ
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支えるワイヤレス技術の進化が止まりません。超高速通信を実現する最新規格「Wi-Fi 7」。そして、高信頼な専用網を構築する「ローカル5G」。
これまで、この2つの技術は「どちらが優れているか」という文脈で比較されることが多くありました。しかし、企業のDXがより深く、より複雑になるにつれて、その議論は新たなステージへと移行しています。
それは、「対立から協調へ」という大きな潮流です。
これからのワイヤレス戦略の鍵は、二者択一の発想から脱却し、両者の強みを適材適所で組み合わせる「ハイブリッド・ワイヤレス」という視点を持つことです。
この記事では、Wi-Fi 7とローカル5G、それぞれの揺るぎない強みを再確認した上で、両者が「共存」することでいかにして企業の課題を解決し、DXを新たな高みへと導くのか、具体的なシナリオを交えて徹底的に解説します。
無線伝搬シミュレーションの詳細はこちら
お問い合わせはこちら
1. Wi-Fi 7の揺るぎない強み – 「超高速・柔軟性」
Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)は、私たちに身近なWi-Fiの最新進化形です。その本質的な強みは「圧倒的な通信速度」と「導入の柔軟性」にあります。
- 理論値46Gbpsのポテンシャル: Wi-Fi 6/6Eの約4.8倍に達する通信速度は、大容量データの送受信が頻発する環境において絶大な効果を発揮します。
- 3つのコア技術:
- 豊富なエコシステムとコスト効率: 既に普及しているPCやスマートフォン、タブレットなど、多種多様なデバイスが対応予定であり、比較的低コストで高速な通信環境を構築できる点が最大の魅力です。
Wi-Fi 7の役割
Wi-Fi 7は、「人」が主役となるエリアで、最高のパフォーマンスを発揮します。オフィス、研究開発室、会議室など、既存のIT資産を活かしつつ、通信品質を劇的に向上させたい場合に最適なソリューションです。
2. ローカル5Gの絶対的な価値 – 「超高信頼・広範囲」
ローカル5Gは、企業が自社の敷地内に構築する「専用のモバイルネットワーク」です。その絶対的な価値は、Wi-Fiが決して真似のできない「信頼性」「セキュリティ」「カバレッジ」にあります。
- 免許周波数帯がもたらす安定性: 国から割り当てられた専用の周波数帯を使用するため、他の電波干渉とは無縁です。通信の遅延や途絶が許されない、ミッションクリティカルな環境でこそ真価を発揮します。
- 高度なセキュリティと広域カバレッジ: SIM認証による厳格なデバイス管理と、公共網から分離された閉域網により、極めて高いセキュリティを実現します。また、携帯電話基地局の技術を応用し、広大な敷地や屋外、建物をまたがるエリアをシームレスにカバーします。
- 移動体への強さ: 高速で移動する対象物でも通信が途切れない「ハンドオーバー」技術に優れており、AGV(無人搬送車)やフォークリフトの制御に最適です。
ローカル5Gの役割
ローカル5Gは、「機械」や「制御」が主役となるエリアで、その真価を発揮します。工場の生産ライン、広大な倉庫、屋外の建設現場など、ビジネスの根幹を支えるインフラとしての役割を担います。
3. 【実践編】Wi-Fi 7とローカル5Gのハイブリッド活用シナリオ
「どちらかを選ぶ」のではなく「どう組み合わせるか」。ここからは、両技術が協調して稼働する、具体的なハイブリッド・シナリオをご紹介します。
シナリオ1:次世代スマートファクトリー
スマートファクトリーは、ハイブリッド・ワイヤレスが最も効果を発揮する現場の一つです。
- 基幹ネットワーク(ローカル5G):
- スポット高速通信(Wi-Fi 7):
シナリオ2:先進スマートホスピタル
人命を預かる医療現場では、信頼性と利便性の両立が求められます。
- ミッションクリティカル通信(ローカル5G):
- 高速データ活用とアメニティ(Wi-Fi 7):
効果: 医療従事者の業務効率化と、患者満足度の向上に貢献します。
《共存イメージ》 医師や看護師が持つ1台のスマートフォンやタブレットが、場所と用途に応じて最適なネットワークに自動で接続。院内を移動しながら患者情報を確認する際はローカル5Gに、医局で大容量の画像データを確認する際はWi-Fi 7にシームレスに切り替わり、ストレスのない情報アクセスを実現します。
4. 最適なハイブリッドネットワークの構築に向けて
見てきたように、Wi-Fi 7とローカル5Gは、対立する技術ではなく、互いの弱点を補い合い、DXを加速させる最高のパートナーになり得ます。
これからのワイヤレス戦略を立案する上で重要なのは、以下の3つのステップです。
- 課題の可視化: 自社のどの場所で、どのような通信(高速性、信頼性、移動性など)が求められているのかを徹底的に洗い出す。
- 役割分担の設計: 可視化された課題に対し、Wi-Fi 7とローカル5G、それぞれの強みを活かせるエリアと用途をマッピングし、最適な役割分担を設計する。
- 統合的な運用管理: 異なる2つのネットワークを、いかにしてシームレスに連携させ、効率的に運用管理していくかという視点を持つ。
5. まとめ
「Wi-Fi 7か、ローカル5Gか」という二元論の時代は終わりを告げました。
これからは、「超高速・柔軟性」のWi-Fi 7と「超高信頼・広範囲」のプライベート5Gを、いかに賢く組み合わせ、最強のハイブリッド・ワイヤレス環境を創造するかが、企業の競争力を左右する時代です。
自社のビジネス要件、既存資産、そして5年後、10年後の未来像を見据え、最適なハイブリッドモデルを設計すること。それが、DX時代をリードするための新たな羅針盤となるでしょう。
Ranplan社の無線電波伝搬シミュレーションツールは5Gはもちろん、Wi-Fi7のシミュレーションも実施できるツールとなっています。未来のネットワーク環境について、ぜひ一度お話をお聞かせください。
無線伝搬シミュレーションの詳細はこちら
お問い合わせはこちら