商品基礎情報
なぜクロック信号に差動伝送が使われるのか
クロック信号に差動伝送(特にLVDSやLVPECL、HCSLなど)が採用される主な理由は以下の通りです。
- ジッター特性の向上: 差動信号はノイズ耐性が高いため、外部ノイズによるジッターの増加を抑えることができます。
- 高速クロックへの対応:システムクロックが数百MHzから数GHzへと高速化するにつれて、シングルエンド信号では波形の品質維持が難しくなります。差動信号は低電圧振幅で高速伝送が可能なため、このような高速クロックの伝送に適しています。
- EMI低減によるシステム安定化:クロック信号はシステム内で広範囲に分配されることが多く、強力なEMI源となり得ます。差動クロックはEMI放射を低減するため、システム全体の安定動作に貢献します。
差動出力水晶発振器 (LVDS/LVPECL/HCSL発振器)
LVDS
特長: 低消費電力、比較的低い電圧振幅(約350mV差動)、良好なジッター特性。
LVPECLE
特長: 非常に高速なスイッチングが可能、比較的大きな出力振幅(約800mV差動)、優れたジッター特性。ただし消費電力はLVDSより大きい傾向があります。
用途: 高速通信(10Gbps以上)、計測器など、最高の性能が求められる用途。
HCSL
特長: PCI Expressなどのシリアルインターフェースで標準的に使用される。LVDSやLVPECLと比較して、ACカップリングコンデンサと直列の終端抵抗(各ライン50ΩでGNDへ)のみでDC結合が不要な場合が多い。低消費電力で良好なジッター特性を持つ。
用途: PCI Express、SATA、USB3.0などの高速インターフェース。
LVDSおよび差動クロックの応用例
通信機器
基地局 (Base Stations): 携帯電話網の基地局では、アンテナ制御、データ処理部間の高速データ転送、同期クロック分配などにLVDSや差動クロックが不可欠です。
データセンター・サーバー
サーバー内部の高速バス: CPU間、CPUとメモリ間、あるいは拡張カード(PCI Expressなど)との接続に高速差動インターフェースが標準的に使われます。これらにはHCSLやLVPECL、あるいはさらに高速な差動技術が用いられます。
画像・映像機器
ディスプレイインターフェース:FPD-Link (Flat Panel Display Link): ノートPCの液晶パネルや車載ディスプレイとグラフィックコントローラ間の接続に広く使われているLVDSベースのインターフェースです。
HDMI, DisplayPort: これらの現代的な映像インターフェースも差動信号技術をコアとしています。
計測機器・医療機器
オシロスコープ、ロジックアナライザ: 高速な信号を正確に捉えるために、プローブや内部の信号経路に差動技術が使われます。
超音波診断装置、MRI: 大量のセンサーデータを高速かつ低ノイズで処理するために、内部のデータパスやクロック分配に差動信号が活用されます。
LVDSおよび差動クロックの応用例
FA(ファクトリーオートメーション)
FA機器: PLC(プログラマブルロジックコントローラ)間の高速通信や、サーボモーター制御エンコーダーの信号伝送など、ノイズの多い工場環境での信頼性確保にLVDSが貢献します。
車載
車載機器: エンジンコントロールユニット(ECU)間通信、カーナビゲーション、インフォテインメントシステム、先進運転支援システム(ADAS)のカメラ映像伝送などに、LVDSや車載イーサネット(差動ペアを使用)
差動クロックと水晶製品/まとめ
差動信号は、2本の線で逆位相の信号を伝送することにより、優れたノイズ耐性、低EMI、高速伝送を実現する技術です。
LVDSは、低電圧振幅で動作する代表的な差動インターフェース規格であり、高速かつ低消費電力なデータ伝送を可能にします。
差動クロックは、システムの高速化・高精度化に伴い、ジッター低減と安定したクロック供給のために不可欠となっています。LVDS、LVPECL、HCSLといった出力形式を持つ水晶発振器が、その要求に応える重要なデバイスです。
本記事が、差動クロックやLVDS、そして関連する水晶製品の理解を深め、皆様の製品開発や設計業務の一助となれば幸いです。ご不明な点や、より詳細な製品情報が必要な場合は、どうぞお気軽にお問い合わせください。