【革新】テザー式無人機の常識を覆す!Vicorが実現する高効率電源供給の秘密
長時間運用が可能なテザー式ドローンやROV(遠隔操作型無人潜水機)は、点検・監視の現場で不可欠なツールです。しかし、重いケーブルと電力損失という課題がその可能性を制限していました。この記事では、Vicorの電源ソリューションがどのようにこれらの課題を解決し、テザー式無人機の産業利用をさらに拡大しているのかを、技術的な視点から分かりやすく解説します。
テザー式無人機が抱える「重いケーブル」と「電力損失」というジレンマ
テザー式無人機は、その名の通り、母機(地上や船上など)とケーブル(テザー)で接続され、連続的な電力供給を受けながら運用されるシステムです。バッテリーの容量に縛られず、数時間から数日にわたる長時間運用が可能になるため、災害監視、インフラ点検、通信中継といった用途で大きな期待が寄せられています。
しかし、このテザーケーブルが運用上のボトルネックとなっていました。
ケーブルの重量がペイロード(積載量)と運用時間に影響
無人機に電力を供給するためには、ある程度の太さを持った銅線が必要です。特に長距離にわたる運用では、ケーブル自体の重さが無視できなくなり、無人機が搭載できるペイロード(カメラ、センサー、照明など)の量が制限されます。ドローンの場合、ケーブルの重さによって飛行時間に大きな影響が出てしまいます。
長いケーブルによる電圧降下と電力損失
ケーブルが長くなるほど、抵抗によって電圧が下がり(電圧降下)、熱として電力が失われる(電力損失)現象が顕著になります。この損失は電流値の2乗に比例して大きくなるため、機体に安定した電力を供給するためには、さらに太いケーブルを使う必要が生じ、前述の重量問題がさらに深刻化するという悪循環に陥っていました。
Vicorの技術が導く、テザー式無人機の新時代
これらの課題を根本的に解決するために、Vicorは革新的な電源ソリューションを提供しています。その鍵となるのが「高電圧DCシステム」と「小型・高効率な電源モジュール」です。
高電圧DCシステムによる根本的な課題解決
電力損失を最小限に抑えるには、電流値を低くすることが最も効果的です。Vicorのシステムは、地上側で電圧を数百Vの高電圧DCに昇圧し、テザーケーブルを通じて機体へ電力を送ります。 この高電圧・低電流の設計により、ケーブルを流れる電流は劇的に少なくなり、結果として、より細く軽量なケーブルで必要な電力を供給することが可能になります。これにより、ケーブルの重さが大幅に削減され、無人機のペイロードが増加し、運用効率が向上します。
小型・高効率な電源モジュール(BCM)の役割
機体に到達した高電圧は、そのままでは使用できません。そこで活躍するのがVicorのバスコンバータモジュール(BCM)です。このモジュールは、ケーブルからの高電圧を、機体のモーターや電子機器が必要とする低電圧(通常48Vなど)に96%以上の高効率で変換します。 手のひらサイズにも満たない小型パッケージでありながら、キロワット級の大電力を扱える高電力密度を誇るため、機体の軽量化に大きく貢献します。これにより、飛行時間や稼働時間を延長するだけでなく、より高性能なセンサーやカメラを搭載できるようになります。
地上から水中へ。Vicorが支える多様な産業分野
Vicorの電源ソリューションは、テザー式無人機の可能性を広げ、様々な産業分野での活用を加速させています。
災害現場での長時間監視ドローン
災害発生時、長時間の状況監視や安否確認は非常に重要です。バッテリー式ドローンでは成し得なかった、数時間、あるいは数日にわたる定点監視がテザー式ドローンによって可能になります。Vicorの技術は、その安定した電源供給を支えます。
海洋インフラの点検・調査用ROV
海底ケーブルやダム、橋梁などの水中インフラの老朽化は大きな課題です。テザー式ROVは、水中で安定した照明やセンサーを長時間稼働させる必要があり、高効率な電源システムは不可欠です。Vicorの小型・軽量モジュールは、機体の浮力や機動性を保ちつつ、高いパフォーマンスを実現します。
農業や建設現場における活用事例
広大な農地の状態監視や、建設現場における進捗管理、測量など、テザー式ドローンの活躍の場は広がり続けています。ケーブルの軽量化は、これらの屋外での作業効率を飛躍的に向上させます。