48V電源設計の壁を破る!Vicorのバスコンバータが実現する高電力密度と設計自由度
データセンターや産業機器で標準となりつつある48Vバス電源。しかし、電力密度や変換効率、放熱設計に課題を感じていませんか?本記事では、Vicor社のバスコンバータモジュール(BCM)が、これらの課題をいかに解決し、電源設計の自由度を高めるかを具体例と共に解説します。
多くのエンジニアが直面する48V電源設計の課題
AIの進化、IoT機器の普及、そして工場の自動化(FA)など、あらゆる分野で電子機器の高性能化が進み、消費電力は増加の一途をたどっています。これに伴い、従来の12Vバスでは配電損失(I2R損失)が無視できなくなり、より高電圧な48Vバスアーキテクチャへの移行が加速しています。
しかし、この48V化には、設計エンジニアを悩ませる新たな課題が伴います。
増加し続ける電力要求とスペースの制約
最も大きな課題は「電力密度」です。サーバーラック、ロボットアーム、通信機器など、製品全体のサイズは変わらない、あるいはより小型化が求められる中で、電源システムに割けるスペースは極めて限られています。高出力化と小型化という、相反する要求を同時に満たす必要に迫られています。
変換段数が増えることによる効率低下と発熱
48Vバスからプロセッサなどが要求する低電圧(例:1V)まで降圧するには、多くの場合、一度中間バス電圧(例:12V)に変換する多段構成が採られます。しかし、電力変換段数が増えるほど、各段でのエネルギー損失が積み重なり、システム全体の効率は低下します。そして、失われたエネルギーは「熱」となり、システムの安定動作を脅かす原因となります。
従来の電源モジュールではサイズと性能がトレードオフに
これまでの技術では、高効率・高出力を求めると電源モジュールのサイズが大きくなり、小型化すると性能が犠牲になるというトレードオフの関係が一般的でした。このため、エンジニアは性能、サイズ、コストのどこかで妥協を迫られてきました。
これらの課題と、Vicorのバスコンバータモジュール(BCM)がもたらす解決策を以下の表にまとめました。
Vicorのバスコンバータが提供する解決策
Vicorのバスコンバータモジュール(BCM)は、これまで常識とされていたトレードオフを打ち破り、48V電源設計の課題を根本から解決するポテンシャルを秘めています。
98%に迫る変換効率で発熱を最小化
BCMの最大の特長は、最大98%に迫る極めて高い変換効率です。これは、Vicor独自の「SAC™(正弦波振幅コンバータ)」技術により、スイッチング損失を極限まで低減することで実現されています。
- 発熱量の削減: 変換効率が高いということは、熱として失われるエネルギーが少ないことを意味します。例えば、1kWの電力を変換する際、効率94%のモジュールでは60Wの熱が発生しますが、効率98%のBCMなら発熱はわずか20Wです。
- 信頼性の向上: 発熱が少ないため、コンポーネントの温度上昇を抑え、製品の長寿命化と高信頼性化に貢献します。
独自のChiPパッケージ技術による圧倒的な小型・薄型化
Vicorは、コンバータをパッケージ内に収納する独自の「ChiP(Converter housed in Package)」技術を採用しています。これにより、驚異的な電力密度を実現し、基板上の実装面積を劇的に削減します。
スペースの有効活用: 従来の1/4ブリックや1/8ブリックといった大型モジュールからの置き換えにより、空いたスペースに他の機能を追加したり、製品全体を小型化したりすることが可能になります。
薄型設計: 高さ方向にも制約があるブレードサーバーやモバイル機器など、薄型化が求められるアプリケーションに最適です。
熱設計を簡素化し、最終製品の小型化に貢献
「高効率化」と「高密度パッケージング」の相乗効果により、熱設計が大幅に簡素化されます。 発熱量が少ないため、これまで必要だった大型のヒートシンクや強制空冷ファンを小型化、あるいは省略できる可能性があります。これにより、冷却機構にかかるコストとスペースを削減し、最終製品のさらなる小型・軽量化を実現します。
【アプリケーション例】BCMはここで活躍する
VicorのBCMは、その優れた特性から、高い性能と信頼性が要求される最先端分野で広く採用されています。
- データセンターのサーバーラック:限られたラックスペース内で最大限の演算処理能力を詰め込むために、電源システムの高密度化は不可欠です。BCMは、サーバーボード上の貴重なスペースを節約し、データセンター全体の電力効率(PUE)改善にも貢献します。
- 産業用ロボット・FA機器 :多関節ロボットのアーム内部や小型の制御ボックスなど、スペースが限られ、かつ安定動作が求められる環境に最適です。高効率であるため、密閉筐体内部での熱問題の緩和にも繋がります。
- 通信基地局 :5Gの普及に伴い、より高出力で小型な基地局が求められています。BCMは、屋外設置される機器の小型・軽量化を可能にし、消費電力(運用コスト)の削減に貢献します。
まとめ
次世代の電源設計はVicorのBCMと共に
本記事では、48Vバス電源設計が直面する「スペース」「効率」「熱」という3つの大きな課題と、それを解決するVicorのバスコンバータモジュール(BCM)について解説しました。
- 課題: 高性能化に伴う電力増と、小型化要求によるスペースの制約
- 解決策: VicorのBCMが持つ「圧倒的な高効率」「高電力密度パッケージ」「簡素化された熱設計」
従来の電源モジュールでは性能のどこかを妥協する必要がありましたが、VicorのBCMは、その常識を覆し、設計者にこれまで以上の自由度をもたらします。
もし貴社の製品開発において、電源のサイズや発熱でお悩みでしたら、ぜひVicorのバスコンバータモジュールをご検討ください。次世代の電源設計へのブレークスルーとなるはずです。