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周波数の謎を解く!ピクセルクロックの計算方法
なぜディスプレイの仕様によって、クロックの周波数が変わるのでしょうか?その答えは、ディスプレイの「解像度」と「リフレッシュレート」にあります。
ピクセルクロックの周波数は、以下の計算式で概算できます。
ピクセルクロック周波数 (Hz)≈水平総画素数×垂直総画素数×リフレッシュレート (Hz)
ここで重要なのが、画面に表示される「有効画素数」だけでなく、表示されない領域である「ブランキング期間(Blanking)」も加えた「総画素数」で計算するという点です。
ブラウン管(CRT)の時代の「ビームを戻すための時間」がブランキング期間の起源です。
水平ブランキング期間 (Horizontal Blanking): 水平方向の走査線が右端から左端に戻るまでの時間。
垂直ブランキング期間 (Vertical Blanking): 画面の右下から左上に戻るまでの時間。
代表的な周波数と、その技術的背景
①27MHz - デジタル放送の基準クロック「SDTV」
NTSC(日本や北米の標準テレビ放送方式)やPAL(欧州の方式)といった標準画質(SDTV)のデジタルビデオ信号で基準とされるのが27MHzです。
これは、放送業界の標準規格であるITU-R BT.601で定められました。この規格では、輝度信号(Y)を13.5MHzでサンプリングし、色差信号(Cb, Cr)をその半分の6.75MHzでサンプリングします。
13.5 MHz(Y)+6.75 MHz(Cb)+6.75 MHz(Cr)=27 MHz
この27MHzは、世界の主要な放送方式(NTSCの59.94HzとPALの50Hz)の両方から整数比で分周しやすい最小公倍数的な値として設計されており、DVDプレーヤーやセットトップボックスなど、多くのデジタルAV機器のマスタークロックとして採用されてきました。
② 148.5MHz - フルハイビジョンの世界「Full HD」
現在最も普及しているFull HD (1920x1080p) @ 60Hz。この映像を伝送するHDMIやDisplayPortで基準となるのが148.5MHzです。
水平総画素数: 2200ピクセル (有効画素1920 + ブランキング280)
垂直総ライン数: 1125ライン (有効ライン1080 + ブランキング45)
リフレッシュレート: 60Hz
2200×1125×60 Hz=148,500,000 Hz=148.5 MHz
計算結果が規格値とぴったり一致します。
HD-SDIという放送業務用インターフェースでは、720p/1080i用に74.25MHz (27MHz x 2.75) も使われており、これらは全て27MHzをベースに考えられています。
③さらなる高周波へ - 4K/8K時代
4K (3840×2160)、8K (7680×4320) と解像度が上がるにつれて、ピクセルクロックはさらに高くなります。
4K @ 60Hz: 約594MHz (148.5MHzの4倍)
8K @ 60Hz: 約2.376GHz (594MHzの4倍)
このように、高解像度・高リフレッシュレート化は、そのままクロック周波数の増大に直結します。これほど高い周波数の信号を安定して伝送するためには、ケーブルやコネクタ、そして送受信ICに高度な技術が求められます。
なぜ「低ジッタ特性」が重要なのか?
表示用クロックを選定する上で、最も重要視される特性の一つがジッタです。
ジッタとは、クロック信号の周期が理想的なタイミングから微妙に揺らいでしまう現象のことです。
この揺らぎが大きいと、データの転送タイミングにズレが生じ、画質に深刻な影響を及ぼします。
画質の劣化:
ジッタが大きいと、画面にノイズ(スノーノイズ)が発生したり、色の輪郭が滲んだり、特定の色が正しく表示されなくなったりする原因となります。
位相ノイズ、周波数安定性 – 高画質を支えるその他の重要特性:
ジッタと密接に関連するのが位相ノイズです。これは周波数領域でクロック信号の純度を表す指標で、位相ノイズが低いほど、時間領域でのジッタも小さくなる傾向があります。高品位な映像伝送には、この位相ノイズが低い発振器が求められます。
アプリケーション事例とEPSON水晶クロックのご紹介
表示用クロックは、私たちの身の回りのあらゆるディスプレイ搭載製品で活躍しています。
PCモニター/ノートPC: VGAからDisplayPortまで、様々なインターフェースに対応するクロックが必要です。特にゲーミングモニターでは、144Hzや240Hzといった高リフレッシュレートを実現するため、非常に高速かつ低ジッターなクロックが求められます。
⇒高精度かつ低ジッタ品でのEPSON製品はSG-8201CG/SG-8201CJのプログラマブル品がお薦めです!!
テレビ/プロジェクター: HDMIインターフェースが主流であり、4K/8K対応のため、594MHzといった高速なクロックを安定して生成・受信する技術が重要です。
⇒将来的には高速(高周波)になることが予想され、差動出力(LVDS等)で位相ノイズも安定しているVG3225EFN / VG5032EFNがお勧め製品となります。
スマートフォン/タブレット: MIPI DSIといったモバイル向け高速インターフェースが使われます。高精細な有機ELディスプレイを駆動しつつ、バッテリー消費を抑えるため、低消費電力で高性能なクロック源が不可欠です。
⇒スマートフォンはスペース的に小型品であるSG2016CAN、SG2016VHNがお勧めです!
車載ディスプレイ/デジタルサイネージ: 高温や振動といった過酷な環境でも安定して動作する、高信頼性のクロック部品が要求されます。また、長いケーブルで映像を伝送することも多く、ジッター特性が特に重要視されます。
⇒車載製品は高周波(~170MHz)対応可能なSG-8201CJA / SG-9101CGA がお勧めです!
まとめ
「表示用クロック」がどのようにしてディスプレイの仕様と結びついているのか、そしてその周波数がどのように決まるのかを、具体的な数値を交えて解説しました。
ピクセルクロックは、1ピクセルを表示するための基準となる信号。
その周波数は**「水平総画素数 × 垂直総画素数 × リフレッシュレート」**で決まる。
27MHzやFull HDの148.5MHzといった代表的な周波数は、解像度やリフレッシュレート、そして歴史的な規格に基づいて導き出されている。
高画質化に伴いクロックは高周波化し、低ジッター特性や**EMI対策(SSC)**の重要性が増している。
ディスプレイ技術の進化は、まさにクロック技術の進化と共にあると言っても過言ではありません。8K、高リフレッシュレートゲーミング、VR/ARといった次世代の映像体験は、より高速で、より高精度なクロック技術によって支えられていくでしょう。
弊社では、最新のディスプレイ規格に対応した各種水晶発振器などを豊富に取り揃えております。
お客様のアプリケーションに最適なクロックソリューションのご提案が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。