商品基礎情報
基板対基板コネクターの課題
電気製品を製造するうえで、複数の基板を用いることは珍しいことではありません。しかし、そこにいくつかの課題があり、主に信頼性の確保、小型化と高密度化、そしてコストに関するものがあげられます。
1)嵌合時の位置ズレの吸収
複数の基板を接続する際、実装公差やネジ穴公差、コネクター自体の公差などにより、物理的な位置ズレ(ミスアライメント)が生じます。このズレを吸収できないと、コネクターの破損や、接触不良による接続不安定、最悪の場合システム障害につながります。特に製造工程の自動化における嵌合時のアライメントのマージンは生産性に大きく影響します。
2)低背化・狭ピッチ化
製品を小型化していくうえで、コネクターの高さ(低背)を低くすることや端子間隔(ピッチ)を狭くする(高密度化)ことは重要な課題です。一方で、低背化・狭ピッチ化は製造時のはんだ付け性や、嵌合時の破損リスクが高めます。
3)信号の整合性(シグナルインテグリティ)
高速なデータ伝送が必要な場合、コネクターが原因で信号の反射やクロストークが発生し、データエラーを引き起こす可能性があります。高周波対応設計が求められます。
4) 振動・衝撃への耐性
一般的な産業機器に用いられるコネクターは、コネクターの接触が瞬間的に失われる断続接続や、完全なシステム障害のリスクがあります。これに耐えるために、堅牢な材料の選択や、特殊なロック機構、保持力の高い設計が必要となります。
5) 熱対策
コネクターで発生する熱は、隣接する部品やコネクター自体の劣化を早め、信頼性に影響を与えます。特に大電流を流す用途では、放熱性の確保が課題となります。
6)コストに関する課題
基板間コネクターは、オスとメスのセットが必要であり、また多ピン化や特殊機能(フローティング、高耐振性など)を追加することで、単価が高くなる傾向があります。特に高性能なコネクターほど、精密な製造工程や厳格な品質管理が必要となり、コストが増加します。
課題に対したTE社の新製品(フローティングコネクター)
前記した課題に対し、TE社では新しくフローティングコネクターシリーズをリリースしました。
1)嵌合時の位置ズレの吸収
フローティング量
フローティングコネクターは、X,Y 方向 ±0.6mm、Z 方向 ±0.5mmの可動域を持っています。この可動域によりレセプターとプラグを接続する際の嵌合性が向上します。また、基板とコネクターの接続部にかかる応力も緩和されるため、断線不良を低減させることも可能です。さらに、メス側プラスチックのガイド角度を大きく設定してあり、斜め挿入に対応しています。
2)低背化・狭ピッチ化
本製品は0.8mmピッチに対応した製品です。また、高さ方向はいくつかのバリエーションを持っており、レセプター側が2種類、プラグ側が8種類の製品があり、レセプターとプラグ合わせて、6.25mm~24.7mmの高さがあります。
3)信号の整合性(シグナルインテグリティ)
本製品は、最大2.5 Gbps (Gbps ギガビット/秒) のデータレートで高速データ転送をサポートしています。
また、フローティング構造によりコネクターの接点不良を御心配されるかと思いますが、製品の接触面積は樹脂によって制限されており、厳格な公差解析の結果、最小偏差でも良好な接触が得られています。4) 振動・衝撃への耐性
高振動アプリケーションに適した信頼性の高い性能を持っております。具体的には自動車用電気コネクターシステムの性能仕様書であるUSCAR-2 T3V2に適合しています。また、フローティング構造を採用することで、基板とコネクター接続部への応力が緩和され、コネクターの破損を低減します。
5) 熱対策
本製品は、– 40 ℃ to +105 ℃での動作を満足しております。
6)コストに関する課題
本製品は上記フローティング構造を用いることで、ブラインド嵌合が可能になり組立不良のリスクを最小限に抑えます。また、PCB内での正確な位置決めと、位置決めペグによる容易な取り付けを実現しています。これらにより、嵌合性が向上し生産工程の歩留まりと不良率低減を図ることで、お客様の組立コストを削減します。
製品の概要
・0.8mmピッチで極数は、30~120極の複数バージョンあり
・フローティング構造採用(可動域X,Y 方向 ±0.6mm、Z 方向 ±0.5mm)による嵌合性向上
・接続方向は垂直– 垂直接続及び水平– 垂直接続の2種類
左:垂直―垂直接続 右:水平―垂直接続
・各コネクターの高さは
レセプター側:2種類 (4.95mm,8.95mm)
プラグ側(垂直):9種類(4.8mm,6.8mm,7.8mm,10.9mm,13mm,14.5mm,15.8mm,19.7mm)
プラグ側(水平):1種類(6.7mm)
スタック基板間高さ 6.25mm~24.7mm
スタック基板間高さ=レセプター高さ+プラグ高さ-3.5mm
・極数及び高さの組み合わせるとそのバリエーションは、
レセプター側:16種類 (極数8種類x高さ2種類)
プラグ側(垂直):64種類 (極数8種類x高さ8種類)
プラグ側(水平):8種類(極数8種類x高さ1種類)
・定格電圧:DC50V
・定格電流:0.5A/pin
・伝送速度:2.5Gbps
・使用温度範囲:-45℃~105℃
・自動車用電気コネクターシステムの性能仕様書であるUSCAR-2: T3/V2 に適合
・用途: 自動車、産業機器、データ通信など、幅広いエンドアプリケーションに優れた設計柔軟性を提供 します。
本製品の利点
今回リリースされたフローティングコネクターシリーズは、人気の0.8 mmフリーハイトコネクターで、±0.6 mmのフローティング範囲と堅牢でコスト効率の高い設計を実現しています。ブラインドメイトによる組立コストの削減が可能で、高振動アプリケーションにも適しています。製品ポートフォリオには、6.25 mmから24.7 mmまでの基板スタッキング高さと、30ピンから120ピンまでの様々なサイズが用意されています。幅広い製品ラインナップにより、自動車、産業機器、データ通信などのエンドアプリケーションにおいて、お客様に優れた設計柔軟性を提供します。本製品に御興味をお持ちになられたお客様にはサンプルの御提供も準備しておりますのでぜひ一度お問合せください。