【事例で学ぶ】モバイルロボットの性能を最大化するVicor ZVSレギュレータの「高電力密度・高効率」
ロボット開発の最前線で求められる「電力の壁」を打ち破るVicorの電源モジュール。本記事では、エレクトロニクス・コンサルタントのOLogic社が採用したVicor ZVS降圧/昇降圧レギュレータの技術的特長と、それがどのように軽量化・高効率・スケーラビリティを実現し、建設DXロボット「FieldPrinter」の高性能化に貢献したのかを詳しく解説します。
1. 次世代モバイルロボット開発を制限する「電力の壁」
世界を変えるようなモバイルロボットを開発するためには、電気、機械、ソフトウェアなど多岐にわたる専門知識が必要です。特に、バッテリーで長時間駆動し、高性能な処理を行うロボットにとって、電源システムは性能を決定づける要因となります。
1-1. 長時間駆動と軽量化の両立が最大の難関
モバイルロボットが市場で競争優位性を得るためには、長時間駆動と軽量化が不可欠です。しかし、この二つは技術的に相反する課題です。
- 長時間駆動の要求: 電源変換時に発生する電力損失を最小限に抑え、バッテリー電力を効率良く利用する必要があります。
1-2. ディスクリート部品では限界がある高密度な電力供給ネットワーク(PDN)
従来の電源設計では、多数のディスクリート部品で電力供給ネットワーク(PDN)を構成するため、回路設計が複雑化し、高密度な実装(高電力密度)の達成が困難でした。結果として、発熱問題や、設計・検証期間の長期化を招いていました。
2. OLogic社が選んだVicor ZVSレギュレータの技術的優位性
モバイルロボットの電源設計エキスパートであるOLogic社は、この「電力の壁」を乗り越えるため、Vicor社の電源モジュールを採用しました。その中核を担うのが、Vicor独自のスイッチング技術を搭載したZVSレギュレータです。
2-1. 97%超の驚異的な高効率を実現するZVS(ゼロ電圧スイッチング)技術
VicorのZVS降圧レギュレータモジュールは、モバイルロボットに必要な200W~300Wの電力帯で、ピーク効率97%**という極めて高い数値を実現しています。
この高効率の鍵は、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)という独自のスイッチング技術にあります。
- ZVS技術の原理: スイッチングトランジスタが、電流や電圧がゼロに近い状態でオン/オフを切り替えるため、従来のハードスイッチングで発生していたスイッチング損失が大幅に低減されます。
- メリット: 電力損失が減ることで、発熱が抑制され、冷却機構の簡素化(ファンレス化やヒートシンクの小型化)が可能になり、ロボットの軽量化と信頼性向上に大きく貢献します。
2-2. ロボットの小型化に貢献する超小型フォームファクタ
ZVS技術による高効率化に加え、Vicorモジュールはその高電力密度によって、ロボットのサイズと重量の課題を解決します。
これらの超小型フォームファクタは、限られたロボット内部のスペースを有効活用し、高密度な電力供給ネットワーク(PDN)を構築することを可能にします。
3. FieldPrinterが証明するVicorモジュールの実力
OLogic社は、VicorモジュールをベースとしたPDNを、Dusty Robotics社の建設DXロボット「FieldPrinter」の設計に採用しました。この事例は、技術的な優位性が具体的なビジネス成果に結びつくことを実証しています。
3-1. 建設現場の作業スピードが5倍、ミスゼロを達成
FieldPrinterは、従来の建設現場のレイアウト(墨出し)作業を自動化し、劇的な性能向上を実現しました。
- 作業スピード: 従来の手作業と比較して5倍の高速化。
- 精度: 人的エラーによるミスを排除し、ミスゼロでの正確なレイアウトを実現。
この高性能は、Vicorモジュールの高効率かつ安定した電力供給によって、ロボットのコアシステム(高性能な計算ユニットや駆動モーター)がその性能を最大限に引き出せた結果です。
3-2. 優れた放熱性による設計の簡素化と信頼性の向上
ZVS技術による低損失は、電源設計における熱問題の緩和に直結します。
- 熱設計の簡素化: 発熱量が少ないため、大規模なヒートシンクや強制空冷が不要になり、電源回路周辺の設計が簡素化され、部品点数も削減されます。
- 信頼性の向上: 部品の温度ストレスが軽減されることで、電源システムの長寿命化と過酷な建設現場での信頼性が向上しました。