商品基礎情報
宇宙・防衛分野のデバイス設計
いま、産業で伸びている分野の一つに航空宇宙・防衛分野があります。このため、この分野の製品を設計しようと考えておられる方も多いのではないでしょうか?ただ、いざ設計しようと思ったときに知らないと 困る規格にVPXという規格があります。これは、高速シリアルスイッチファブリックをサポートした次世代の堅牢な組込みバス規格です。1990年代から長く使われてきた「VMEbus」という規格の後継として誕生しました。過酷な環境(振動、衝撃、極端な温度変化)でも壊れず、かつ現代の膨大なデータを処理できるパワーを持っています。また、最近では、VPXをベースにさらに相互運用性を高めたSOSA(Sensor Open Systems Architecture)という技術仕様も、防衛分野を中心に非常に重要視されています。
VPXの主な特徴
VPX規格には以下のような特徴があります。
1. 圧倒的なデータ転送速度
従来のVMEbusが「並列バス」という古い通信方式だったのに対し、VPXは「高速シリアル・ドットツードット接続」を採用しています。
- PCI Express (Gen3/Gen4)
- 10/40/100 Gigabit Ethernet といった最新の高速プロトコルをサポートしており、レーダー信号処理や高精細ビデオ伝送などに最適です。
2. 過酷な環境に耐える設計(高信頼性)
製品を使用する環境が、一般的な環境とは大幅に異なるので、非常に高い信頼性が求められます。
- 耐振動・耐衝撃: ロケットやミサイルや戦闘機、装甲車への搭載を想定
- 冷却性能: 空冷だけでなく、ファンが使えない環境を想定して「伝導冷却(コンダクションクール)」が標準化されています。
- コネクタ: 高速信号を通しつつ、物理的な衝撃にも強い特殊なコネクタを使用します。
3. モジュール性とオープン規格
「OpenVPX」という共通の枠組み(VITA規格)で管理されているため、異なるメーカーのボード(CPU、GPU、ストレージなど)を組み合わせてシステムを構築できます。これにより、特定のメーカーに縛られることなく、最新技術へのアップデートが容易になります。
VPX(VITA)に対応した製品の紹介
MALTIGIG シリーズ
VITA 46シリーズに対応した、VPXアーキテクチャのパイオニア的な存在です。RT2,RT2-R,RT2-S,RT3のシリーズがあります。
- RT2:VITA 46のベース製品。ピンレス設計(基板側にウェハー状の接触部を持つ)により、従来のピン・ソケット型よりもピン折れのリスクが低く、信頼性が高いのが特徴です。
- 最大データ転送速度は10 Gbps
- 該当製品:1410326-3,1410140-1, 1410187-3, 1410142-1
- RT2-R:RT2の高振動環境向けに開発された製品。RT2とフットプリント互換で、接触点を増やすことで、激しい振動や衝撃(MIL規格相当)下でも信号が途切れないよう設計されています。
- 最大データ転送速度は10 Gbps
- 該当製品:2286250-1,2102736-1, 2102771-1, 2102737-1
- RT2-S:RT2-Rをベースに、宇宙空間という特殊環境に対応させたモデルです。アウトガス抑制や耐放射線性を考慮した設計がされています。現状、TEでは、RT2-Sよりも高位互換品のRT3製品を推奨しております。
- 最大データ転送速度は16 Gbps
- 該当製品:2345723-1, 2302317-1,
- RT3:RT2シリーズの次世代向けとして開発された製品です。内部の信号経路を最適化し、高速なデータ転送を可能にしました。
- 最大データ転送速度は32 Gbps
- 該当製品:2313237-1, 2313238-1, 2302785-1, 2302790-1,2352032-1 , 2302789-1(SOSAにも対応)
VITA 66 (Optical) Connector Modules
VITA 66 光コネクタモジュールは、OpenVPXアーキテクチャにおいて、バックプレーンを介した高速・大容量の光通信を実現するための規格準拠製品です。電気信号(銅線)では限界がある超高速データ転送や、電磁ノイズ(EMI)が極めて激しい環境での通信を可能にします。その特長は以下の通りです。
- 業界標準のMTフェルールを採用
- 光通信のデファクトスタンダードであるMTフェルール(Mechanically Transferable)技術をベースにしています。
- 高密度接続: 1つのモジュールで最大12心、あるいは24心の光ファイバーを一度に接続可能です。
- マルチモード/シングルモード対応: 用途に応じて、短距離用のマルチモード(OM3/OM4等)や長距離・高帯域用のシングルモードファイバーを選択できます。
- 堅牢なブラインドメイト(手探り挿抜)構造
VPXシャーシの背面に基板を差し込むだけで、精密な光軸合わせが自動で行われる設計です。
- フローティング機構: ハウジング内でフェルールがわずかに動く(フロートする)ことで、挿抜時のわずかなズレを吸収し、光の伝送損失を最小限に抑えます。
- 優れたリピータビリティ: 500回以上の抜き差しを行っても、安定した光学性能(低インサーションロス)を維持できるよう設計されています。
- 過酷な環境(Rugged)への耐性
防衛・航空宇宙分野での使用を前提とした、MIL規格準拠の信頼性を備えています。
- 耐振動・耐衝撃: 激しい振動下でも光軸がずれないよう、精密なガイドピンとスプリング機構を搭載しています。
- 広い動作温度: -40°Cから+85°C(またはそれ以上)の過酷な温度変化に対応します。
- VITA 66 規格のバリエーション
- 設置スペースや用途に合わせて複数のサブ規格に対応したモジュールを提供しています
VITA 67 (RF) Connector Modules
OpenVPXアーキテクチャにおいて、バックプレーンを介した高密度な高周波(RF)信号伝送を可能にする同軸コネクタシステムで、従来の同軸ケーブルによる配線を不要にし、基板の差し込み(ブラインドメイト)だけでRF接続を完結させるための重要なコンポーネントです。その特長は以下の通りです。
- 高密度・省スペースな同軸接続
- 非常に小型の同軸コンタクト(SMPMなど)を採用しています。
- マルチポジション: 4極、8極、さらに高密度な12極などの構成が可能です。
- 省スペース: 3Uや6UのVPXスロット内の限られたスペースに、複数のRFチャンネルを集約できます。
- 優れた高周波特性
- 防衛用レーダー、SIGINT(信号情報収集)、電子戦(EW)システムに求められる厳しい信号精度を維持します。
- 広帯域対応: 定格としてDCから最大40 GHzまでをサポートしており、ミリ波帯のアプリケーションにも対応可能です。
- 低損失・低クロストーク: 高密度ながら、隣接するピン間での干渉を最小限に抑える設計がなされています。
- 強固なメカニカル設計(ブラインドメイト)
- 「箱の中に基板をスライドさせて入れる」VPXの特性に合わせた構造になっています。
- フローティング機構: コンタクトがハウジング内でわずかに動く(フロートする)設計になっており、挿抜時の軸ズレを許容し、ピンの破損を防ぎます。
- 高い耐久性: 振動や衝撃が激しい航空機や車両での使用を想定し、MIL規格準拠の堅牢性を備えています。
- VITA 67.3 規格による柔軟性
- カスタマイズ性: 固定のピン配置だけでなく、用途に合わせてRFコンタクトの数や位置を自由に変更できるフレーム構造が採用されています。
- ハイブリッド構成: 同一モジュール内に、光ファイバー(VITA 66)とRFを混在させる構成もサポートしています。
Mezalok mezzanine connectors
Mezalokメザニンコネクタは、VITA 61規格に準拠した高信頼・高速通信用のメザニン(積み重ね)コネクタです。主に防衛、航空宇宙、ハイエンド演算などの過酷な環境で使用されるXMC(Express Mezzanine Card)モジュール向けに設計されています。先行規格であるVITA 42(XMC)の物理的互換性を保ちつつ、性能を大幅に引き上げた製品です。主な特長としては以下になります。
- 高速データ伝送
- 32 Gb/sの高速通信: PCIe Gen 4やGen 5といった超高速プロトコルに対応可能なパフォーマンスを備えています。
- 低レイテンシ: 高密度ながら信号整合性(SI)を維持し、ノイズを最小限に抑えます。
- 過酷な環境に耐える堅牢性(Ruggedness)
- Mini-Boxコンタクト: 独自の4点接触(Four points of contact)構造を採用。激しい振動(Vibration)や衝撃(Shock)下でも瞬断を防ぎ、安定した接続を維持します。
- 熱サイクル耐性: -55°Cから+125°Cまでの広範囲な動作温度に対応し、極端な温度変化によるはんだ亀裂を防ぐ「はんだボール」接合方式を採用しています。
- VITA 42 (XMC) との物理的互換性
- 既存の設計からのアップグレードが容易な設計になっています。
- フットプリント互換: VITA 42規格と同じ基板レイアウト(114極など)を使用できるため、PCBの設計変更を最小限に抑えつつ、通信速度の向上と信頼性の強化が図れます。
- スタック高さの柔軟性: 10mm、12mm、15mm、18mmなど、複数のスタック高さを選択可能です。
- 信頼性の高い実装プロセス
- BGA(ボールグリッドアレイ): 実装には信頼性の高いBGA方式を採用。鉛フリー(SnAgCu)および高信頼性鉛(SnPb)の両方のはんだボールオプションが用意されています。
- 該当製品:320極 Pin Connector 2102429-1, 2102429-4 ;Socket Connector 2355827-9, 2102430-1, 1-2102430-2
VITA 62 Power Supply Connectors
MULTI-BEAM XLE電源コネクタは、通常のXLEシリーズのメリット(高密度・高効率)を引き継ぎつつ、VPX VITA 62電源規格に準拠した堅牢な軍用・航空宇宙・ハイエンドコンピューティング用途に耐えうる仕様となっているのが大きな特徴です。主な特長は以下のとおりです。
- 標準化されたインターフェース
- VITA 62で定義されているピン配置、電圧、および信号の要件を完全に満たしています。
- 相互運用性: 異なるメーカーの電源モジュールとバックプレーン間での互換性が保証されています。
- 高出力・多機能ピン構成
- パワーコンタクトの強化: 1コンタクトあたり50Aおよび20Aに対応したパワーコンタクトを備えており、高電力が必要な次世代VPXシステムに対応します。
- 信号ピンの統合: 一般的な構成では「8つのパワーピン」と「32の信号ピン」を一つのモジュールに集約しており電源制御と電力供給を一括で行えます。
- 過酷な環境に耐える信頼性
防衛・航空分野での使用を想定し、通常の民生用よりも高い信頼性が確保されています。
該当製品:
21極:2332793-1, 2332795-1
40極:2313442-1, 2313441-1
53極:2314578-1, 2309390-2
なお、弊社取り扱いの電源モジュールとして、VICOR社のVITA 62 準拠コンバータを取り扱っております。
この電源モジュールは
■高度な小型化
■特許取得済みの電源トポロジ
■革新的なモジュラーパッケージ
を特長としております。詳しくは、以下の記事にアクセスください。
VPX規格について
VPX規格は、VITA(VMEbus International Trade Association)によって定められた複数の規格があります。この規格は、非常に多岐にわたりまあすが、バラバラに存在しているのではなく、「物理サイズ」「電気信号」「冷却方式」「子基板(メザニン)」といった要素ごとに、パズルのピースのように組み合わされる構造になっています。主な規格には以下のようなものがあります。
1. ベースとなるコンピュータ規格(アーキテクチャ)
システムの「背骨」となる規格です。
VITA 1 (VMEbus): 1981年に誕生した伝説的な並列バス規格。今も旧型の防衛システムで稼働中
VITA 46 (VPX): VMEの後継。次世代の高速シリアルファブリック(PCI Express, Ethernet, Serial RapidIOなど)を採用した、高性能・高信頼性バックプレーン規格
VITA 65 (OpenVPX): VITA 46をベースに、ボード間の相互運用性を高めるための「プロファイル(設計図の組み合わせ)」を定義したもの
VITA 74 (VNX): VPXをさらに小型化した規格。ドローンや小型衛星などの超省スペース用途向け
2. 子基板(メザニンカード)規格
ベースボードの上に機能を「追加」するためのカード規格です。
VITA 42 (XMC): PCIメザニンカード(PMC)に高速シリアルファブリックを統合したメザニンカード規格。
VITA 61 (XMC 2.0): VITA 42のコネクタを強化し、Switched Mezzanine Card規格に基づく、特に過酷な環境(ラギッド)での高速データ転送を実現するためのメザニンコネクタ標準。
VITA 57 (FMC / FMC+): FPGAに直結するための規格。高速なADコンバータやDAコンバータを接続するのに多用されます。
3. 冷却・物理構造規格(メカニカル)
宇宙や戦闘機など、過酷な環境で「壊れない」ためのパッケージング規格です。
VITA 47: 振動、衝撃、温度範囲などの環境試験基準を定義
VITA 48 (REDI): 冷却方式の進化版
VITA 48.2: 伝導冷却(コンダクションクール)。宇宙機で必須
VITA 48.4: 液体冷却。発熱の激しい最新GPUなどの冷却に使用
VITA 62: VPXシステム向けの電源モジュール規格。電圧、ピン配置、サイズを厳密に規定し、交換性を確保
4. 特殊な接続・光通信規格
電磁ノイズに強い通信や、特殊な信号のための規格です。
VITA 66: 光ファイバー接続用のコネクタ規格。
VITA 67(高周波RFコネクタ):高周波RF(無線周波数)およびマイクロ波信号をバックプレーン(基板間)で接続するための高密度同軸コネクタ規格。
VITA78 (SPACE VPX):宇宙環境向け電子システム(サテライトや宇宙探査機など)のために設計された、高信頼性・耐環境性を持つVITA規格のオープン標準仕様です。宇宙環境特有の故障耐性(フォールトトレラント)や高い冗長性要件を満たすために定義されました。
まとめ
航空宇宙・防衛産業の設計では、規格の遵守と適切な部品選定が成功の鍵となります 。TE社の広範なラインアップは、次世代のミッションクリティカルなシステム構築を強力にサポートします。
製品の詳細仕様や選定についてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。