コラボ企画 Active Clamp Flyback × カスタムトランス

今回は絶縁電源回路を設計する中で大きなハードルとなるトランスをスミダ電機株式会社(以下、スミダ電機(株)と表記)様のご協力のもと製作し、評価ボードに実装してその動きと評価を行いました。

はじめに

近年は大電力を要求する絶縁ACDC電源分野の最新トレンドとして、高効率を実現するため、複雑な
電源ICを使用した「電流共振型電源回路」への取り組みが進んでいます。
電源ICの進化により複雑な制御が可能になってきましたが、トランスは未だ変わらず設計ハードルが
高い部品とされています。この要因の1つとして、回路設計者(お客様)とトランス設計者における電源ICの
制御方法に関する理解の違いが挙げられます。

この問題を解決し、お客様に適切なトランスソリューションを提供するため、トランスを提供する
スミダ電機(株)と電源ICを提供する当社の2社で技術コラボレーションを進めています。
今回はその1つとして、Active Clamp Flyback(アクティブ クランプ フライバック)方式の評価ボードに、
カスタムトランスを搭載し、実機評価・波形の理論的妥当性検討の結果をご紹介します。

Active Clamp Flybackとは?

まずは今回の評価ボードのActive Clamp Flyback制御方式の動作を見てみましょう。

  • Active Clamp Flybackとは何か? 
    • 電流を共振させて動作させることによりゼロ電圧スイッチング(ZVS)を実現する絶縁電源方式です。
  • なぜ電流波形を共振させているのか? 
    • スイッチング電源はスイッチをON/OFFして動作します。このスイッチをON/OFFする時に電流と電圧が交差する期間が存在します。この交差する期間にスイッチング損失が生じてしまいます。このスイッチング損失を無くすために、電流を共振させる方法が考えられました。

  • 電流を共振するメリット
    • スイッチング損失を無くすことができ、高効率を実現できます。
    • スイッチング電圧波形に発生するリンギングを無くすことができ、EMIノイズを低減できます。
  • 電流を共振するデメリット
    • 電流を共振させるために、MOSFET、コンデンサ等の部品が増えます。

トランスメーカへの依頼

今回のカスタムトランスはスミダ電機(株)に評価ボードに載っているトランスとそのトランスの仕様書から作成いただきました。各種条件については評価ボードのユーザガイドを確認していただいています。

Active Clamp Flyback評価ボードの評価環境

今回評価する項目
① スイッチング電圧波形と1次側トランス電流波形
② 効率測定
③ 出力電圧レギュレーション

評価するActive Clamp Flyback評価ボードは以下の通りです。

評価ボードの仕様動作条件
●入力電圧範囲:90~264 [Vrms]
●出力設定電圧:19.9 [V]
●最大出力電流:2.25 [A]

左側が元の評価ボード、右側がスミダ電機(株)ご提供カスタムトランスに載せ替えた時の写真です。

以下の測定環境で評価します。

スイッチング電圧波形と1次側トランス電流波形

オシロスコープで波形を確認する前にFlybackとActive Clamp Flybackのスイッチング電圧波形と1次側トランス電流波形を確認しましょう。

Active Clamp Flybackの構成であっても、適切なトランスが選定されていない場合は、左図のようなFlybackに近い波形になり、スイッチング波形にリンギングが観測されます。このような状態では大きな効率改善は期待できません。適切なトランスが設定されている場合には、右図のような電流共振波形になりますので、リンギングの無い波形となりトランスの良し悪しが一目でわかります。

では実際に載せ替えを行ったカスタムトランスの波形を見てみましょう。

評価結果

① スイッチング電圧波形と1次側トランス電流波形

入力電圧を90Vac~264Vac、出力電流を2.25Aとした場合のスイッチング電圧波形と1次側トランス電流波形です。

② 効率

入力電圧を90Vac~264Vac、出力電流を0.2A~2.25A変えた時の効率です。

③ 出力電圧レギュレーション

入力電圧を90Vac~264Vac、出力電流を0.2A~2.25A変えた時の出力電圧レギュレーションです。

まとめ

測定波形よりスイッチング電圧波形にはリンギングが無く、1次側トランスの電流波形も共振していることが確認できました。これはActive Clamp Flybackの動作として適切です。
効率も最大出力電流の2.25Aで全入力電圧範囲90Vac~264Vacで91%以上を実現しています。もし不適切なトランスを選定した場合、効率が90%以上は実現できません。
全入力電圧範囲90Vac~264Vacで出力電流を0.2A~2.25Aで出力電圧のレギュレーションも一定に保たれていました。

スミダ電機(株) 様からの一言

今回このようなレポートでご紹介いただき丸文株式会社様には感謝いたします。
弊社の製品がお客様のご評価の一助になれば幸いです。

担当エンジニアからの一言

評価結果をもとにスミダ電機(株)と打ち合わせをすることで、巻き方・効率を上げるヒントをいただけるのでトランス選定の経験が少ない私でも適切なトランスの選択を行うことができました。
今回ご紹介した評価結果以外にも、スミダ電機(株)のカスタムトランスは軽負荷時による音鳴りが全く無く、他社のトランスと比較しても格別に優れていることがわかりました。

当社は保有する技術経験を活用し、セットメーカ・仕入先メーカとの技術コラボレーションによるビジネス創出に取り組んでいますので、お困りのことがありましたら、ぜひご依頼ください。

今回、絶縁電源の回路設計でとても重要なトランスをご協力いただきましたスミダ電機株式会社様に感謝申し上げます。