はじめてのSiC
なぜSiCが求められているか?
単元素半導体と化合物半導体
シリコン半導体がシリコンというひとつの元素を材料にしているのに対し、複数の元素を材料にしている半導体のことを化合物半導体と言います。
化合物半導体はシリコンに比べて製造コストが高く、半導体の材料として使われるのは過去ほとんどがシリコンでした。
しかし化合物半導体は、飽和速度が高い(GaNの高周波デバイス) や発光する(GaAsのLED)などの特長があり半導体材料として実用化が進んでいます。
そのなかでもSiCは高耐圧で高速スイッチングを実現するパワー半導体として期待されています。
SiC とは
SiC(シリコンカーバイト)は、シリコン(Si)と炭素(C)との化合物半導体です。
SiCはシリコンと比べて下記のような特長があります。
- バンドギャップが大きい:高温で安定
- 絶縁破壊電界が高い:高耐圧にしやすい(同じ耐圧なら薄くでき、低オン抵抗)
- 熱伝導率が高い:放熱特性が良い
- 飽和速度が高い:高速スイッチング動作可能
これらの特長によりSiCは新しいパワー半導体として開発が進み実用化されています。
パワー半導体の用途でのSiC位置づけ
下図は主なパワー半導体の適用領域を示したものです。
高耐圧で低オン抵抗であり大容量に向くIGBTと、高速スイッチングというMOSFETそれぞれの特長を併せ持つのがSiCです。高速スイッチングで周辺部品が小さくなり小型・軽量、高効率が期待できるので電気自動車等でのSiCの応用が使用されています。
パワー半導体の特長
SiCをみる上で、パワー半導体の特長をみていきましょう。
サイリスタ
ゲートに電流を流し一旦ターンオンするとゲート電流を取り除いても非常に低い電圧でオンし続けます。順電流が0になるかA-K間が逆にならないとオフできないため主に交流、大容量の用途で使われます。
ゲートに正の電流を流すとオン、負の電流を流すとオフできるサイリスタです。送変電や電車なで活躍しています。
トライアック
サイリスタを逆並列にしたもので双方向に電流を流せます。一旦オンしたら極性が逆になるまでオフしないのはサイリスタと同じです。コーヒーメーカ、温調便座など家電のヒータ制御や照明の調光などの位相制御に使われています。
BJT(バイポーラトランジスタ)
外部(ベース電流)からオンオフ可能でオン抵抗も低いですがパワー半導体としてはIGBTやMOSFETに置き換わっています。
GaN(窒化ガリウム)
SiCと同じく化合物半導体でありSiCよりも高速スイッチングの次世代パワー半導体としRFパワーアンプ等に期待されています。
SiC ショットキーダイオード
SiCを使用した半導体製品はMOSFET以外にもショットキーダイオードがあります。SiCの絶縁破壊電界の特長をいかして、耐圧を高くすることができます。
ダイオードは順方向から逆方向に切り替えて動作しますが、シリコンでは逆方向時間が長く損失が大きくなりますが、SiCでは逆方向時間が短くなるので、損失は小さくすることができます。