スイッチング電源の問題について [リンギング対策 レイアウト編2]


はじめに
スイッチング電源の問題について [リンギング対策 レイアウト編]で基板作成の結果から、2層基板と4層基板でリンギングノイズの大きさに違いがあることが分かりました。
今回は2層基板と4層基板の違いに着目しながら、リンギングノイズが減少した理由について考察していきます。
2層基板と4層基板の違いについて
2層基板と4層基板にはどのような違いがあるのでしょうか。
既知の通り、2層基板と4層基板では層構成が異なります。
今回は作成した基板では4層基板の3層目を信号ラインとして使用していますので、ベタGNDは2層に追加しています。
2層基板と4層基板では基板の層構成の違いにより、電流の経路が異なります。
下図はGNDを流れる電流経路のイメージになります。
GNDに流れる電流経路について等価回路図で考えてみます。
2層基板と4層基板で電流経路を比較すると、4層基板にはベタGNDを追加しているため、4層基板のほうが電流経路が増えます。
そのため、4層基板ではGND側パターンに2層基板の寄生インダクタンスと並列に寄生インダクタンスが生じます。
インダクタを並列に接続した際の合成インダクタンスは下記式で求めることができます。
仮に10nHのインダクタを並列に接続すると、合成インダクタンスは半分の5nHになります。
このことから2層基板に対してGND層を追加すると、寄生インダクタンスが減ることがわかります。
リンギングは寄生インダクタンスと寄生容量によって引き起こされるので、2層基板に対して4層基板のほうがリンギングノイズにおいて良好な結果が生じたものと推測されます。
ベタGNDの効果を確かめるために2層基板を銅箔を追加し測定してみました。
測定基板について
2層と4層基板の違いを検証するために、2層基板に対して1層目のGND層と平行になるように銅箔でバイパスいたしました。
こうすることで、寄生インダクタンスを並列に追加しました。
下記写真のように銅箔を追加いたしました。
今回は6mm四方の正方形を使用しました。
測定結果
実際に測定した結果になります。
2層基板
改造基板
4層基板
結果の比較
結果について
2層基板に銅箔を追加することで、リンギングノイズのピーク値が減少し4層基板に近づく結果となりました。
このことから、銅箔を追加することで寄生インダクタンスが減少し、リンギングのピーク電圧はリンギング周期と相関があることがわかりました。
エンジニアからの一言
基板の層数を追加することで、リンギングノイズに対して効果があることがわかりました。
レイアウトの設計上、入力コンデンサを端子に対して最短で配置することが難しい場合には4層のご検討をされてみてはいかがでしょうか。