静電容量方式で小型近接センサを実現 [作成編]


静電容量方式の近接センサではセンサ信号のパターン生成が必要です。CAPSENSE™による近接センサのパターン設計では、大きいループ構造を持つことがセオリーとなりますが、製品の大きさや形状によってはサイズの制約を受けることがあります。今回、PSoC™ 4100S Maxの評価キットに接続可能な小型の近接センサを作成しました。ここでは作成したセンサのデザインについてご紹介します。あくまで評価を目的として作成したものであり、動作を保証するものではないこと、ご注意ください。
PSoC™ 4100S Max
インフィニオン テクノロジーズのPSoC™ 4100S Maxは、SNRがより向上した第5世代CAPSENSE™の静電容量センシングをサポートします。本デバイスには高感度のマルチセンスコンバータ (MSC) が搭載されており、本機能を静電容量センシングに使用することで、
- センサの小型化
- 近接検出範囲の拡大
- 厚いオーバーレイに対応
- オーバーレイ材質の選択肢の拡大
等の利点があります。
評価キット
PSoC™ 4100S Max評価キット (CY8CKIT-041S-MAX) は2つの基板で構成され、付属の40-pinのFFCケーブルを接続することで、「ボタン」、「スライダー」、「タッチパッド」、および「近接」の静電容量センサの評価を行うことが可能です。
- 基板① PSoC™ 4100S Max pioneer board: PSoC™ 4100S MaxのICが実装されたパイオニアボード
- 基板② Capacitive sensing expansion board: 静電容量センシングの拡張センサボード
小型近接センサの作成/評価環境
今回、パイオニアボードのコネクタに接続可能な小型FPCを作成しました。小型近接センサの作成と評価環境は以下の通りです。
- CY8CKIT-041S-MAX : パイオニアボード+拡張センサボード
- ModusToolbox™ v3.0 : PSoC™ IDE / Flashライタ
- ModusToolbox™ code example : cce-mtb-psoc4-msc-capsense-proximity-topic-ncbs-v1.0.0 (外部リンク)
- EAGLE v9.6.2 : CADツール (無償版の範囲で使用)
- P板.com : 基板製造
小型近接センサのデザイン
基本的には以下のCAPSENSE™のApplication Noteに沿ってデザインしていますが、FPCのサイズやCADツールの制約を受けている個所があります。
- AN64846 : Getting started with CAPSENSE™
- AN85951 : PSoC™ 4 and PSoC™ 6 MCU CAPSENSE™ design guide
- AN92239 : Proximity Sensing with CAPSENSE™
FPCの構成と接続
FPCは2層基板で全長は約93mm x 21mm、そのうちセンサ部のサイズは60mm x 11mmです。信号線はコネクタ接点がある裏面から出して、ビアを通してセンサ面に引いています。
J9コネクタの1〜3番ピンの信号線と接続して使います。
- J9.1 : CS_SHIELD0 … シールド信号
- J9.2 : CS_PROX … センサ信号
- J9.3 : CS_SHIELD0 … シールド信号
センサ信号
センサ信号の配線幅は1.5mm、形状は横長の小さなループです。大きなループが理想ですが、FPCのサイズ制約を受けた形状となります。また、一般的に近接センサのパターンは、ボタンやスライダーと比べてセンサ領域が大きく感度が高くなりますが、ノイズの影響を受けやすくなります。
シールド信号
ノイズ耐性を得るためにセンサ信号の周囲をベタグランドで囲むと、センサの寄生容量Cpが増加します。寄生容量Cpが高いと指容量Cfとの比率 (Cf/Cp) が小さくなり、感度が下がって検出距離が短くなります。ノイズ耐性向上とセンサの低い寄生容量Cpを両立させるために、センサ信号の周囲と裏面にハッチパターン(メッシュ構造)のシールド信号を配置しています。配線幅7mil (0.178mm)のシールド信号はセンサ信号のレプリカです。センサ信号とシールド信号間は1mmの幅を持たせました。
ハッチパターン
ハッチパターンのシールド信号には、EAGLEで生成した個所と手書きした個所があります。ハッチパターンの配線間隔はセンサ面は45milグリッド、裏面は70mil (1.778mm)グリッドが理想であるのに対して、サイズや手書きの制約を受けてこれらになるべく近づけるようにしています。
EAGLEのボード図
- 黄線:FPC外形
- 赤線:Topレイヤ、裏面、斜線…シールド信号
- 青線:Bottomレイヤ、センサ面、太線…センサ信号、斜線/縦横線…シールド信号
拡張センサボードとの比較
拡張センサボードの近接センサが11cmの対角線に対して、小型近接センサはかなり小さいサイズとなります。センサ信号の幅はどちらも1.5mmです。
まとめ
今回は小型近接センサのデザインをご紹介しました。ハッチパターンを手書きするのに苦労しましたが、このパターン生成に対応したCADツールをお使いであれば、簡単にセンサのデザインができると思います。次の 静電容量方式で小型近接センサを実現 [評価編] では、今回作成した近接センサを実際に評価していきます。