はじめてのLTEモジュール


イントロダクション
近年、5Gが注目を集めていますが、IoT分野ではLTEが依然として重要な役割を担っています。3Gのサービス終了が迫るなか、LTEモジュールをはじめて導入される方も多いのではないでしょうか。
本記事では、IoTに最適なLTEモジュールを選ぶ際のポイントとメリットについて説明します。
LTEとは?
3GPPの役割
3GPPとは、3rd Generation Partnership Projectの略です。世界中の通信事業者や機器メーカーが共通の技術規格に基づいて製品やサービスを開発できるようにその基盤となる技術仕様を策定しています。これにより、異なる国の携帯電話同士でも互いに通信できるようになり、グローバルなモバイル通信サービスの展開が可能になりました。
各世代の主な特徴
- 1G/2G : 音声通話に特化し各国独自の規格が多かったためローミングが難しかったです。
- 3G : データ通信が可能になり、国際的な標準化が進みました。
- 4G (LTE) : 高速なデータ通信を実現し、スマートフォンの普及を加速させました。
- 5G : 超高速・大容量・低遅延の通信が可能になり、IoTや自動運転などの新たなサービスを支えています。
- 6G : さらに高速な通信速度や、新たなアプリケーションに対応するための研究開発が進められています。
LTEの位置づけ
LTEとは、Long Term Evolutionの略です。3Gと4Gの間に位置する規格として3Gの技術を進化させつつ4Gの性能の一部を先取りし、特に高速なデータ通信を可能にすることでスマートフォンやタブレット端末の普及に大きく貢献しました。
後に2010年に国際電気通信連合(ITU)がLTEの後継規格であるLTE-Advancedを4Gとして認めたため、現在はLTEを4Gとも呼んでいます。
リリースとカテゴリ
3GPPはLTEの規格を複数のリリースに分けて策定し、各リリースでは新しい機能や性能が追加され通信システムの性能が向上しています。
また、LTEのカテゴリは通信速度や周波数帯域などの性能を表す指標です。カテゴリが上がるほど通信速度が高速になり、より多くのデータを短時間で転送できるようになります。
2025年2月の時点では、Release21で6Gについて検討されています。
LTEはどんなところで使用しているの?
LTEは私たちの生活を大きく変えた通信技術です。スマートフォンはもちろん、GPSトラッカーやIoT機器など、さまざまな場面で利用されています。
- スマートフォン : 高速なインターネット接続で、動画視聴やアプリの利用を楽しむことができます。
- GPSトラッカー : 車両や荷物などの位置情報をリアルタイムで追跡することができます。
- IoT機器デバイス : スマート家電やセンサーなど、さまざまな機器をインターネットに接続し、遠隔操作やデータ収集を行うことができます。
また、LTEの利用シーンの広がりとともにランニングコストや利用するアプリケーションに合わせて、最適なLTEのカテゴリを選ぶことができます。
LTEモジュールとは
スマートフォンやタブレットなどに使われているLTE通信に対応した小型のモジュールです。このモジュールを製品に組み込むことで、手軽にインターネットなどの通信機能を持たせることができます。
LTEモジュールの活用例
LTEモジュールは、さまざまな分野で活用されています。
- IoTデバイス : スマートメーター、スマート農業、河川監視などさまざまなIoTデバイスに組み込まれています。
- ウェアラブルデバイス : スマートウォッチやフィットネストラッカーなど、身につけられるデバイスに組み込まれています。
- 車載機器 : カーナビゲーションシステムやドライブレコーダーなど、車載機器に組み込まれています。
- 産業機器 : 工場自動化システムや遠隔監視システムなど、産業機器に組み込まれています。
LTEで通信(インターフェイス)を実現するためには通信デバイスメーカーからチップセットを購入し設計・評価する方法がありますが、ユーザーがこの設計・評価を行うことなく素早くLTEを導入する方法としてLTEモジュールが用意されています。
LTEモジュールのメリット
- 完成されたハードウエア : 通信部の開発期間の短縮とコスト削減が期待できます。
- 各種認証への対応 : 利用する機器をLTE対応にすることができます。
- 標準インターフェイスへの対応 : 容易に組み込めます。
- コマンドによる制御:容易に制御できます。
完成されたハードウェア
LTE通信用のチップセットは、通信デバイスメーカーから提供されていますが、一般ユーザーが直接購入するのは困難です。そこで、LTEモジュールメーカーが、このチップセットに電源回路やRF回路などを組み合わせてモジュール製品として提供しております。これにより、一般ユーザーでも手軽にLTEを利用できるようになります。
モジュールを使うことで、通信機能をゼロから開発する工数が不要となり、製品開発期間の大幅な短縮ができます。また、通信機能専用のハードウェアやソフトウェアの開発コストも最小限に抑えられます。LTEモジュールには、オプションでGPS機能が搭載されているものがあり、位置検知や追跡アプリケーションに利用できます。
各種認証への対応
出典 :総務省ホームページ
LTEモジュールを日本国内で無線通信機器として使用するためには、技術基準適合証明(技適)の取得が必要になります。技適取得機器には技適マークと技適番号が付与されます。
技適取得モジュールはユーザーの製品に組み込んで使用することができます。
技適とは別に各キャリアではネットワークとの相互接続性を確認する試験( IOT:Inter-Operability Testing )を設けています。
標準インターフェイスへの対応
ホスト(MCU、CPU、FPGAなど)とは標準インターフェイスであるUSB、UARTなどで接続し通信に必要なアンテナ、SIMやシステムとして必要なセンサなどを組み合わせることで容易にシステムを構築できます。また、LTEモジュールは実装タイプのものとカードタイプがあり、容易に実装することができます。
- 実装タイプ : 通常のICと同じように基板上に実装するタイプです。
- カードタイプ : mPCIeやM.2などのインターフェイスのカードです。
コマンドによる制御
LTEモジュールの制御や通信にはATコマンドを用います。ホストとモジュールはシリアルポートを介してATコマンドを送ることができます。
このATコマンドを利用することで、通話管理、モジュールの情報、ネットワーク設定、SMSへの送受、データ通信などさまざまな操作や設定が容易にできます。
エンジニアから一言
LTEモジュールを導入することで、製品開発における通信機能の迅速な実装とコスト削減を実現できます。既存システムへの容易な統合により、LTE通信によるデータ収集や遠隔メンテナンスができます。IoTデバイスの開発においては、LTEモジュールが低遅延かつ高信頼性のデータ伝送を担い、AIによる高度なデータ解析基盤を支えます。みなさまもLTEモジュールをご利用してみてはいかがでしょうか?