はじめてのオーディオアンプ Part 1


オーディオとは、その音を録音、再生、加工、伝送する機器や技術のことです。オーディオデバイスには、アンプ、ADコンバータ、DAコンバータ、コーデック、DSPなどがあります。
このWeb記事では、はじめてオーディオデバイスを使われる方に、オーディオデバイスの基本であるオーディオアンプ製品を中心に、
1.オーディオアンプの基礎
2.オーディオアンプの種類
3.オーディオアンプの主要特性
について説明していきます。
Part1では「1.オーディオアンプの基礎」を説明します。
1.オーディオアンプの基礎
オーディオアンプとは?
オーディオアンプは基本的にオペアンプと同じです。
ただしオペアンプとの違いは
①出力先がスピーカーであること
②大振幅、大電流であること
です。
(一部ヘッドホンアンプのように小出力(mW)の場合はDrive能力の高いオペアンプもオーディオアンプとして使用されます)
オーディオアンプを設計する上で、まずオームの法則を再確認します。
オームの法則では、
抵抗が減る(or 電圧を上げる)と電流が増えます。このオームの法則より電力(P)を求めることができます。
特にオーディオアンプの場合は、スピーカーのインピーダンスが重要ですので電力計算をよく使用します。
dB(デシベル)とは?
オーディオアンプの選定、設計においてもう一つ重要な単位があります。それはdB(デシベル)です。
dB表示は様々な分野で使用されていますが、オーディオ分野では音の大きさ、強さを表す単位として使用されます。
私たちが日常的に耳にする音は、非常に小さな音から非常に大きな音まで、広い範囲にわたります。dBは対数を用いることで、このような広い範囲の音の大きさを扱いやすく表現することができます。
電力で表す場合は
電圧で表す場合は
で算出できます。
PーP値と実効値について
オーディオアンプの設計時、入出力は通常、正弦波(Sin波)を使用します。
その際、入出力波形をP-P(Peak to Peak)値と実効値(rms)で表します。
そこで下式の変換式を使用します。
P-P値はVm(0P)の2倍なので
になります。
スピーカーの電力について
オーディオ・パワー・アンプ設計の場合、スピーカーのインピーダンスは一般的に2Ω~32Ωの範囲内に収まります。(最近は1Ω台もありますが・・・)
出力電圧(Vo)は常にRMS値(実効値)で表されるため、出力電力(Po)、負荷インピーダンス(RL)とすると下式で算出できます。
この式のVrms(p-p)は
から
で算出できます。
また、THD+N=10%の出力電力 Poutは
で計算できます。
※ただし、この式の“1.25”の値は、基本的に測定データに基づいた値ですので計算された値でないとことにご注意頂き、
概算のみでの使用をお願いします。
オーディオアンプの出力について
オーディオアンプの出力はおよそ数10mW ~ 数100Wまであります。
先ほどの電力(Po)の式からわかる通り負荷インピーダンスで変わります。
これから説明します各オーディオアンプの出力方式でもそれぞれ適したものがあります。
下表は一例です。
この表でのポイントは5W ~ 30Wの範囲を境に出力の大きい条件にはClass-Dアンプの選択が多くなってきています。
理由としては、オーディオ回路のスペースが縮小されてきていることと、熱問題の解決が大きいと考えられます。
アンプ方式については一般的に使用されているClass-AB、Class-Dに特化した表にしています。
ポータブル機器に使用する場合は、1W以下の製品であっても効率を重視してClass-D方式を採用することが増えています。
シングルエンド(SE) オーディオ・パワー・アンプについて
シングルエンド オーディオ・パワー・アンプは最もシンプルな構成です。
入力抵抗RIと帰還抵抗RFとアンプのゲインは下記の関係式になります。
従って、例えば電圧ゲインが10V/V(=20dB)の場合、RFの大きさはRIの10倍になります。
まとめ
次回Part2では、「2.オーディオアンプの種類」について、アンプ方式(Class-AB、Class-D)、入力方式(Analog、I2S)、出力方式(Single End、BTL)を説明します。