【実機検証】ありそうでなかったType-C 5G USBドングル をさわってみた
工場の AGV やエッジ AI カメラなど、産業用 IoTの 現場でニーズが高まる「ローカル 5G / 5G 通信」。しかし、「市販ルーターは大型で組み込めない」「M.2 モジュールは設計や排熱対策の手間がかかる」といった課題に悩むエンジニアも少なくありません。
そんな課題を解決する AMIT Wireless 社の 5G USB ドングル「CDG501-0GC01」をさわってみました。USB Type-C に挿すだけでドライバレス動作する手軽さや、産業用途での実用性について、分かりやすく説明します。
目次
1.手のひらサイズの5G端末。USB Type-C接続のメリットとは?
まずパッケージを開けて驚くのは、そのコンパクトさです。外形寸法は 95 mm x 41 mm x 22.5 mm、重量は約68gしかありません。筐体には折りたたみ式の内部アンテナが搭載されており、筐体内の限られたスペースでも展開してMIMOの通信品質を物理的に最適化できるよう工夫されています。
そして最大の特徴が「USB Type-C」インターフェースの採用です。5Gの高速通信(NSAモードで下り最大3.4Gbps)時には、モデムとRFモジュールが瞬間的に大きな電力を消費します。仕様上の消費電流は通信時150〜900mAとなっており、従来のUSB Type-Aでは電力不足に陥る可能性がありますが、Type-Cからの安定した給電により、高負荷時でもモデムが安定して動作します。 また、コンパクトでありながらも、動作温度範囲が-20℃~60℃と、比較的広範囲となっているため、産業用途としても活用できます。
手のひらサイズのCDG501-0GC01 付属するケーブルは両端がType-C
2.【実機検証】Windows PCに挿してみる
デジタルサイネージやKIOSK端末のコントローラ、あるいは現場のメンテナンス端末として多用されるWindows PC(Windows 11以降)で検証してみます。
使い方はシンプルです。PCのUSB Type-Cポートにドングルを挿入するだけで、Windows 10以降が標準で備えているRNDIS(Remote NDIS)ドライバが自動的に適用されます。専用の接続ユーティリティソフトやデバイスドライバをダウンロードしてインストールする手間は一切ありません。
数秒待つだけで、タスクバーのネットワークアイコンに新しい接続先(イーサネットアダプタ)として認識され、あっという間にインターネットや閉域網への通信が可能になりました。現場の作業員に複雑なネットワーク設定や初期化作業を強いることなく、まさに「挿すだけ」で大容量通信環境をアドオンできる手軽さは、ビジネス展開において大きな武器です。
非公式ですが、楽天モバイルのSimでも問題なく接続でき、通信はできております
都内某所でGoogle社のスピードテストを実施した結果(バラツキがありますので、ご参考まで)
参考値でしかありませんが、USB電力チェッカーなるもので測ると、640mA程で動作しているのが確認できました
3.【実機検証】Linux (Raspberry Pi5)に挿してみる
組み込みソフトウェアのエンジニアにとって一番気になるのが、「専用ドライバのビルドやATコマンドでの初期化が面倒なのでは?」という点でしょう。
製品仕様書には「Linux(5)、macOS(10.15.7)、Windows(10)以上でドライバ不要。プラグ&プレイ」と明記されています。それでは、小型SBC(シングルボードコンピュータ)として人気のあるRaspberry Pi5に接続してみましょう。
USB Type-Cポートに挿入し、コンソールから usb-devicesコマンドを実行してログを確認します。すると、rndis_hostと表示されており、Windowsと同様にRNDIS(Remote NDIS)として動作していることがわかりました。
面倒なカーネルの再構築や依存関係の解決は一切不要で、OSからは標準的な有線LANアダプタとして見え、DHCPプロセスですぐにIPアドレスが取得できます。もちろん、仮想シリアルポート経由でターミナルからCLIやATコマンド実行し、セルラーの信号品質やIMEI情報、使用周波数などを取得できます。
Raspberry Pi5と接続する際は、一方がType-AのUSBケーブルが必要です。
USB3.0以上が必要ですので、下記写真赤枠のコネクタ内側が青くなっていることをご確認ください。
Raspberry Pi5の画面です。usb-devicesコマンドでRNDISとして動作することを確認済み
Raspberry Pi Connect経由でスクショを取得。とても便利です
CDG501-0GC01は、SSH接続することで、CLIコマンドを実行することができます。
ローカルのHost側からSSHする場合は、下記の通り予めWEBUI上でLAN☑有効とし、保存します。
下記は、各種のステータスを取得している画面です。接続しているBANDや、RSSIなどを確認することができます。
こちらはATコマンドを実行した結果です。
モデムのIdentificationなどを取得してみました。
4.国内3大キャリア&ローカル5Gに1台で対応
手軽さだけでなく、中身のスペックも強力です。心臓部には、3GPP Release 16に準拠したQualcomm社の高性能モデム「Snapdragon X62(SDX62)」が搭載されています。
さらに実運用で最も重要なポイントが、日本国内のTELECおよびJATE認証を取得済みであり、1つのモデルでNTTドコモ、au、ソフトバンクの主要バンドに加え、ローカル5G(n77/n78/n79など)にも完全対応している点です。 これにより、「広大な工場内では超低遅延でセキュアな自営のローカル5G網でロボットを制御し、公道や敷地外に出たらキャリアのパブリック5G/LTE網へ切り替える」といったシームレスなモビリティを、このドングル1つで実現できます。
5.まとめ/エッジAIやロボティクスを加速させるキーデバイス
今回さわってみた「CDG501-0GC01」は、ドライバレスの圧倒的な手軽さと、厳しい環境に耐える産業グレードのスペックを見事に両立した、まさに「ありそうでなかった」デバイスです。
有線LANの敷設工事が難しい場所へのデジタルサイネージ設置、高解像度の録画データをクラウドにアップロードするカメラや、Wi-Fiのハンドオーバー切れに悩むAGVなど、幅広い産業現場のボトルネックを解消できるポテンシャルを持っています。さらに、プラグ&プレイですぐに通信できる手軽さを活かした「OT機器の一次的なメンテナンス回線」や、セキュアな「閉域網接続を活用した5Gベースのバックアップ回線」としての導入にも極めて有効です。
「自社の装置をサクッと5G化したい」とお考えのエンジニアの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
最後に、「ありそうでなかった」とタイトルに掲げましたが、実は以前、他にも5Gドングルを展開しているベンダー様がありました。しかし、いろいろと事情があったのか、現在は撤退を決められたようです。そのため、正しくは「今選ぶなら、間違いなくこれだね!と言える5G USBドングル」といったところでしょうか。