GMSL 製品よくあるご質問 -FAQ-
Analog Devices, Inc.(以下、アナログ・デバイセズ社) の GMSL 製品の基礎知識、制御信号、電源/ハードウェア、トラブルについて、よくあるご質問を記載しています。
基礎知識
Gigabit Multimedia Serial Linkの略です。
ディジタル映像信号と制御信号の伝送を1本のケーブルで行うことができる製品です。
広義では、ともにシリアル通信に用いられる技術で、同義的に扱われることがあります。狭義では、LVDSは差動信号の規格名称であり、GMSLは映像信号+制御信号の伝送を行う統合的な製品・機能名称となります。
シリアライザはパラレル信号をシリアル信号に、デシリアライザはシリアル信号をパラレル信号にします。つまり映像信号の送信側がシリアライザ、受信側がデシリアライザとなります。
MAX96705に代表されるカメラ用はビデオ信号のみを伝送します。
入力のビット幅はデータフォーマットとしてYUVやRAWを想定しているため14~16bitとなっています。
最大伝送レートは1.74Gbpsです。
対してMAX9275に代表されるディスプレイ用はビデオ信号のほかに音声信号も伝送することが可能です。
入力のデータ幅はデータフォーマットとしてRGB24bitまでを想定し、最大伝送レートは3.12Gbpsとなります。
その他細かい仕様の違いがございますので、データシートをご参照ください。
(参考:MAX9275データシート)
同一メーカの組み合わせが必須です。
なお、GMSL同士の場合でも異なる世代の製品の組み合わせ、カメラ用とディスプレイ用の組み合わせだと使用できる機能に制限が生じますので、詳細はデータシートをご参照ください。
製品に規定されているピクセルクロックと伝送レートによって制限を受けます。
例えば、RGB888で1920×720@60fpsでは3.12Gbpsとなり 現世代のGMSLにて対応します。
伝送ラインに使うケーブルの種類を選択するモードです。
STPモードは伝送ラインに差動信号で STP(シールドデッドツイストペア/Shielded Twisted Pair)ケーブルを使用します。
メリットはノイズに強いことです。
COAXモードはシングルエンド信号でCOAX(同軸)ケーブルを使用します。
ケーブルの価格やフレキシビリティにメリットがあります。
どちらを使用するかは端子設定で可能です。
一方のみしかサポートされていない製品がございますので、データシートをご参照ください。
可能です。
ただしHDCPが必要な場合はシリアライザ、デシリアライザ共にHDCP付の製品が必要です。
著作権保護が必要なコンテンツの伝送を行う場合に必要なコピープロテクションです。
GMSLではコピープロテクションのキーはIC内部に有しています。
なお、HDCP付製品を扱う場合、DCPのライセンスが必要となりますのでご注意ください。ライセンス有無は下記URLで確認可能です。 (http://digital-cp.com/licensee-list)
映像信号伝送とは逆の方向、つまりデシリアライザからシリアライザへの方向の制御信号を送るための論理チャネルのことです。
カメラアプリケーションの場合、映像データはYUV等データ幅が小さいケースが多いため、データの1サイクル目と2サイクル目を1つのシリアルデータフォーマットに格納することで、高いピクセルクロックへの対応を可能にするモードです。
車載用途のSTPあるいはCOAXケーブルで15mです。
ただしプリエンファシス、イコライジングの設定が必要です。
Power Over COAXの略で、COAXケーブルを使用する場合、電源をケーブル上に重畳させることです。
Serial Linkとは、ビデオ信号+制御信号が通信可能です。
Configration Linkは制御信号のみ通信可能で、ピクセルクロックが存在しない場合に、シリアライザ、デシリアライザ、およびペリフェラルをセットアップするために使用します。
制御信号
I2Cを使用する場合:
CPU が接続されている側が制御マスタとなります。
シリアライザとデシリアライザの両方にCPUを接続し、両サイドをマスタとして設定することは可能ですが、半二重通信となりますので、バス衝突が発生しないようにソフトウェアシーケンスを考慮する必要があります。
UARTの場合:
MS=”0″ の場合は、バイパスモードとなり、エンドトゥエンドの通信のみ可能です。
MS=”1″ の場合、シリアライザ製品はCDS=”L” 、デシリアライザ製品はCDS=”H” の時に接続されている CPU をマスタとして使用することができます。(CDSがないデバイスでは常に接続されている CPU をマスタとして使用することができますが、INTTYPE=00とした状態で使用しないでください。I2C機能とUART機能が衝突し、正常に動作いたしません。)シリアライザとデシリアライザの両方にCPUを接続し、両サイドをマスタとして設定することは可能ですが、半二重通信となりますので、バス衝突が発生しないようにソフトウェアシーケンスを考慮する必要があります。
設定例は、アナログ・デバイセズ社の下記アプリケーションノートをご参照ください。
USING GMSL SERDES DEVICES IN A DUAL AUTOMOTIVE ELECTRONIC CONTROL UNIT (ECU) APPLICATION
システムに依存します。
カメラアプリケーションの場合はデシリアライザ側。
ディスプレイアプリケーションの場合はシリアライザ側、もしくはシリアライザ側とデシリアライザ側両方が一般的です。
制御信号のマスタとなるCPUが接続されている方をローカルといいます。
リモートはCPUが接続されていない側、つまりGMSLの制御信号チャネルを介して通信される側となります。
あります。
リモート側との通信を行うためにはシリアライザとデシリアライザでBWS(Bus-Width Select)とDRS(Data-Rate Select)の設定が一致している必要があります。
1:2< bitrate< 2:1となります。
設定をする順番として、先にリモート側を設定します。その後、ローカル側を設定します。
I2CとUARTのいずれかを使用可能です。
一方のみしかサポートされていない製品がございますので、データシートをご参照ください。
通信開始時にSYNCパターン(0x79)を送信することで同期させています。
バイパスモードはシリアライザとデシリアライザの内部レジスタへはアクセスができず、それぞれに接続されているCPUやペリフェラル間の通信を行うだけのモードです。
ベースモードはシリアライザとデシリアライザの内部レジスタへのアクセスが可能ですので、ベースモードをご使用いただくのが一般的です。
なお、バイパスモードは全二重通信、ベースモードは半二重通信です。
可能です。
シリアライザのCLINKENレジスタ(0x04 D6)を1、SEREN(0x04 D7)を0に設定してください。
高速信号
デシリアライザ側のLOCK端子=HIGHでシリアルリンクが確立となります。
またレジスタ(LOCK)をreadすることでも確認可能です。
アイパターンの開口を見るのが一般的ですが、GMSLではデシリアライザにイコライジング機能を有しているため開口率=通信品質とはなりません。
このため、PRBSを使用し、シリアライザのプリエンファシスとデシリアライザのイコライジングの設定を振って、それぞれのBER(ビットエラーレート)をエラーカウンタ値から算出します。
その最適値でマージンがあるかどうかで検証します。
詳細は、アナログ・デバイセズ社の下記アプリケーションノートをご参照ください。
・マキシムのGMSLサーデスデバイスにおけるプリエンファシスとイコライゼーションの概要(日本語版)
・An Introduction to Preemphasis and Equalization in Maxim GMSL SerDes Devices(英語版)
目標とするBER(ビットエラーレート)よりPRBSテストの実施時間を設定してください。
なお、BER規定値はお客様の通信品質要求に依存します。
BERの試験時間は、CL (Confidence Level) と試験中に許容される発生エラー数に因って統計的に決定します。
詳細は、アナログ・デバイセズ社の下記アプリケーションノートをご参照ください。
・HFTA-010.0: 物理層の性能:ビットエラー率(BER)のテスト(日本語版)
・HFTA-010.0: Physical Layer Performance: Testing the Bit Error Ratio (BER)(英語版)
スペクトラム拡散設定時はシリアライザかデシリアライザのどちらか一方のみenableにしてください。
両方をenableにすると効果が相殺されます。なおシリアライザ側ではピクセルクロックに依存して設定できる拡散率に制限がありますのでご注意ください。
(参考:MAX9275のデータシート Table 8.)
MAX9275データシート
電源/ハードウェア
明確な規定はありませんが、電源電圧がターゲット電圧に達するまで、PWDN端子をLowにキープすることを推奨します。
各電源端子に1nFと0.1uF両方が必要となります。
また、バイパスコンデンサの配置は下記の点を守ってください。
①出来るだけICのピンの近くに配置してください。
②0.1uFより0.001uFをICの近くに配置します。
③AVDD → DVDD → IOVDDの優先順位で容量を配置して下さい。
内部でプルアップ/プルダウンされている端子でも、外部で最大30kΩにてプルアップ/プルダウンして下さい。また3レベル入力端子に関しては最大6kΩで処理して下さい。
起動後4msのロジック確定で不都合が生じる可能性がありますので、デシリアライザIC 1つごとにプルアップ抵抗を付けてください。
EVKITでの評価時は特に問題ありませんが、量産時はPSRRの悪化を招きますので必ずプルアップをしてください。
推奨いたしません。ご使用時は十分な検証の上、お客様の責任にてご判断ください。
0.22uFです。
ただしPOCを使用せず、High Immunity Mode(HIM)を設定し、帯域が1Gbps (24bitモードまたは、32bitモード使用時) 、あるいは2Gbps(27bit[HIBW]モード)の場合、HPFTUNE=”00″とし47nFをご使用いただけます。
300Ω以上になります。
トラブル
①シリアライザ側にピクセルクロックは入力されているか、ピクセルクロックの周波数は各モードのスペックを満たしているか、ご確認ください。
②次の設定がシリアライザとデシリアライザで一致しているか、ご確認ください。DRS, BWS (HIBW含む)
デシリアライザのGPI入力のトグルとI2Cのアクセスが同時に行われておりませんでしょうか?
デシリアライザのGPIからシリアライザのGPOへのデータ遷移と制御信号はどちらもリバースコントロールチャネルを使用しているためバス衝突を起こしている状態となります。
このため、GPIをトグルさせてから350us(GPOへデータが遷移する)は制御信号のアクセスは行わないでください。
なおMAX9670xシリーズではPacket-Based I2C機能を使うことでその対策が可能です。
例としてカメラアプリケーションでPOC使用時、イメージセンサは、通常データ送信時とブランキング時で負荷電流に大きな差異が生じます。その差異により発生した電源ノイズがリバースコントロールチャネルの周波数帯域とぶつかり、通信エラーが発生する可能性があります。
High Imminity Mode(HIM:高耐性モード)を使うことでこれを回避することが可能です。
oLDI出力のデシリアライザではデータ配列がVESAとoLDIの2種類があります。
カラーLUTのアドレスとデータはVESAの配列がベースになっておりますので、oLDI配列使用の場合アドレスとデータの並び替えが必要になります。
①CSI-2出力の DOUT0+/- からFS/FEの信号が出力され、 HSモードのロングパケット信号が確認できている場合:
レジスタ0x60にてCSI-2のデータフォーマットを設定しています。
また、レジスタ0x65にてCSI-2の使用するレーン数を設定しています。
この部分が使用内容と一致しているかご確認ください。
②CSI-2出力の DOUT0+/- からFS/FEの信号が出力されているが、HSモードのロングパケットへの遷移が確認できない場合:
VS信号の極性がデータシート30ページに記載のある通りとなっていますでしょうか。
③CSI-2出力の DOUT0+/- がLPモードから変移しない場合:
AUTOPPLレジスタ(0x09 D6)の設定をご確認ください。
MAX9288はデータシート48ページに記載されているとおり正常動作のためにピクセルカウントの設定が必要です。
本来0x61と0x62のレジスタにプログラムを行いますがAUTOPPLレジスタ(0x09 D6)を1にすることで(0x61と0x62をプログラムする代わりに)DE信号がHIGHの期間のピクセル値を自動的にカウントします。よって0x61と0x62をプログラムしていないということであれば、AUTOPPLレジスタ(0x09 D6)=1に設定してください。
なお、映像データ内にDE信号が無い場合、DEの代わりにHSでカウントを行いますのでDESEL(0x65 D6)=1に設定してください。
データシート51ページ以降に記載がある通り、使用のピクセルクロック&伝送レートとDRS, BWSならびに出力レーン数の整合性は取れておりますでしょうか?
SerializerのVSYNCの信号がMAX9288のDOUT19へ伝達されていないことが考えられます。モードの設定、ならびに、クロスバースイッチの設定をご確認ください。
④上記①~③が正しく設定されていても問題が改善されない場合、SOC側の設定を再度ご確認ください。