ゼロトラストにおけるエンドポイント監視の重要性と実践方法
ゼロトラストモデルでは、エンドポイント監視が非常に重要な役割を果たします。企業のネットワークセキュリティを強化するためには、各エンドポイントをリアルタイムで監視し、脅威を迅速に検出することが必要です。本記事では、エンドポイント監視の役割と、効果的な実践方法について詳しく解説し、ゼロトラスト環境でのセキュリティ強化の手法を紹介します。
ゼロトラストにおけるエンドポイント監視の必要性
ゼロトラストの基本原則とエンドポイントの関係
ゼロトラストは「何も信頼しない」という前提で構築されたセキュリティモデルです。従来のセキュリティ手法は、外部からの攻撃を防ぐための防御壁(ファイアウォール)や境界セキュリティが中心でしたが、内部への侵入が一度許可されると、それ以降の監視は緩やかになる傾向にありました。しかし、ゼロトラストは内部のユーザーやデバイスであっても、毎回のアクセスで認証・監視を行うことを基本としています。これにより、内部のエンドポイントから発生する脅威や不正アクセスも検出し、迅速な対応が可能となります。
例えば、従業員のパソコンがマルウェアに感染した場合、それが企業ネットワークに広がる前に検知し、対策を取ることができます。エンドポイント監視は、ゼロトラストの基本原則である「常に検証する」という考え方を具現化する重要な役割を担っています。
増加するサイバー攻撃とリモートワークの普及によるリスク
近年、サイバー攻撃は高度化し、リモートワークの普及に伴って企業のネットワークに接続するエンドポイントも多様化しています。社員が会社外から社内ネットワークにアクセスする際、その接続経路が攻撃の入り口となる可能性があります。自宅や公共のWi-Fiネットワークを通じたアクセスは、安全性が確保されていないことが多く、悪意ある第三者が容易にアクセスできる場合があります。
エンドポイント監視は、こうしたリモート環境からのアクセスもリアルタイムで監視し、必要に応じて制限やアラートを発することで、企業のネットワークを保護します。
エンドポイント監視の主な機能
リアルタイムでの異常検知と対応
エンドポイント監視は、企業ネットワーク内の全デバイスに対してリアルタイムで異常を検出し、迅速に対応します。異常な動作や未知の接続が検出されると、即座にアラートを発し、場合によっては自動でアクセスをブロックします。このリアルタイム監視は、迅速な対応を可能にし、企業のシステムに対する攻撃の被害を最小限に抑えます。
例として、通常の業務時間外にリモートからのログイン試行が多数検出された場合、監視システムはその異常を検知し、即座に管理者へ通知を行います。また、場合によっては自動的に該当するアカウントを一時的に凍結し、不正アクセスを防止します。
デバイスの識別と認証
ゼロトラスト環境では、ネットワークに接続する各デバイスの識別と認証が重要です。エンドポイント監視では、接続されたデバイスが適切に認証されているか、登録済みのデバイスかどうかをチェックし、安全性が確保された状態であるかを確認します。このプロセスにより、ネットワークに不正なデバイスが接続されるリスクを抑えることができます。
例えば、新しいデバイスが初めてネットワークに接続された場合、そのデバイスが管理者に承認されるまでは制限された権限でのみ利用可能にする、といった設定が考えられます。
行動分析と脅威の予測
エンドポイント監視には、AIや機械学習を活用した行動分析機能もあります。これにより、ユーザーの通常の行動パターンと比較して異常な行動が検出されると、潜在的な脅威として早期に予測し対応します。例えば、通常は国内からしかアクセスしないユーザーが突然国外からアクセスを試みた場合、異常と判断して警告を出すといったことが可能です。
行動分析により、過去のデータに基づいた脅威の予測も可能で、攻撃の兆候を早期に発見し、防御策を講じることができます。
ゼロトラスト環境でのエンドポイント監視の実装方法
エージェントベースの監視とそのメリット
エージェントベースの監視では、エンドポイントデバイスに小さなプログラム(エージェント)をインストールして、常に監視を行います。エージェントは、デバイスの稼働状態、アクセス履歴、ソフトウェアの状態などを監視し、問題が発生した場合は迅速に管理者に通知します。エージェントベースの監視の利点は、デバイス自体に関する詳細な情報が得られることと、リアルタイムでの制御が可能な点です。
SIEMツールとの連携によるデータ分析
SIEM(セキュリティ情報およびイベント管理)ツールと連携することで、エンドポイントから集められたデータを一元管理し、統合的に分析することができます。これにより、企業全体のネットワークで発生するすべてのイベントが可視化され、異常な動作や攻撃の兆候を一貫して確認できます。エンドポイントから得た情報が迅速にSIEMに統合され、即座に解析が行われるため、より迅速な対応が可能です。
マルチレイヤーでのアクセス制御
ゼロトラスト環境では、単一のセキュリティレイヤーに依存することなく、複数のレイヤーでアクセス制御を実施することが推奨されます。エンドポイント監視だけでなく、ファイアウォール、ID管理、ネットワークセグメンテーションなどを組み合わせ、各レイヤーが相互補完的に機能することで、より高いレベルのセキュリティを実現します。
エンドポイント監視を強化するためのベストプラクティス
継続的なアップデートとパッチ管理
エンドポイント監視を効果的に行うためには、デバイスやソフトウェアの継続的なアップデートが不可欠です。パッチ管理を通じて、既知の脆弱性を迅速に解消し、攻撃リスクを低減します。定期的なセキュリティパッチの適用により、新たに発見された脆弱性にも対応し、セキュリティの強化を図ります。
ポリシーに基づいたアクセス制御の設定
アクセス制御を実施する際には、組織のセキュリティポリシーに従い、権限を適切に設定することが重要です。業務に必要な最低限の権限のみを付与し、権限の濫用を防ぎます。これにより、内部からの脅威にも対応可能です。
従業員教育とセキュリティ意識の向上
従業員がセキュリティリスクを理解し、適切な行動を取れるようにするためには、継続的な教育が必要です。フィッシング対策のトレーニングや定期的なセキュリティ研修を実施することで、従業員のセキュリティ意識を向上させ、人的リスクを低減します。
会社名:丸文株式会社
部署名:アントレプレナ事業本部 イーリスカンパニー
執筆者名:村上 貴哉
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1999年入社。光伝送通信の部品販売業務を経て、2010年よりLTE/5Gモバイル通信、
データセンタや自動車のインフラ構築・運用に関連する商品のマーケティング・営業に携わる。
2022年より新設されたアントレプレナ事業本部にてサービス提供のビジネス創出も担当。