商品基礎情報
製品概要
Qsources社の Qsls 大型吊り下げ式加振器 (Suspended Large Shaker) は、従来の手法では困難が伴った大型構造物の動特性評価に、画期的なソリューションを提供します。鉱業機械、洋上プラットフォーム、橋梁、生産ラインといった巨大構造物に対し、最大1000Hzまでの広帯域かつ高精度な加振を実現。その背景には、独自の技術と設計思想があります。
本製品は、自己懸垂というユニークなコンセプトに基づき開発されました。これは、加振器自体が試験対象構造物に懸垂される形で取り付けられ、外部からの支持や複雑な位置合わせ作業を一切不要にするものです。特許取得済みの内部サスペンションシステムと組み合わせることで、設置時間の劇的な短縮と、従来アクセスできなかった箇所への加振を可能にします。
高精度な内蔵フォースセンサは、加振点での正確な力ベクトルを直接計測し、伝達関数測定やモード解析の精度を飛躍的に向上させます。コンパクトながら210N(サイン波20Hz時)という高い加振力を発生でき、質量50kgから最大40,000kgまでの幅広い試験対象に対応します。
革新的な技術:Qslsのコアテクノロジー
Qslsの優れた性能は、以下の独自の技術に基づいています。
特許取得の 自己支持・自己調心・分離構造 (Self-supporting, Self-aligning and Decoupled Structure)
- 自己支持: 加振器は試験対象物自身の表面に取り付けられ、外部からの支柱や固定具を必要としません。これにより、設置場所の制約が大幅に緩和されます。
- 自己調心: 内部の巧妙なサスペンション機構が、加振力の作用軸が常に試験体表面に対して垂直になるよう自動的に調整します。これにより、作業者による精密な軸合わせが不要となり、設置ミスによる測定誤差のリスクを低減します。
- 分離構造: 加振器本体の質量や慣性が、測定対象となる加振力(内蔵センサーで計測)に影響を与えるのを最小限に抑える設計です。これにより、特に高周波数域において、より純粋な加振力の測定と構造応答の評価が可能になります。
- 設置自由度: この構造により、垂直、水平、さらには傾斜した面にも、重力の影響を気にすることなく容易に取り付けられます。接着またはM8ネジ穴による取り付けが可能です。
高精度 内蔵IEPEフォースセンサー
- 加振力の伝達経路の最も末端、すなわち加振器と試験体のインターフェース直近にフォースセンサーを内蔵しています。これにより、スティンガー(加振ロッド)などを介した場合に生じうる力の減衰や位相遅れの影響を受けず、実際に構造物へ入力されている力を極めて正確に測定できます。
- IEPE (Integrated Electronics Piezo-Electric) タイプ: センサー内部にインピーダンス変換回路を持つため、ケーブル長による信号減衰やノイズの影響を受けにくく、多くの標準的な動的信号収録装置(FFTアナライザーなど)に直接接続できます。
- 優れた温度安定性: 10℃から60℃の広い温度範囲において、感度変化を0.5dB以内に抑制。現場環境の温度変化が大きい場合でも、安定した測定精度を維持します。
- フラットな周波数特性: コア周波数範囲(22-1000Hz)において、公称感度からの偏差が極めて小さい、フラットな周波数応答特性を持っています。(データシートの感度カーブ参照)これにより、広帯域の伝達関数測定において周波数による補正の必要性を最小限に抑えます。
高出力密度と広帯域加振能力
- コンパクト設計:全長175mm、直径70mm、重量わずか8kgという小型・軽量設計ながら、大きな加振力を実現。限られたスペースへのアクセスを可能にします。
- 加振力:
・サイン波 210 N (peak @ 20 Hz): 特定周波数での共振点の詳細な調査や、非線形挙動の評価に適しています。
・ランダム波 80 N RMS (ピンクノイズ, 22-1000 Hz): 広帯域にわたる構造全体の応答を効率的に捉える伝達関数測定やモード解析に最適です。
- 周波数範囲:
・コア範囲 (22-1000 Hz): 高精度な測定が保証される主要な動作範囲です。
・低周波拡張 (6 Hzまで): 主に1000kgを超える大型・重構造物に対して、より低い周波数からの加振が可能です。ただし、非常に軽量な構造物ではこの低域での精度が低下する場合があります。
- 最大ストローク (16 mm peak-to-peak):低周波数域で必要となる大きな変位を伴う加振試験(例:大型構造物の低次モード励起)に対応可能です。
- 低内部摩擦 (< 2 N): 内部の摺動抵抗や非線形性が極めて小さいため、微小な加振力レベルでの試験や、高いダイナミックレンジが要求される測定(例:微小な応答の検出、高精度な伝達関数測定)において、加振器自身の非線形性が測定結果に与える影響を最小限に抑えます。
アプリケーションと測定テクニックへの貢献
Qslsの技術的特徴は、様々な先進的測定テクニックにおいて大きな利点となります。
実験モード解析 (EMA)
- 高精度な内蔵フォースセンサーと広帯域加振能力により、正確な周波数応答関数 (FRF) の測定が可能。
- 設置自由度が高いため、構造上の最適な加振点(例:反共振点付近を避ける)を容易に選択可能。多点加振(MIMO)試験も効率的に実施できます。
伝達経路解析 (TPA)
- 実際の加振点における正確な入力力を把握できるため、構造内部や空気中を伝わる振動・騒音の寄与度を高精度に分離・評価できます。
- コンパクトさにより、エンジンルーム内など実稼働状態に近い環境での測定も可能です。
構造・音響振動伝達関数測定
- 分離構造と高精度センサーにより、加振器自身の動特性の影響を最小限に抑えた、純粋な構造や音響空間の伝達特性を得られます。
CAEモデル相関
- 高品質な実験データ(特にFRF)は、有限要素モデル (FEM) の精度検証やアップデート(モデルチューニング)に不可欠です。QSLSは信頼性の高い実験データを提供します。
その他
- 逆荷重同定、パワーインサーション法 (SEA)、実稼働波形再現など、要求される入力条件や測定精度に応じて、Qslsの特性が活かされます。
技術仕様
Qsls仕様
コア周波数範囲 |
22 ~ 1000 Hz |
低周波拡張 |
6 Hz まで |
結合質量 (推奨周波数範囲内) |
軸方向 115 g、半径方向 25 g |
加振力 ランダム (ピンクノイズ) |
80 N RMS |
加振力 サイン波 (20 Hz) |
210 N (片側ピーク) |
内部摩擦 / 非直線性 (最大) |
2 N |
最大ストローク (peak to peak) |
16 mm |
推奨環境温度範囲 |
10 ~ 45 ℃ |
全長 |
175 mm |
直径 |
70 mm |
重量 |
2800 g |
試験体への設置面積 (直径) |
40 ~ 80 mm |
内蔵フォースセンサー仕様
センサータイプ |
IEPE |
感度 |
3.5 mV/N |
感度安定性 (10~60℃) |
0.5 dB |
推奨アンプ仕様
最小連続出力 |
500 W (4 Ω負荷時) |
奨最小安定ピーク電圧 |
45 V (片側ピーク) |
最小加振器インピーダンス |
5 Ω |
※推奨アンプQam-sisを用意しています。
対象となる試験体
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推奨範囲 |
備考 |
試験体の最小重量 (目安) |
50 kg |
これより軽い場合は加振器の質量影響が大きくなる |
試験体の最大重量 (目安) |
40,000 kg |
加振能力と構造物の応答レベルによる |
試験体の最小減衰 (推奨) |
1 % |
減衰が低い場合は応答が大きくなりやすい |
まとめ:次世代の大型構造物加振スタンダード
Qsources Qsls 大型吊り下げ式加振器は、その革新的な自己支持・自己調心構造、高精度な内蔵センサー、そしてコンパクトながら強力な加振能力により、従来の大型構造物試験における多くの制約を打ち破ります。設置の迅速化、測定精度の向上、そしてアプローチできなかった領域へのアクセスを実現し、より信頼性の高い動特性評価を可能にします。幅広い産業分野における研究開発、品質管理、保守点検の効率化と高度化に貢献する、次世代の加振ソリューションです。