LEDデータシートの放射プロットとルクスの計算方法について解説
LEDのデータシートに、LEDの強度と角度特性の関係を示す放射プロットが掲載されているのをご覧になったことがあるかも知れません。放射プロットからどのようなことが読み取れるでしょうか?本記事では、光学ソフトウェアを使用して可視化をしたり、逆二乗則を組み合わせてルクスを計算する方法を説明しています。LEDの光がどのように広がるのかを視覚的に捉え、欲しい場所に最適な明るさを届けるための方法を、わかりやすく解説した記事を紹介いたします。
光学 - LED データシートの放射プロットは何を意味し、ルクスはどのように計算しますか?
放射プロットは、LEDの強度と角度特性の関係を示します。サプライヤーによって様々な表示形式が用いられています。これらのプロットの単位は通常、W/srまたはlm/sr(カンデラ)です。分析に最も有用な角度は、50%強度(FWHM)と10%強度の角度です。
多くの放射プロットは正規化されています。下の例のように1に正規化されているものもあれば、cd/klmに正規化されているものもあります。1に正規化することで、プロットから半値全幅(FWHM)角度と10%強度角度を直接読み取ることができます。cd/klmに正規化することは、異なるルーメン(光束)入力に対するピークカンデラ(光度)を計算するのに便利です。
図1.極座標配光図(放射プロット)の例
光学ソフトウェアを使用した可視化の例
まず、3種類の光源のビームパターンを、Luminus社の光学ソフトウェアで各光源を100ルーメンに設定して比較します。
- 点光源(電球に代表される光源)
- ランバート光源(LEDに代表される光源)
- 狭ビーム光源(集光光学系を組み合わせた光源に代表される光源)
そしていくつかの観察結果を示します。
ソフトウェアの制限により、プロットの凡例の一部が判読できない場合があります。ここでは、何が起こっているのかを説明します。より高解像度のグラフィックが必要な場合は、上記のお問合せはこちらのリンクからお問い合わせください。これら3種類の光源はすべて円対称です。ここでは考慮していませんが、光学系を用いて非対称のビームパターンを実現する光源は数多く存在します。
下の図2は、これらの光源のレンダリング例を示しています。
図2.3種類の光源のレンダリングの例
点光源は均一な角度分布を持ちます。強度はすべての角度方向で同じです。ランバート光源はコサイン分布を持ちます。これは、光の放射方向がランダムな面光源の典型的な例です。23度光源には、ビームパターンを変更する光学素子が備えられています。この光源は側面からの光もかなり多くなりますが、光の大部分は所望の23度ビームパターンを形成します。
図3は、放射パターンを定量化する3つの異なる形式を示しています。いずれも、強度の単位は立体角で割ったものです。このモデルでは光源の光出力に100ルーメンを使用しているため、これらのプロットは絶対カンデラ(ルーメン/ステラジアン)で表されています。放射測定単位を使用する場合、単位はワット/ステラジアンになります。
図2は、ビームパターンの3D表現を示しています。図3の最初の行では、別の3D表現形式であるラスター図を使用しています。光度(cd)は、両軸の回転角度に対してプロットされます。次の2行のプロットには、回転スライスにおける角度に対する光度(cd)が表示されます。これらは極座標図と直交座標図と呼ばれ、この例では90度離れた2つのスライスが表示されています。
ラスタープロットは、図4のような非対称ビームパターンの可視化に便利です。対称ビームの場合は、通常、極座標図と直交座標図が使用されます。50%および10%の強度に対応するビーム角度と、100ルーメンの入力を用いてモデルによって計算された最小、最大、および平均カンデラ値が以下の表1に示されています。
図3.ラスタープロット/極座標図/直交座標図
図4.非対称光源のラスタープロット
表1.50%/10%の強度に対応するビーム角度と、100ルーメン入力時の最小、最大、および平均カンデラ計算値
ここで、光学ソフトウェアの平面検出器を用いて、これら3つのケースにおけるビームパターン(単位:ルクス)を視覚化してみましょう。下の図5では、検出器間の距離はそれぞれ100、200、400mmで、正方形の各辺の長さは同じです。投影されたルクスパターンは、各距離で相似形となる円錐を明確に形成しています。
図5.光学ソフトウェアの平面検出器を用いたビームパターンの視角化
以下の表2は、このモデルセットの値を示しています。モデルの検出器サイズは光源からの距離に応じてスケーリングされるため、入射ルーメンは一定です。以下の表のルクス平均値と最小値は検出器のサイズに依存することに注意してください。実際の物体の分析では、これらは有用な指標です。この例では、投影されたビームの断面形状を最もよく示すようにスケーリングされた検出器を使用しました。
表2.図5のモデルセットの値
放射プロットからルクスを計算する(簡略化した概算値計算)
一部のLEDの照度(ルクス)は、カンデラ、ルクス、ステラジアンの定義と逆二乗則を組み合わせることで推定できます。この方法は、円対称で上端が丸みを帯びた広いビーム角度の場合に最適です。上端が平らなビームやコリメートビームのビームパターンには適していません。(※この方法は、簡略化のため「光が均一に分布すると仮定した平均値」としており、実際の照度分布とは異なることには注意が必要です)
計算例:
- 100ルーメンの光源
- 120° FWHM LED
- 距離 = 400 mm = 0.4 m
1.FWHM角度θを使用して光源の立体角を計算します。
Ω = 2*3.141*(1-cos(120/2)) = 3.141 ステラジアン。
2.定義を用いて光度(カンデラ)を計算します。1 cd = 1 lm/sr
光度(カンデラ) = 100 ルーメン / 3.141 ステラジアン = 31.8 lm/sr
カンデラは距離の関数ではないことに注意してください。
3.ステラジアンの定義を用いて、この値をルクスに変換します。
1メートルでは、1ステラジアンは(球面上で)1平方メートルの面積を持ちます。
したがって、1メートル では、カンデラ値はルクス値と数値的に等しく、1メートル ではルクス値は
31.8 lm/m²です。
400 mm (0.4 m) では、
照度(ルクス) = 31.8 * (12 / 0.42) = 198.9 ルクス
下の図6は、この手法による計算値の検証結果を示しています。赤い点は光学ソフトウェアの値、黒い破線は逆二乗計算値です。報告されている誤差は、本手法による計算値と光学ソフトウェアの結果の差(%)です。表の最大値(lx)は、本手法を用いて計算された値です。この手法は、ビーム角度が広い場合に最適であることがわかります。誤差項は光学ソフトウェアの設定に大きく依存するため、特に近接場においては、あくまで推定値として考えてください。
図6.本手法による計算値の検証結果(黒破線⇒本手法による計算値、赤点⇒光学ソフトウェアの値)
放射線プロットからビーム領域を計算する
例として、0.4メートルにおけるビーム領域を示します。放射パターンの極座標プロットと直交座標プロットを使用すれば、50%(FWHM)角度と10%角度を簡単に読み取ることができます。半角の正接を使用すれば、これらの強度レベルに対応する半径を簡単に計算できます。
下の図7は、ランバート光源(ビーム角FWHM 120°)の概略図です。10%角度は169°で、これはフィールド角と呼ばれます。これは、照明円が実質的に終了する角度です。ビームとフィールド光の間の環状部分は、漏れ光(spill)と呼ばれます。これらの値を用いて、1メートルの距離におけるフィールド径は20.8メートル、ビーム径は3.5メートルと計算できます。最大強度はビーム中心にあり、ビーム中心からの距離が増加するにつれて強度は減少します。この減少のプロファイルは上記の視覚化に示されており、極座標プロットの形状に似ています。実際の物体表面でより正確な計算が必要な場合は、光学ソフトウェアを使用する必要があります。
図7.ランバート光源(ビーム角FWHM 120°)の概略図
まとめ
LEDデータシートの放射プロットとルクスの計算方法とは?
LEDデータシートにおける放射プロットは、LEDの光度と角度特性を示すもので、単位にはW/srまたはlm/sr(カンデラ)が用いられます。プロットを読む際には、特に50%強度(FWHM)と10%強度の角度が重要となります。
LEDの照度(ルクス)を簡略的に推定する計算方法では、カンデラ、ルクス、ステラジアンの定義と逆二乗の法則が用いられます。この推定方法は、放射パターンが円対称で、ビーム角度が比較的広い場合に適しています。