Beyond 5G/6G時代の通信インフラ「NTN」とは?― 地上と宇宙をつなぎ、ビジネスの可能性を拓く非地上ネットワーク技術
近年、技術レポートなどで「NTN(Non-Terrestrial Network:非地上ネットワーク)」という言葉を目にする機会が増えています。これは、私たちの社会や産業のあり方を根底から変える可能性を秘めた、次世代の通信インフラ技術です。
NTNは、これまで通信が困難だった空、海、そして宇宙空間までをカバーし、まさに「いつでも、どこでもつながる」社会を実現します。
本ページでは、NTNの基礎知識から、なぜ今この技術が注目されているのか、そしてNTNネットワークの品質をいかに担保するかという課題と、それを解決するソリューションまでを解説します。
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なぜ今、NTNが重要なのか?
NTNが急速に注目を集めている背景には、宇宙利用の爆発的な拡大と、衛星通信が持つ固有の優位性があります。
(1) 急速に拡大する宇宙利用市場
世界の稼働衛星数は近年急増しており、2021年末時点で5,500基を超えました。これに伴い衛星通信の市場規模も拡大の一途をたどり、ある調査では2022年から2030年にかけて年平均14%以上の成長が予測されるなど、宇宙利用はかつてない活況を呈しています。この流れが、NTNの実現を力強く後押ししています。
(2) 通信インフラとしての優位性
NTNの中核をなす衛星通信には、地上の通信にはない優れた特性があります。
- 広域性・同報性: たった1機の衛星で日本全土のような広範囲をカバーし、多くの地点へ同時に情報を配信できます。
- 耐災害性・頑健性: 宇宙空間にあるため、地震や豪雨といった地上の災害の影響を直接受けません。物理的な破壊も極めて困難なため、非常に信頼性の高い通信を確保できます。
これらの特性により、災害時の通信確保や、これまでサービス提供が難しかった山間部・海上・上空でのデジタルデバイド解消、さらには次世代モビリティやIoTの本格普及を支える社会基盤として、大きな期待が寄せられています。
NTN実現に向けた世界の動向と新たな課題
NTNの実用化に向けた動きは世界中で加速しています。
国内では、通信事業者などが連携し、HAPS・LEO・GEOを最適に組み合わせた統合ネットワークの構築が推進されています。海外に目を向ければ、数千機の低軌道衛星を活用したグローバルな高速ブロードバンドサービスの提供が既に始まっています。
さらに、スマートフォンが衛星と直接通信する「Direct to Cell」も実用化フェーズに入り、近い将来、特別な機器なしで誰もが衛星通信を利用できる時代が訪れようとしています。
【新たな課題】複雑化するネットワークの品質維持
このようにNTNは、地上網(4G/5G)と、特性の異なる複数の衛星網(HAPS/LEO/GEO)が連携して機能する、極めて複雑なハイブリッド・ネットワークです。
利用者がその恩恵を最大限に受けるためには、この複雑なネットワーク全体の「通信品質」をいかにして維持・向上させるか、という新たな課題が生まれます。
NTNの品質を支える「計測・監視」の重要性
ユーザーが地上から衛星へ、あるいは異なる衛星システム間をスムーズに移動(ハンドオーバー)し、いつでも安定したサービスを受けるためには、刻々と変化する電波環境を正確に把握し、ネットワーク全体を常時監視することが不可欠です。
課題①:複雑な電波環境の把握
地上波と衛星波が混在し、無数の衛星が上空を移動するNTN環境では、予期せぬ電波干渉が発生しやすくなります。安定した通信を確保するには、どこで、どのような干渉が起きているかを正確に特定する必要があります。
課題②:シームレスな接続の担保
スマートフォンが地上網の圏外に入った瞬間に、最適な衛星に自動で接続を切り替える。こうしたシームレスな体験を実現するには、地上と宇宙両方の電波状況をリアルタイムで測定し、最適な接続先を判断する仕組みが求められます。
課題③:サービス品質の常時監視
衛星の位置、天候、利用者の集中など、様々な要因で通信品質は変動します。サービス提供者は、ユーザーに影響が出る前に問題を検知し対処するため、衛星からの信号を24時間365日監視し続ける必要があります。
丸文が提供するNTN品質維持ソリューション
これらの課題を解決し、高品質なNTNの実現に貢献するのが、丸文が提供するPCTEL社の最先端計測・監視ソリューションです。
【ソリューション1】衛星通信の安定稼働を支える自動監視システム:Seahawk Monitor
高品質な衛星通信サービスを24時間365日提供するためには、継続的な電波品質の監視が不可欠です。「Seehawk Monitor」は、衛星通信の品質をリモートで常時監視するために設計された、自動スペクトラム監視システムです。
【米PCTEL社 Seehawk Monitor 実機イメージ】
主な特長と提供価値:
- 24時間365日の自動監視: 衛星アップリンクの電波を常時監視し、意図しない送信や有害な干渉を自動で検知。問題発生時の迅速な対応を可能にします。
- キャリアID(CID)監視: 正規の信号であることを識別するキャリアIDを監視し、不正な送信やなりすましを防止します。
- リモートでの一元管理: 世界中に分散した複数の監視拠点をネットワーク経由で一元的に管理・運用でき、運用の手間とコストを大幅に削減します。
サービスの安定性を根幹から支えることで、通信事業者の信頼性向上と、エンドユーザーへの安定したサービス提供に貢献します。
【米PCTEL社Seehawk Monitor モニタリング画面】
【ソリューション2】地上と宇宙の電波を1台で可視化:ポータブルRFスキャナ IBflex / HBflex / Gflex
NTN環境下では、ユーザーは地上網(5G/LTE)と衛星網の間をシームレスに行き来します。このハイブリッドな電波環境を正確に評価するには、両方のネットワークを同時に測定できるツールが求められます。「IBflex / HBflex / Gflex」は、その要求に応えるパワフルで柔軟性の高いポータブルRFスキャナです。
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米PCTEL社 ポータブルRFスキャナ IBflex / HBflex / Gflex
主な特長と提供価値:
- 複数ネットワークの同時スキャン: 地上の5G/LTEから衛星通信、公共安全無線に至るまで、様々な通信規格の電波状況を、コンパクトな1台の機材で同時に測定できます。
- あらゆる場所での測定に対応: ポータブルな設計により、車両でのドライブテストから屋内でのウォークテストまで、あらゆる実環境での測定が可能です。
- 課題の明確化: 測定データと位置情報を組み合わせることで、電波の届かない「カバレッジの穴」や干渉エリアを地図上に正確にマッピング。ネットワークの最適化やハンドオーバー設計に不可欠な、客観的データを提供します。
IBflex / HBflex / Gflexは、NTNネットワークの敷設から保守・運用まで、実際の利用環境における通信品質を「見える化」し、サービス品質向上に大きく貢献します。