はじめてのBLE


BLEってどんなもの?
身近なBluetooth®
皆様がBluetoothと言われて最初に思い浮かぶものは、「ワイヤレスヘッドフォンやワイヤレスマウスに使われているもの」ではないでしょうか。既に身近なところで多く利用されているBluetoothについてご紹介しましょう。
Bluetoothとは・・・
Bluetooth SIG(Special Interest Group)という団体が定めた無線通信規格の1つです。
使用周波数は2.4GHz帯で、最大2Mbps程度、約100mまでの近距離無線通信です。
現在はバージョン5が最新の規格です。
Bluetoothの特長
●汎用性が高い(スマホやPCに普及している)
●消費電力が少ない
●通信費用が発生しない
●指向性がない(障害物に強い)
●無線局免許が不要である
●転送速度が低速である
BLEとは・・・
Bluetoothの拡張仕様の一つで、Bluetooth Low Energyのことです。
Low Energy は、Bluetooth v4.0で追加されました。最大の特長は超低消費電⼒です。
消費電力は従来のバージョンと比較しておよそ2分の1になりました。リチウム乾電池1つで1年程度動作可能と言われています。超低消費電力であることの代わりに、データ転送速度は1Mbps程度と低速になっています。
Bluetoothの通信規格の種類
BLEは、従来のBluetoothと比較して、物理層の仕様からプロトコルの仕様まで大きく変わり、互換性もなくなってしまいました。
そのため、現在はBLEより古い通信規格をBluetooth Classic(または BR/EDR※)と呼び明確に区別するようになりました。
Bluetoothは、「Bluetooth Low Energy」と「Bluetooth Classic」、2つの規格の総称であり、この2つは別物であることにご注意ください。
Bluetooth通信の仕組み
Bluetoothは2.4GHzの免許不要なISMバンドを利用しています。
ISMとは、“Industrial, Scientific and Medical”の略で、産業科学医療の用途に使われる無線周波数帯です。
Bluetooth以外にも、Wi-FiやZigBee、電子レンジ等多くの機器が利用している周波数帯です。
Bluetoothは2.4GHz帯を複数のチャネルに分割し、通信中に使うチャネルを変える「周波数ホッピング」を利用しています。チャネルの切替は、疑似ランダムパターンで自動的に行われます。
役割 (ロール)
BLEには、4つの役割があります。
1.Peripheral
・接続を要求する通信パケット「アドバタイズ」を送信する
・接続時はスレーブとして動作する
・例 : 活動量計、スマートウォッチ
2.Central
・「アドバタイズ」をスキャンし、接続する
・接続時はマスターとして動作する
・例 : スマートフォン、タブレット等の情報端末
3.Broadcaster
・ブロードキャスト通信用の「アドバタイズ」を送信する
・例 : 温度センサ、位置ビーコン
4.Observer
・ブロードキャスト通信用で、「アドバタイズ」をスキャンするが接続しない
・例 : 表示機器、スマートフォン
●CentralとPeripheral は、1対1の通信接続を確立した後に、データ通信が行えます。通信確立後はペアリングを経て、暗号化通信を行うことも可能です。(双方向通信)
●ObserverとBroadcasterは、ブロードキャスト通信を行う時に利用されますが、接続/ペアリングが行われていない為に暗号化通信はサポートされず、BroadcasterからObserverへの送信しかできません。(単方向通信)
※接続するための情報をマスター、スレーブ互いに交換登録することを「ペアリング」と言います。
BLEの通信手順
●コネクション(接続)までの手順
BLEの通信にもマスタとスレーブが存在します。BLE対応機器は、以下のような通信手順に従って、コネクションを確立します。
①スレーブがアドバタイズ(パケット)を送信する
②マスタがアドバタイズを受取り、接続要求を送信
③接続完了
●接続完了後の通信の方式
BLEが超低消費電力を実現しているのは、独特の通信方式によります。実は、BLEは接続完了後、ほとんどの時間はスリープ状態です。ある一定の時間間隔で起きて、通信して、また寝る、と言った動作を繰り返しています。
この方式により、通信速度やデータ送受信のリアルタイム性を失う代わりに、超低消費電力を実現しました。
BLEってどんなところで使うの?
BLEの特長
BLEの主な特長には以下のようなものがあります。
●低消費電力
●通信距離が数メートル
●通信速度が低速
低消費電力を実現するため、通信距離を短く、通信速度を低速にしています。
この特長を生かしたいろいろな用途に使われていますので、その例をご紹介します。
BLE の使用例
BluetoothのバージョンとBLE
BLEはBluetooth v4.0でBluetoothに追加された仕様の一つです。その後、Bluetoothは以下のような機能拡張とともにバージョンアップされてきました。
次項からバージョン5.0以降の動向をもう少し詳しく見ていきましょう。
Bluetooth 5
IoT無線の分野ではSigfox社が2012年にLPWA通信サービスを開始し、Semtech社が2015年にLoRaアライアンスを立ち上げ、 IoT無線の世界的な広がりが進もうとしていました。そのような中、2016年にBluetoothのバージョンが5.0に上がり、呼称も“Bluetooth 5”と呼ばれるようになります。従来のバージョンと比較すると大きな特長として通信速度2倍、通信距離4倍、データ量8倍ということが謳われ、他の無線技術と同様にIoTに適合するための進化がうかがえます。
Bluetooth 5.1
2019年発表のBluetooth 5.1では「方向探知機能」が追加されました。アンテナからBluetooth信号の送信角度や受信角度を割り出し、Bluetooth機器がどの方向にあるのかを検知することができる機能です。Apple社のiBeaconに代表される店舗、小売店向けの各種サービス、鍵や財布など紛失物の捜索、リアルタイム・ロケーションサービス(RTLS)、屋内測位システム(IPS) 等に応用されています。この方位探知機能の方式として、大きくAoAとAoDの二種類あります。
AoA(Angle of Arrival)とは..
受信機側に複数のアンテナがあり、各アンテナは一定の距離を取って設置されます。受信側の各アンテナは送信機との距離が異なるために、それぞれ異なる位相で電波を受信します。AoAはこの位相差から送信機の角度を計算する技術です。
AoD(Angle of Departure)とは..
送信機側に複数のアンテナがあり、各アンテナは一定の距離を取って設置されます。受信機側のアンテナは1本です。送信側の各アンテナは受信アンテナとの距離が異なるために、受信機側では異なる位相の電波を受信します。AoDはこの位相差から送信機の角度を計算する技術です。AoAとは逆の考え方と言えるでしょう。
Bluetooth 5.2
2020年発表のBluetooth 5.2ではEnhanced Attribute Protocol(複数の並列アクセス)、LE Power Control(動的な送信パワー制御)等の新機能に加え、LE AudioのベースとなるLE Isochronous Channelsが追加されました。LE AudioはBluetooth 5.2の目玉とも言えるユースケースで、その名の通りBLEで動作します。LE AudioではマルチストリームによるBLEワイヤレスイヤホンの音質改善、ブロードキャスト・オーディオ機能による同時配信、Bluetooth補聴器のサポートなど様々な応用が期待されています。
BLEの認証って何?
取得が必要な認証について
無線機器の販売には、機器への認証が必要です。
- 各国電波法の認証(例:技術基準適合証明、略して技適)
- 製品販売国の電波法に則っているかを証明する認証です。日本でしか使わない製品の場合は技適のみの取得で良いですが、作成した製品を海外でも使う場合は、その国ごとの電波法認証も必要となります。(例:米国のFCC、欧州のCEなど)
- 無線規格のロゴ認証(Bluetooth SIG認証)
- Bluetooth製品を発売する際には必ずSIG認証を取得する必要があります。これは、Bluetooth, BLEの規格に従っていることを証明するものです。たとえ、ロゴマークを製品に表示しない場合でも取得は必須です。
担当エンジニアからの一言
BluetoothはかつてはIrDA(赤外線)と規格争いをしていました。その後高速化、高機能化、BLEに代表される省エネ化が図られバージョンアップを重ねてきました。ところでBluetoothでは古いバージョンは規格として消滅してしまうことをご存じでしょうか。BluetoothはかつてVer1.x、 Ver2.x、Ver3.xという旧バージョンがありましたが、これらは規格として既に存在しないか、近いうちに無くなる予定です。このWebサイトでもご紹介したVer4.0も同様です。古いバージョンと互換をとりながら進化を続けるのは困難なことです。Bluetoothは今後もその時代に求められる進化を続けていくのでしょう。