MPS Virtual Bench Pro スタートアップガイド

今回はMonolithic Power Systems社(以下、MPS社と表記)が提供するPMBus付き電源IC評価用ツールのVirtual Bench Proについて、操作方法と合わせてPMBusの特長を紹介します。

Virtual Bench Proとは?

PMBus付き電源ICの評価用ツール

●Virtual Bench ProはMPS社のPMBus付き電源ICの評価をサポートする専用のGUIツールです。

Virtual Bench Pro

PMBusって何?

●PMBusとは、I2Cをベースに電源IC用に規格化されたBusです。

PMBusのロゴ

●通信方法や速度はI2Cと同様ですが、PMBusは電源IC用に三つの特長を備えています。

  1. 監視 (Monitor)
  2. 設定 (Configuration)
  3. 制御 (Control)

しかし、これらの特長を評価するには電源ICごとに用意されているレジスタの意味を理解し、I2C経由でレジスタ変更を行い、結果を測定する・・・などの作業が必要です。
また、これらの予備知識がない状態では、評価を開始するまでに時間がかかってしまいます。

Virtual Bench Proを用いれば、 GUIを使って誰でも簡単にPMBus付き電源ICを評価できます。今回はPMBus付き電源ICのMPQ8645Pを用いて、 Virtual Bench Proの操作方法を紹介します。

動作環境

Virtual Bench Pro接続手順

最初に、Virtual Bench Proのインストールから電源ICとの接続手順について説明します。
MPS社のWEBサイトで提供されているVirtual Bench Proをダウンロードします。
※2020/1/8 現在 バージョン 3.0.1.82

ダウンロードしたexeファイルを実行し、インストールを行います。インストール先のフォルダは後ほど閲覧する場合がありますので、どこのフォルダにインストールしたのかを把握しておきましょう。

※ USBドライバはVirtual Bench Proのインストーラに含まれています。
  Virtual Bench Proをインストール後、PCとEVKT-USBI2C-02を接続してください。

EVQ8645P-V-1Phase-00A、EVKT-USBI2C-02、PCを接続し、 安定化電源から12[V]を入力後、インストールしたVirtual Bench Proを起動します。

Virtual Bench Proを起動すると、自動的に接続されたICを検出し、専用のGUIが表示されます。

※この時、異なるデバイスが検出される可能性があります。その場合には、手動でファイルを選択する必要があります。

異なる電源デバイスを検出した場合の操作方法

[Open Project]ボタンを選択し、先ほどVirtual Bench Proをインストールしたフォルダを選択します。

フォルダ内にある[Database]フォルダから使用するデバイス名フォルダを選択し、拡張子[.Spec]ファイルを選択します。

赤枠内の[System]と記載された箇所に、選択したデバイス名に変更されているかを確認します。

次に電源ICのアドレスを指定します。アドレスの確認方法はGUI上部の虫眼鏡マークをクリックすると、確認できます。
※この時表示される数値はHex[0x]です。

アドレスを確認後、Systemに記載されている[デバイス名]を右クリックし、[Change Chip Address]を選択して表示された画面にて、先ほど確認したAddressを記入しOKを押します。
※[CH0]を選択すると、正常にアドレスを変更できません。

Systemに記載されているデバイスの左にある□が緑色に点灯していれば、接続は完了です。

Virtual Bench Proの確認項目

次に、MPQ8645Pがサポートしているレジスタ機能を確認します。
今回はPMBusの特長である下記三つの項目を確認します。

  1. Monitor機能で何が監視できるか
  2. Configuration機能で何が設定できるか
  3. Control機能はどのように電源ICを制御できるか

1.Monitor機能で何が監視できるか

Monitor機能では入出力電圧や出力電流、デバイスの温度を監視できます。
この機能を用いれば、マルチメータなどの測定器を使用しなくても、入出力電圧、出力電流、温度の値を確認できます。

また、ステータスレジスタを読み込むことで正常/異常状態を確認できます。
MPQ8645Pでは下記レジスタが用意されており、それぞれのアドレスを指定して読み込むことで、動作しているMPQ8645Pの各種値を確認できます。

Virtual Bench Proは上記レジスタの値を自動で読み込み、GUI上にグラフで出力します。
GUIにグラフを表示するには、画面下にある[Register/Monitor]タブでMonitorを選択します。

また、Virtual Bench Proでは保護機能が働いたことを、視覚的に確認できます。
GUI画面の右部にある[Fault]の欄でどのような保護機能が働いたのかを確認できます。保護機能が働くと、Fault欄の緑マークが赤マークに変化します。
下画面ではVIN_OV_WARNが赤マークになっていることから、設定したしきい値より大きな入力電圧が入力されていることが確認できます。

2.Configuration機能で何が設定できるか

Configuration機能では出力電圧値やSW周波数、各種保護機能のしきい値設定などができます。また、これらの設定値は内部メモリ(Multi-Time Programming)に保存できます。

Virtual Bench ProではGUI上で設定するため、直接レジスタ値を打ち込む必要がなく、簡単に設定変更ができます。設定を変更する場合は、赤枠内にある[Register MAP]で各種レジスタの設定ができます。

実際にVirtual Bench Proを用いて、出力電圧値を変更します。 出力電圧はVOUT_COMMAND(21h)で設定できます。

現在の出力電圧1.2[V]から1.5[V]に変更します。

GUI上のVOUT_COMMAND(21h)に“1.5”を記入し上部タブにある[Write to Chip]ボタンを押します。この動作のみで出力電圧の変更ができます。Monitor機能を用いて出力電圧を確認すると、1.2[V]から1.5[V]に出力電圧が変更されていることが確認できました。

3.Control機能はどのように電源ICを制御できるか

Control機能では電源ICのON/OFF制御方法やマージン電圧の設定ができます。
従来の電源ICのEnable機能に対して様々な設定ができます。
また、制御方法の設定値は内部メモリに保存できます。

従来の電源ICでは予め仕様として決まっているON/OFF制御方法に対して、PMBus付き電源ICでは複数の制御方法を設定・変更できます。

ON/OFF制御
ON制御方法
制御なし
入力電圧のみ
CTRL制御
CTRL端子にHigh/Low信号を入力
※High/Low信号のどちらでONするかの設定もできます
OPERATION制御
PMBus経由でOPERATIONコマンドを入力
CTRL制御 & OPERATION制御
CTRL制御及びOPERATION制御の両方がON条件の場合にON

実際にVirtual Bench Proを用いて、制御方法を変更します。制御方法を変更するには[Register Map]タブの[Operation]タブを選択します。
デフォルト設定ではCTRL端子制御となっているため、CTRL端子制御&OPERATION制御に変更し、OPERATIONコマンドでON/OFFができるか確認します。

ON_OFF_CONFIG(02h)op(D3)設定でOPERATION制御の設定ができます。
デフォルト設定では[Ignore]となっているため、OPERATION制御は無効です。
GUI上で設定を[Response]に変更し、[Write to Chip]ボタンを押します。

次にOPEARATION制御ができるのか確認します。
OPERATION(01)の設定はデフォルトで[ON(0x80)]となっているため、この設定を[Immediate OFF(0x00)]に変更し、[Write to Chip]ボタンを押します。

Monitorの出力電圧が0[V]に低下したため、CTRL&OPERATION制御に変更できました。

担当エンジニアからの一言

今回はVirtual Bench Proの操作方法と合わせて、PMBusの3つの特長をご説明しました。
Virtual Bench ProはGUI上でPMBus付き電源ICの評価できるツールですが、実機基板上の評価用にも有用です。例えば、 EVKT-USBI2C-02が接続できる端子を用意すれば、Virtual Bench ProをインストールしたPCから入出力電圧、電流、温度が確認できます。EVKの評価だけでなく、実機基板の状態確認など、幅広い用途で使用できる優れたツールです。
MPS社のPMBus付き電源ICを使用する際に是非ご活用ください。

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