はじめてのUSB [USB Type-C™ 及び Power Delivery規格入門]

USB Type-C と USB Power Delivery(以下、USB PD)規格について、基本からシステムソリューションまで説明します。

USB Type-C コネクタとケーブルの特長

USB Type-C コネクタの特長

  • Plug(オスのコネクタ)とReceptacle(メスのコネクタ)の総称をコネクタと呼びます。
  • USB Type-C コネクタはPlug面の上下を気にすることなく接続することができます。
  • Type-C規格ではこのことをUSB Type-C Plug Flip-abilityと表現しています。

USB Type-C ケーブルの特長

  • USBホスト(DFP)とUSBデバイス(UFP)の区別を気にすることなく接続することができます。

USB Type-C Receptacle(左)とPlug(右)のピン配置

USB Type-C ケーブルを使って何ができる?

USB Type-C規格で規定された範囲でできること

  • [Power]
    • VBUSラインを利用したPowerの供給(Source)、消費(Sink)
    • VBUS電圧は5V、電流は最大3Aまで
  • [通信]
    • USB2.0、USB3.x

USB PD規格で規定された範囲でできること

  • [Power]
    • 5Vから20Vの任意のVBUS電圧および最大5Aの電流の利用
  • [通信]
    • USB2.0、USB3.x
    • Alternate Mode: DisplayPortやThunderbolt等USB以外の通信
  • [USBホストの役割交換]
    • Power Role Swap: Power SourceとPower Sinkの役割交換
    • Data Role Swap: USBホスト(DFP)とUSBデバイス(UFP)の役割交換

USB Type-Cコネクタを使用した機器は上記の一部の機能のみを採用することが可能です。
例えば5V 3A充電サポートでUSB通信をサポートしないType-C機器も規格に準拠した製品です。

USB Type-C規格

 
USB通信なし
(給電 or 受電)
USB2.0
USB3.x
DisplayPort
Thunderbolt
Power Source
5V 3A
Type-C充電器
車載USB充電ポート
カーナビ
Notebooks
Power Sink
5V 3A
15Wで十分な小型機器
音楽プレーヤー
Smart Phone
PC周辺機器
Camcorder
Smart Phone
PC周辺機器

USB PD規格

 
USB通信なし
(給電 and/or 受電)
USB2.0
USB3.x
DisplayPort
Thunderbolt
Power Source
5/9/12/15/20V
3A or 5A
USB PD充電器
車載USB充電ポート
モバイルバッテリ
カーナビ
USB PDハブ
大型モニタ
Thunderbolt Docks
Power Sink
5/9/12/15/20V
3A or 5A
18W以上必要とする機器
モバイルバッテリ
スピーカー
Smart Phone
カメラ
Camcorder
ポータブルモニタ
カメラ、ゲーム機
Notebooks

USB Type-C Port Configuration Process

Configuration Processとは

  • 「USB Type-Cケーブルを使って何ができる?」に記述した内容のうち具体的に何をサポートするかを決定するプロセスです。
  • USB Type-C規格で新たに追加されたCCピン(Configuration Channel)を使います。
  • Configuration Processは以下の7つのステップ (上5つがUSB Type-C規格、下2つがUSB PD規格で規定)
    • 物理的なケーブル接続(Attach)の検知
    • Plug面の検知
    • Source(USB Host)-to-Sink(USB Device)の関係を確立
    • USB Type-CケーブルがVconnを必要としているか否かの検知
    • VBUSから供給される電流値(5V3A / 5V/1.5A 5V/500mA)の検知
    • Power Negotiation
      • 5V以上のVBUS電圧を利用する場合のNegotiation
    • Alternate Mode
      • DisplayPortなどUSB通信以外の拡張機能を利用する場合のNegotiation
  • Configuration Processについてもう少し詳しく説明します 。

Source(USB Host)-to-Sink(USB Device)の決定

USBは必ずUSB HostとUSB Deviceの組み合わせで接続する必要があります。

  • 従来のUSBケーブルはA-plugとB-plugで構成されています。
  • A-plugはUSB Hostに接続され、B-plugはUSB Deviceに接続されます。
  • ケーブル接続をした時点でSource(USB Host)-to-Sink(USB Device)の関係が確立します。

USB Type-Cケーブルで接続したときも必ずUSB HostとUSB Deviceの組み合わせで接続する必要があります。

  • USB Type-Cケーブルは左右対称なので、接続した時点でSource(USB Host)-to-Sink(USB Device)の関係が確立するとはかぎりません。
    • Source(Host)-to-Source(USB Host), Sink(USB Device)-to-Sink(USB Device)の組み合わせで接続されることもあります。
  • USB Type-C規格ではケーブル接続時にSource(USB Host)-to-Sink(USB Device)の関係が確立されたことを検知する仕組みが追加されました。

SourceはCC1/CC2をpull-up(Rp) SinkはCC1/CC2をpull-down(Rd)

  • Rpの抵抗値は供給できる電流値によって異なる
    • Rp = 10kΩ(3A@5V)
          = 22kΩ(1.5A@5V)
          = 56kΩ(Default@5V)
  • Sourceはケーブルが接続されていないときはVBUS(5V)を出力してはいけません。
  • Sourceはケーブル接続(attach)を検知するためにCC1/CC2の電圧レベルをモニタ
  • SourceはCC1 or CC2上に接続先SinkのRd pull-downを検知
  • Sinkとの接続(connect)が確立したと認識して、VBUS(5V)を出力

  • Rdの抵抗値は5.1kΩ


  • SinkはSourceと接続されるまでVBUS(5V)を検知しません。
  • Sourceはケーブル接続(attach)を検知するためにCC1/CC2の電圧レベルをモニタ
  • SinkはVBUS(5V)を検知するとSourceと接続(attach)と認識します。
  • CC1とCC2の電圧レベルをモニタ。電圧レベルに応じてSourceの給電能力(3A, 1.5A or 500mA)を認識。

Vconnについて

  • USB Type-C ReceptacleはCC1とCC2があります。
  • SourceデバイスはSinkデバイスとの接続が確立すると、一方のCC lineはSinkデバイスとのパケット通信に使用します。もう一方のCCラインはVconnと呼ばれる機能に変わりSorceデバイスは電源を供給します。
  • USB Type-Cケーブルの中にはeMarkerと呼ばれるUSB PDコントローラやリピータ(リドライバ又はリタイマ)が実装されている場合があります。VconnはこれらのICへの電源供給に利用されます。

Power Negotiation

  • Source(DFP)とSink(UFP)の関係が確立して、VBUSから供給される電流値(5V3A / 5V/1.5A 5V/500mA)が決まりました。ここまでのプロセスはUSB Type-C規格で規定された内容です。もし Source(DFP)またはSink(UFP)がVBUS電圧は5VでUSB通信以外の拡張機能(Alternate Mode)も必要ない場合はConfiguration Processは終了です。
  • 5Vを超えるVBUS電圧を利用する場合はCCライン上のパケット送受信を利用してVBUS電圧と電流を決めるためのPower Negotiationを行います。
  • Source(DFP)とSink(UFP)の間にプロトコルアナライザを接続するとCCライン上のパケットを取得してパソコン上に表示することができます。

以下はプロトコルアナライザで取得したUSB PD充電器とパソコンの間で送受信したパケットを取得したログです。SRCがUSB PD充電器 (60W)、SNKがパソコンが送出したパケットです。このケースではUSB PD充電器は5/9/12/15/20Vをサポートしており、パソコンは20Vをリクエストしています。

USB PD規格、Power Rule

USB PD規格には出力する電圧/電流には明確な規定があり、表示するワット[W]数によって、出力しなければいけない電圧・電流が決定します。

上記表を電流と電力でグラフにすると下記となります。

  • 18Wと30Wを例に挙げると、それぞれ出力しなければいけない電圧/電流は下記になります。
    • 18W:5V3A 9V2Aをサポート
    • 30W:5V3A 9V3A 15V2Aをサポート
  • そのため、30W品にも関わらず、5V3A,15V2Aのみのサポートの場合には規格違反です。

USB PD規格では出力する電圧の規定とともに、電源仕様についても規定しています。そのため、USB PD用の電源電圧が電源仕様の範囲内に収まっているのかを確認する必要があります。

  • 下記の図は”Voltage Transitions”に関する規定です。

電源立ち上がり時
電源立ち下がり時

USB PDの機能ブロック

意外に複雑なUSB PDのシステム構成

使用するユーザにとっては、非常に便利なUSB PDですが、大電力化、対応機器の増加に伴い、複雑なネゴシエーションや電源コントロールが必要になってきました。
そのため、USB PDの機能ブロックは大きく分けて電源部と、CCラインを使ってネゴシエーションを行うコントローラ部で構成されています。

立ちふさがる3つの課題

  1. USB Type-C、USB PD規格に対しての深い知識が必要
    • 規格の完全準拠を確認し、相互接続を確保するためには、USB-IFの認証要件を満たす必要があります。また、マイコン制御によるソリューションの場合には、規格を完全に理解し、USB PD機能を実装するファームウェアの開発が必要です。
  2. 複雑な電源制御の知識が必要
    • 従来のUSB規格での単一電源変換(12V→5V)ではなく、複数の電圧対応が必要なため電源設計における知識が必要です。
  3. デジアナ混在ソリューション
    • コントローラ部ではデジタルの知識が、電源部ではアナログの知識が必要です。また、多くのチップメーカがそれぞれのICを供給しているため、コントローラ部、電源部でICメーカが変わってしまうと、大きな設計変更が必要です。

担当エンジニアからの一言

USB Type-Cおよび USB PD規格の概要を説明しました。USB PD製品の機能充実の一方で、開発に立ちふさがる3つの課題についてまとめました。
次回は、この3つ課題に対して、当社が提供するUSB Power Delivery ソリューションを実際に製品と合わせて説明します。

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