MagSenseを使ってみよう[誘導型タッチセンシング・テクノロジー]
インフィニオン テクノロジーズのタッチセンシング・テクノロジーには、業界をリードする静電容量センシングのCAPSENSE™に加え、新たなタッチユーザーインターフェイスを実現する誘導型センシングのMagSenseがあります。
今回はMagSenseの機能と、それが実装されているPSoC™ 4700Sについて紹介します。
MagSenseとは?
誘導型センシング技術を用いた、非接触の金属センシングを実現する新しいタッチユーザーインターフェイスで、高品質の金属オーバーレイ、防水、ロータリー/リニアエンコーダ機能、近接センシングによる検出が必要になるアプリケーションなどに活用できるセンシング・テクノロジーです。
誘導型センシング
誘導型センシングは、コイルと金属との距離の変化により生じる誘導電流の違いを利用して動きを検知します。
例えば下図のように、センサコイルから発せられる電磁場に対して金属ターゲットが近づくと、金属ターゲットには渦電流と呼ばれる循環電流が発生します。この渦電流により、センサコイルに逆電磁界が誘導され、センサコイルの実効インダクタンスが減少します。
センサコイルとコンデンサの並列回路はタンク回路と呼ばれており、センサコイルのインダクタンスが減少すると、タンク回路の共振周波数が上昇し、逆にセンサコイルのインダクタンスが増加すると、タンク回路の共振周波数は低下します。
このセンサコイル信号の振幅の変化をPSoC™ 4 MCUが測定して、近接検知距離にある金属ターゲットの存在を検出します。
その検出能力は、わずかな金属板のたわみによるコイルと金属間の距離の違いも検知できるので、タッチユーザーインターフェイスにも適応できます。
CAPSENSE™とMagSenseの違い
静電容量センシングを使用したCAPSENSE™は、銅パターンなどの検出パネルと指などの間で生じる静電容量の変化で接触を検出するタッチユーザーインターフェイスで、薄くて凹凸がないためデザイン性に優れていることや、機械式ボタンのように摩擦による接点の劣化などを考慮する必要がないという特長を備えています。
しかしながら、静電容量センサの場合は、水ぬれやノイズに弱く、手袋を着けたままでの操作には不向きな面もあるため、水回りの機器や産業機器での利用に制限がある場合もあります。
対して、MagSenseの場合は、金属とコイルの距離を検知する仕組みなので、水濡れによる誤検知を起こす心配もなく、手袋をはめたままでも問題なく動作させることが可能で、さらには検知部分(=コイル)を金属で覆うことでノイズにも強くなるという特長を持っています。このことから、静電容量センサでは実現し難い用途に対してのタッチソリューションを実現できるので、産業機器分野などでのタッチユーザーインターフェイスとして注目されつつあります。
PSoC™ 4700S シリーズ
PSoC™ 4700Sは、単一チップに誘導型センシングおよび静電容量センシング技術を備えたマイクロコントローラです。誘導型センシング(MagSense)テクノロジーは金属物体のセンシングを可能にし、業界をリードする静電容量センシング(CAPSENSE™)テクノロジーは非金属オブジェクトのセンシングを可能にします。
- 32bit MCUサブシステム
- 48MHz Arm® Cortex®-M0+ CPU
- 最大 32KB Flash、4KB SRAM
- プログラマブル アナログ ブロック
- 10bit×1, 16.8kspsシングルスロープADC
- 2つの低電力コンパレータ(CMP)
- 単一の8bit IDACとして構成可能な7bit IDAC ×2
- 金属物体の検知を可能にする MagSenseブロック
- 自己容量または相互容量センシングによる低電力動作をサポートするCAPSENSE™ブロック
- プログラマブル デジタル ブロック
- 設定可能な5つの 16bitタイマー、カウンター、PWM(TCPWM)ブロック
- I2C、SPIまたはUARTとして設定可能な2つのシリアル通信ブロック(SCB)
- パッケージ
- 25 ball WLCSP、24ピンQFN、48ピンTQFP
- 16ピンのSmart I/Oを含む最大36ピンのGPIO
PSoC™ 4700Sは、MagSenseによる誘導型センシングだけでなく、CAPSENSE™による静電容量センシングも備わっていますので、両方のセンシング技術を組み合わせたハイブリッド型タッチユーザインターフェイスも構築でき、より自由度の高いタッチユーザインターフェイスデザインが可能になります。
PSoC™ 4700S 評価キット
CY8CKIT-148 PSoC™ 4700S Inductive Sensing Evaluation Kit
CY8CKIT-148 PSoC™ 4700Sインダクティブセンシング評価キットは、PSoC™ 4700S MCUの設計とデバッグを可能にする低コストのハードウェアプラットフォームです。 このキットは、インフィニオン テクノロジーズの新しい誘導検出技術であるMagSenseを使用したボタンと近接センサを実証します。 さらに、ロータリーエンコーダなどのさまざまなインターフェイスを評価するためのFPCコネクタが用意されています。
参考文献
Family Datasheet
Technical Reference Manual
アプリケーション ノート
担当エンジニアからの一言
今回は、MagSenseの概要について説明しました。
MagSenseは、静電容量センシングが不得手とする用途においても、同様の使い勝手で誘導型センシングによるタッチユーザーインターフェイスを構築できますので、ぜひご検討ください。
次回は、MagSenseを実装しているPSoC™ 4700S評価ボードについて説明します。
その他すべての名称は、それぞれの所有者に帰属します。