【エッジAI基礎 × eYs3D】AIの性能指標「TOPS」とは?


目次
1. はじめに:TOPSとは
TOPS(Tera Operations Per Second)は、プロセッサが1秒間に実行できる演算回数を表す指標です。従来、科学技術計算や3Dグラフィックスなどの分野では、コンピュータの計算能力はFLOPS(Floating-point Operations Per Second)という浮動小数点の演算回数を表す指標が広く使われてきました。昨今のAI、特にディープラーニングでは、整数演算(特にINT8と呼ばれる8-bit精度)が多用されるため、整数演算の性能を評価する指標としてTOPSが用いられるようになりました。TOPS値が高いほど、プロセッサはより複雑なAIモデルを高速に処理できることを意味します。
2. エッジAIにおけるTOPS
エッジAIとは、デバイスやセンサーなどのエッジデバイス側で直接AI処理を行う技術です。これにより、データをクラウドに送信することなく、リアルタイムでの処理が可能になります。エッジAIの主なメリットには、次のようなことがあげられます。
- 低遅延:迅速な応答が求められるアプリケーションにおいて有効
- ネットワーク非依存:ネットワーク環境に依存せず、どこでもAI処理が可能
- 通信コストの削減:データの送受信にかかる費用を抑えられる
- プライバシー保護:データがクラウドに送信されないためプライバシー保護が可能
そして、エッジAIでは低遅延、リアルタイム性が求められるため、TOPS値は重要だと言えます。
3. GPUと高いTOPSが必要なシステム
エッジAIで高いTOPS性能が必要とされる分野として、自動運転車、スマートファクトリー、監視システムなどがあげられます。例えば、自動運転車は、リアルタイムで膨大なデータを処理し、瞬時に判断を下す必要があります。これらのシステムでは、リアルタイムで大量のデータを処理する必要があり、数十TOPSから数百TOPSの性能が求められますが、これにはGPU(Graphics Processing Unit)が適しています。GPUは、もともとはグラフィックス処理に特化したプロセッサでしたが、並列演算能力の高さからAI処理にも広く活用されています。
4. NPUと数TOPSでも十分なシステム
一方で、数TOPS程度の性能でも十分とされるシステムも存在し、NPU(Neural Processing Unit)が重要な役割を果たします。NPUは、AI推論に特化したプロセッサで、ニューラルネットワークの効率的な演算処理を行い、特定のタスクに特化することで、効率的にAI処理を行うことができます。以下のようなシステムでは数TOPSでも十分な見込みで、高いTOPS値を持つGPUよりも、消費電力やコストの面で有利なNPUの活用が期待されます。
家庭内の清掃を自動で行うお掃除ロボットは、部屋のマッピングと障害物の回避を行いながら効率的に掃除を行います。 |
レストランやカフェでの配膳を自動化する配膳ロボットは、テーブルの位置を認識し、障害物を避けながら指定された場所に注文の品を届けます。 |
ドローンの自律飛行には、カメラやセンサーからのデータをリアルタイムで解析し、障害物を回避しながら目的地に向かう能力が求められます。 |
工場や倉庫での物流を自動化するAMRは、カメラやセンサーを使って、障害物を避けながら、効率的に目的地まで移動します。 |
小規模な監視システムやスマートカメラ・ドアベルカメラは、顔認識や動体検知を行い、異常検知によりセキュリティを強化します。 |
ゲーム内のユーザーインターフェース(UI)は、プレイヤーの操作をリアルタイムで反映し、快適なゲーム体験を提供します。 |
5. eCV5546のNPU
eYs3D社のエッジAI SoCのeCV5546には以下などが内蔵され、数TOPS程度の性能でも十分とされるシステムに適しています。
- 最大4.6 TOPS(1GHz動作時)のNPUがAI推論を効率的に処理(OpenCLとOpenVXをサポート)
- 最大1.8GHzのクアッドコアCortex-A55がOSや汎用的な計算処理を処理
- 最大400MHzのCortex-M4がモーター制御をはじめとする制御アプリケーションを処理
eCV5546を用いたエッジAIプラットフォームXINK V2が提供されています。
6. まとめ
TOPSはAIの処理性能を示す指標です。高いTOPS性能が必要なシステムは、GPUを用いて高度なタスクを処理します。一方、数TOPSの性能でも十分なシステムも存在し、それらにNPUを活用することで、消費電力やコストの面で効果的です。eYs3D社のeCV5546は、それらのお客様に最適なソリューションをご提供します。
関連商品
eYs3D Microelectronics: 3DマシンビジョンとエッジAIで未来を拓く
【AI: Computer Vision】eYs3D XINKデモを動かしてみた