はじめてのオペアンプ


オペアンプってどんなもの?
まずはじめに、オペアンプとは一体どんなものなのでしょうか?
オペアンプってどういう意味?
- 「Operational Amplifier」を略した呼称です。日本語では「演算増幅器」と呼んでいます。
オペアンプ でなにができるの?
- オペアンプは下図のように5つの端子から構成されています。
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- 基本的な動作は「2つの入力端子に入力された信号の電圧差を増幅して出力する」ことです。
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- オープンループゲインAが非常に大きいと、出力は常に最大 or 最小となってしまうので、「演算増幅器」というよりはまるでコンパレータのような動作です。
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- そこで使用されるのが
「負帰還」
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- という考え方です。
- 負帰還は、オペアンプを使用するうえで避けて通ることはできない大切な概念です。
負帰還を使うとなにができるのでしょうか?
負帰還とは「フィードバック素子」を介して、出力を反転入力端子に戻してあげることです。
フィードバック素子に特性を持たせることによって、オペアンプは入力の差を∞に増幅するという基本的な働きから、∞の増幅率をある一定の値に制御したり、微分積分といった演算機能を持つことができるようになるのです。
これがオペアンプが 演算増幅器 と呼ばれる理由です。
つまり、オペアンプは 単体で使用するものではなく、フィードバック素子(回路)と組み合わせることで様々な機能・性能を実現することができる「回路ありき」のデバイスです。
オペアンプってどんなところで使うの?
設計者がイメージするオペアンプの代表的な使用方法について説明します。
私たちの身の回りでは様々な物理現象が発生します。
センシング・デバイスは、これらの物理現象を電気信号に変換します。
しかし、その電気信号は微小な電気変化ですので、マイコンやプロセッサが信号を処理できません。
オペアンプはセンシング・デバイスが出力する微小な信号(電気変化)をマイコンやプロセッサが情報処理できるように拡大(増幅)して出力します。
また、オペアンプには処理したい電気信号以外にも、不必要な電気信号が入力されます。この後のデジタル機器が正しい処理を実施するためには、不必要な電気信号を除去する必要があります。オペアンプは負帰還の構成によって、出力まで通過する信号とそうでない信号を分けることができます。
このような働きをフィルタといい、オペアンプは不要な信号をフィルタし、必要な信号を後段のデバイスに伝えます。
これらがオペアンプの代表的な仕事であり、必要とされる理由です。
オペアンプってどんなふうに使うの?
代表的な仕事として「増幅」と「フィルタ」について紹介しましたが、オペアンプはもともと四則演算を実現するために開発されました。
現在では四則演算のみならず、負帰還の構成によって様々な機能ユニットが提案されています。
ここではその一例を紹介いたします。
増幅回路の一例
四則演算の一例
どんなオペアンプ製品があるの?
このようにオペアンプは負帰還の構成によって様々な機能ユニットを実現することができます。
では、世の中にはどのようなオペアンプ製品があるのでしょうか?
世の中にはお客様の多種多様なアイデアやニーズに対応するため、多種多様なオペアンプが存在しています。
私たちはその中から適切なオペアンプ製品を選択しなければなりません。
オペアンプを直流精度、交流精度の観点からカテゴライズすると大きく3つに分類できます。
今回は3つに分類していますが、メーカによっては特性によってより細かく分類していることもあります。
では、実際にオペアンプ製品を選定する際には何がポイントとなるでしょうか。“Balance”と“Low Price”のキーワードである汎用オペアンプの3製品からスペックを比較してみましょう。
以下は、オペアンプの性能をレーダーチャートで示しています。レーダーチャートの軸は Low noise, Low Offset, Low Input Bias, High Bandwidth, Low Power, Low Price の6つの軸で構成しています。個々の項目の説明は、割愛しますが、外側に行くほど良い特性です。理想的なオペアンプは外側を囲うレーダ-チャートです。
ひとくちに“Low Price”と“Balance”と言っても、レーダーチャートの形が様々なように性能も様々です。
A: 性能にバランスが取れており、どのような場所でも使いやすいオペアンプです。
使いやすい代わりに他より高価格です。
B: 低価格と低消費電力に特化したオペアンプです。そのため、使いどころは制限されます。
C: オフセットが我慢できれば、その他の性能もバランスよく低価格で使いやすいオペアンプです。
このように、オペアンプは低価格だけで選択すると、その他の性能が削られていて使いにくいですが、すべての性能のバランスが良いものに重点を置いて選択しようとすると、価格が高くなります。重要な性能とそうでない性能を把握していれば、最適な価格で最適な性能のオペアンプを選定することができます。
最適なオペアンプを選択するためには、必要な性能を理解することはとても大切です。
設計するアプリケーションでどの性能を重視するのかを確認して、レーダーチャートを利用して、オペアンプを絞り込んでいきましょう。