スーパーキャパシタを用いたバックアップ電源(MAX38888)ソリューション(Part2)
Analog Devices, Inc.(以下、アナログ・デバイセズ社)のスーパーキャパシタ(以下、SuperCap と表記)やコンデンサバンクのバックアップ電源レギュレータMAX38888に関して、Part1では動作説明を行いました。
Part2 は、評価KIT(以下 MAX38888EVKIT と表記)を使った実機動作を紹介します。
評価KITの概要
回路図
実物写真
SuperCap を含む外付け部品を全て実装済なので入手後すぐに評価ができます。
設定内容の確認
MAX38888EVKITの設定値
- 赤枠 R1,R2,R3:充電最大電圧=2.7V
放電最低電圧=1.42V - 緑枠 R4 :SuperCapへの充電電流=最大0.5A
SuperCapからの放電電流=最大2.5A
※上記電流はピークインダクタンス電流での規定 - 青枠 R5,R6 :SuperCapが充電可能な最低システム電圧=3.35V
SuperCapが放電を開始する最低システム電圧=2.99V
算出式の詳細はデータシートをご参照ください。
測定環境
●評価KITのデータシートでは以下3つの機材が記載されております。
- MAX38888EVKIT
- 5V, 3AのDC電源
- デジタルマルチメータ
システム電圧(VSYS)とSuperCap電圧(VSC)をそれぞれ確認したい場合はもう一台デジタルマルチメータを。波形を見たい場合はオシロスコープを追加で使用します。画像は、セットアップ例となります。
なおシステム電圧(VSYS), SuperCap電圧(VSC), スイッチングノード(LX)はオシロスコープのプローブを画像のように挿入することも可能です。
評価手順
●MAX38888EVKITデータシートに記載の評価手順は以下の通りです。
※VSYS=システム電圧, VSC=SuperCap電圧
- ジャンパーJU1を1-2にセット。(ICをenable状態にします)
- ジャンパーJU2をオープンにします。(システム側負荷をゼロにします)
- DC電源を3.4Vにセットした後、出力をOFFにしておく。
- DC電源の出力をVSYSとPGNDに接続します。
- ディジタルマルチメータをVSCとPGNDに接続します。
- DC電源の出力をONにし、VSCが2.71Vまで上昇することを確認します。
- DC電源の出力をOFFにします。
- VSYSが2.99V、VSCが約2.5Vに低下することを確認します。
- ジャンパーJU2を挿入します。(システム負荷として50Ωを設定)
- VSCが1.42VになるまでVSYSが3Vに維持されることを確認します。
- その後VSCが1.42V以下になるとVSYSが0Vになることを確認します。
手順に沿って動作をさせるとVSCとVSYSの全体波形は以下となりますが、チャージングモードとバックアップモードをもう少し詳しく見てみましょう。
波形&考察
●チャージングモード
- VSYSに3.4V印加するとSuperCap電圧=約2.7Vになるまで充電を行います。
- この時、MAX38888は降圧動作です。
- 充電完了によりRDY端子=High。SuperCapへの充電電流はゼロになります。
- 波形より充電時間(tCHARGE)は109.6secです。
- tCHARGEはC×dV=I×tCHARGEで算出可能です。
- 充電電流(I)はインダクタンスピーク電流500mAのため平均電流で約250mA
- C=11F, dV=2.7V, I=250mA
- これらよりtCHARGE=118secとなり、実測値に近い値となることが分かります。
●バックアップモード
- VSYSへの電圧印加を止めるとSuperCapが電源ソースとなりVSYS=2.99Vに維持します。
- VSYSの遷移は先に示した全体波形をご参照ください。
- この時、MAX38888は昇圧動作です。
- システム側に負荷(RL=49.9Ω)を掛けるとVSCが徐々に低下します。
- VSCが設定した最低値に達するとバックアップが終了します。
- RDY端子=Low。SuperCapからの放電電流もゼロになります。
- 波形よりバックアップ時間(tBACKUP)は142.2secです。
- tBACKUPはSuperCap容量=(2×Vsys×Isys×tBACKUP)/[(Vcap(max)2-Vcap(min)2)×効率]で算出可能です。
- Vsys=2.99V, Isys=60mA(=2.99V/49.9Ω)
- Vcap(max)=2.7V, Vcap(min)=1.42V, 効率=90%
- これらよりtBACKUP=145.7secとなり、実測値に近い値となることが分かります。
なお、バックアップ時間の実測値と算出値の差異は外付け部品の定数ばらつきにより生じるため、設計時はこの点も考慮する必要があります。
Part2 は、以上です。Part1 は、下記リンクからどうぞご覧ください。
また、MAX38888の各種情報は下記リンクよりご参照ください。
担当エンジニアからの一言
MAX38888EVKITは、評価に必要な部品が全て実装されているため入手後即評価が可能です。また、各設定は外付け抵抗の変更だけでよいため、設計工数の削減も期待できます。SuperCap の搭載を検討されている際は、まずは本評価KITで「お試し」してみてはいかがでしょうか?