はじめての Ethernet(PHYデバイス)


世の中はネットワーク社会
インターネットの普及により情報ネットワークが世界的に広がり、さまざまなやり取りができるようになりました。スマートフォン、タブレットの普及で4G、5G、WiFiで、どこでも手軽に通信できるようになり、IoT(Internet of Things)では端末からネットワークを介して、多くの情報を手に入れることができます。さらにAIやクラウドの進化によって、ユーザがソフトウェア(SW)やデータの物理的な保存場所(サーバの設置場所)を意識することなく利用できる環境が整い、多くの分野でネットワークが活用されるようになりました。
今回は、有線通信の一つであるEthernetとそれを構成するPHYデバイスについて紹介します。
Ethernetとは?
ビル内や事務所内にあるコンピュータ、コピー機(プリンタやスキャナ機能を搭載)、デスクトップパソコンやサーバなど電子機器をケーブルでつないで通信する構内通信網(有線で結ぶLAN:Local Area Network)の一つになります。これは世界中で最も普及している規格の一つで、IEEE802.3で定義されています。現在は、有線ではなくこれを無線LANで目にすることが多いですが、工場などでは、その信頼性から多くが有線で利用されております。
Ethernet PHY製品はこんなところに使われています
デスクトップパソコンで使用していたイメージが強いですが、実はさまざまな分野で使用されています。
なぜいろいろな機器がつながるの?
普段はケーブルをつなぐだけで機器間での通信ができていますが、みなさんは「なぜ異なる機器間での通信が、こんなにも簡単に可能なのか」をご存知でしょうか。
通信伝送が一致しても、アプリケーション毎の固有な設定や文字コードやデータ表現を機器毎に異なっていると通信ができません。
そこでこれらを整理し、共通ルールとしてISO(国際標準化機構)で作られたのが、OSI(Open System Interconnection)参照モデルです。全部で7階層に分けられ、通信に必要なルールをハードウェア(HW)の物理的な役割から、ソフトウェアのアプリ的な役割までを規定しています。この中でHWにかかわる部分は、下から2層で規定されおり、今回説明するPHYデバイスの「PHY」は、OSI参照モデルにおける最下層の物理層(PHYsical layer)の略から名付けられています。それでは、PHYデバイスを中心にもう少し詳しくHW構成を見ていきましょう。
PHYデバイスを使ったEthernetのHW構成は?
EthernetのHW構成は下図のように大きく5つに分類できます。
- LANケーブル
- 通信速度でカテゴリ分けされています。
- コネクタ
- Ethernetのコネクタです。RJ-45などが用いられます。
- パルストランス
- 外側からの電気の直接的な流れ込みを防ぎ、機器内部の回路を守る役割を担っています。
- PHY:Physical
- ケーブル側のアナログ信号とMAC(MCU/FPGA)側のデジタル信号を相互変換します。
- MAC:Media Access Controller
- 対向側と通信を行うための制御(通信制御)を行います。
キーデバイス:PHYデバイスとは?
ケーブル側のアナログ信号とMAC(MCU/FPGA)側のデジタル信号を相互変換するデバイスです。
- OSI参照モデルのPhysical(物理)層の機能を実現するために必要な回路(デバイス)です。
- 転送速度、送電距離、用途によって、 Ethernet PHYを選定することになります。
- 下図のようにケーブル側の信号や、MACデバイスと呼ばれるMCUやFPGAとの通信<MAC I/F, SMI I/F>には、いろいろな通信モードがあり、PHYデバイスはこれらの通信モードが異なるデータの橋渡しを行うデバイスです。
車載でも使用されるEthernet PHY
Ethernetはノイズの多い車の中でも信頼性が高く、車載用としても規格化されており、広帯域や低遅延などの利点を有しています。
一般的には、Ethernet PHYは、規格によって2ペア(4線)、4ペア(8線)を使用して、トランス、RJ45コネクタを介してケーブルで接続しておりました。最近では、以下のような規格で1ペア(2線)で送受できるSPE(Sigle Pair Ethernet)のPHYが登場しており、小型化や長い距離も伝送できることから注目されています。