ワイヤレス給電のメリットとは?原理や種類・方式など最新情報も併せて解説
ワイヤレス給電とは、電源やワイヤを接続せずに送電する技術です。ワイヤレス給電を活用することで多くのメリットが得られますが、その反面、デメリットも存在します。
本記事では、ワイヤレス給電のメリットや原理、種類・方式について解説します。また、現在のワイヤレス給電事例とともに、今後期待される展望についても併せて解説しているので、参考にしてください。
空間伝送型ワイヤレス電力伝送技術 Cotaとは
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ワイヤレス給電の主な種類と特徴
まずは、ワイヤレス給電の主な種類と、それぞれの特徴について解説します。
電磁波方式(マイクロ波・レーザ)
電磁波方式(マイクロ波・レーザ)は、送電側で電力を電磁波に変換して送り、受電側のアンテナで受診してから整流することで電力を伝送する方式です。
メリット | 数メートル先への長距離伝送や、複数の受電が可能 |
デメリット | 給電効率が上げづらい |
活用例 | IoTセンサ |
電磁波方式(マイクロ波・レーザ)にあたるOssia社の「Cota Technology」について、下記のURL内でご紹介しています。ぜひ、参考にしてください。
電磁誘導方式(磁気結合方式)
電磁誘導方式(磁気結合方式)は、電磁誘導の原理を活用する方式です。給電用コイルに発生した磁界から、受電用コイルに誘導電力を発生させて電力を伝送します。
メリット | 回路が単純で小型・低コスト化が可能 |
高効率の電力送電ができるのでデバイス充電に適している | |
デメリット | 近距離での送電利用に限られる |
送電側と受電側の位置がずれると電力伝送できない | |
活用例 | スマートフォン、電動歯ブラシ |
電磁誘導方式(磁界共鳴方式)
電磁誘導方式(磁界共鳴方式)は、電磁誘導方式(磁気結合方式)と同様に、コイルの磁界を利用する送電方式です。
電磁誘導方式(磁界共鳴方式)では、給電用コイルと受電用コイルに共振コンデンサを加え、LC共振という現象を積極的に利用しています。給電用共振回路と同じ共振周波数を持つ受電用共振回路の共鳴により、受電用コイルに誘導電力を発生させて電力を伝送します。
メリット | 電磁誘導方式(磁気結合方式)に比べて、比較的長距離の伝送が可能 |
位置が少しずれても送電可能 | |
LC共振により効率向上 | |
デメリット | 回路定数がシビア |
活用例 | AGV(自動搬送機)、EV(電気自動車)充電など |
電界結合方式
電界結合方式は、対向する送電用電極と受電用電極で形成したキャパシタに高周波の電気を流すことで、受電側に電気を流す送電方式です。
メリット | 大電力化が容易で給電効率が高い |
給電部の発熱が少ない | |
位置の自由度が高い | |
デメリット | 高電圧が必要 |
送電距離が短く、限定的な使用となる |
ワイヤレス給電4つのメリット
ワイヤレス給電を活用することで、多くのメリットが得られます。ここでは、ワイヤレス給電のメリットを4つ解説します。
1. ケーブルフリー化ができる
ワイヤレス給電によって、ケーブルフリー化が可能になります。ケーブルの抜き差しや配線が不要となるため、ケーブルの断線やコネクタの劣化・消耗もなくなり、メンテナンスフリーの実現が可能です。
また、コネクタがなくなることにより、デザイン性が向上するというメリットもあります。
2. 金属接点がない
金属的な接点が不要なので、水がかかってもショートすることはありません。また、金属粉の発生を抑えられるため、火気厳禁の場所やクリーンルームでも活躍できます。
さらに、接点が劣化するといった症状もないため、半永久的に使用可能です。
3. 非金属を通過した給電ができる
磁界をさえぎらない材質であれば、水中やガラス越しでも給電が可能です。例えば、放射性物質や有毒ガスが発生する立ち入り禁止エリア内の機器に対し、外部から給電できます。
4. 電池切れを心配する必要がなくなる
給電や充電を行う際の作業が不要になるため、電池切れを心配する必要がなくなります。乾電池から切り替えた場合は、廃棄乾電池の処理が不要になり、社会貢献にもつながります。
ワイヤレス給電が抱える課題
ワイヤレス給電は、今後のさらなる活躍が期待される一方で、いくつかの課題も抱えています。
まず大きな課題として、電磁波を放射することによる健康リスクをはじめ、人体への影響が挙げられます。現在多く使用されている周波数帯については、一定の安全性が確認されていますが、判明していないことも多く存在します。
また、無線通信への障害や生体安定性などを考慮した制度の整備も問題の一つです。近年では、2022年5月に電波法施行規則等の一部を改正する省令が施行され、要件を満たす屋内かつ個別の免許の取得を条件として、マイクロ波を利用した無線給電が可能となりました。
ワイヤレス給電自体の性能面では、特に、距離やずれによる給電効率の低下が大きな課題となっています。
関連ブログ:ワイヤレス給電のデメリット・注意点や課題とは?|基本的な仕組みやメリットも解説
ワイヤレス給電の活用事例
ワイヤレス給電は、いくつかの給電方式があり、それぞれの特徴に適した分野で活用されています。ここからは、ワイヤレス給電の活用事例について解説します。
生活家電
ワイヤレス給電の防水性を活かして、電動歯ブラシや電動シェーバーで実用化されています。将来的には、テレビやお掃除ロボットなど、大電力帯のワイヤレス給電への発展が期待されています。
スマートフォン
ワイヤレス給電を活用し、ケーブルと接続せずにスマートフォン本体の充電が可能です。充電のたびに、ケーブル端子をスマートフォンに接続する手間がなくなります。これによって、今まで問題視されてきた端子の故障や不具合、ケーブルの断線など、多くの問題を解決できます。
また、同じ伝送方式の機種であれば、1つの充電器で複数機種の充電も可能となっており、機種ごとに充電ケーブルを用意する必要がありません。
自動搬送ロボット
ワイヤレス給電を利用することで、バッテリを使い切ってから長時間かけて充電する必要がなくなります。1サイクルの消費電力を短時間で補填・充電することで、24時間稼働も可能です。
また、バッテリ交換の手間がないといったメリットもあり、近年増加している無人搬送車にも活用されています。
電気自動車(EV)への充電
駐車場の送電コイルの上に停車するだけで、電気自動車(EV)の充電が可能です。
電気自動車の充電には「磁界共鳴方式」が採用されており、少し位置がずれても効率を落とさずに充電できるというメリットがあります。
充電ケーブルをつなぐといったアクションが不要となり、充電忘れもなくなるため、EV運用の利便性が向上します。
今後期待されるワイヤレス給電技術
現在、多くの媒体などに利用されているワイヤレス給電の市場は、まずます盛り上がりをみせています。市場の活発化に合わせて開発の進められており、今後多くの分野での活躍が期待されています。
宇宙太陽光発電
昼夜や天候に左右されず、地上より単位面積あたり約10倍のエネルギを安定して受けられる技術として、宇宙太陽光発電が注目されています。
宇宙太陽光発電は、地上36,000km上空の静止衛星軌道上で集約した太陽エネルギをレーザやマイクロ波で地上に送り、地上で電力に変換します。
EVへの走行中給電
駐車場に駐車することで電気自動車(EV)に充電するシステムがすでに利用されていますが、今後は、走行中の給電を目標に開発が進んでいます。
具体的には、電気自動車(EV)の航続距離の短さを解決するため、道路に設置した設備から走行中にワイヤレス給電する方法です。
試算では、交差点手前30m区間に給電設備を設置すると、走行中の断続的な給電が可能になり、バッテリの充電量を維持できるとされています。
まとめ
従来の物理的な給電方法に代わって、電源やワイヤを接続せずに送電するワイヤレス給電が注目を浴びています。
ワイヤレス給電は、スマートフォンやエレクトロニクス機器、電気自動車、医療機器など、さまざまな分野で活用され、ますます開発が盛んになっている技術です。
従来の給電方式からワイヤレス給電に変換することで、ケーブルフリー、非金属越しの給電可能などのメリットがあります。一方で、電磁波による人体の影響や新技術に合わせた制度の整備などが課題とされています。
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電磁波方式マイクロ波空間伝送型ワイヤレス電力伝送技術を活用した多くの製品を手掛けており、エレクトロニクス商社としての知見と経験を活かして、さまざまなご要望・課題の解決に努めています。