第6回：「コーヒーブレイク : デシベルから真数への暗算テクニック」

WPT と周波数の話がまだ途中ではありますが、いったん話題を変えてデシベルから真数への暗算テクニックをご紹介します。

WPT は無線なのでデシベルで考えるのが便利ですが、最終的に欲しい情報は真数の電力値です。
よって、デシベルから真数への変換が必要ですが、いちいち電卓をたたくのは面倒です。
これを暗算で何とかしたいなと思って調べてみましたが、情報があふれる現代においても良い方法は見つかりません。
3dB = 2 倍を知っていると±1.5dB (3dB Step) の精度で暗算できますが、もう少し精度を上げたいところです。
そんな中、日々の空き時間に妄想している中で、±0.5dB (1dB Step) の精度で暗算できる良い方法を編み出しました。
それを今回ご紹介したいと思います。

まず、閃いたアイデアを以下に示します。九九の3の段の結果を順に示します。
03
06
09
12
15
18
21
24
27
これの一桁目に注目して並び替えてみます。
21
12
03
24
15
06
27
18
09
なんと、九九の 3 の段は一桁目に 1 ～ 9 のすべてを含んでいます。
(他に 7 の段と 9 の段も一桁目に 1 ～ 9 のすべてを含んでいます。)
これと10の倍数を組み合わせるとすべての整数を表現することができます。

以下に暗算例を示します。
(問1) 1dBm は何mW ?
(答1 : 3dB Step) 0dBm と 3dBm の間だから 1mW ～ 2mW の間
(答1 : 1dB Step) 1dBm = 21dBm – 20dBm = (3×7)dBm – (2×10)dBm = 2^7/10^2 mW = 128/100mW = 1.28mW
(答1 : 電卓) 1dBm = 1.2589…mW ≈ 1.26mW

(問2) 42dBm は何mW?
(答2 : 3dB Step) 40dBm と 43dBm の間だから 10W ～ 20W の間
(答2 : 1dB Step) 42dBm = 12dBm + 30dBm = (3×4)dBm + (3×10)dBm = 2^4×10^3 mW = 16×1000mW = 16W
(答2 : 電卓) 42dBm = 15.8489…W ≈ 16W

(問3) 920MHz, EIRP=36dBm, 2m, 受電アンテナ利得(GRx)=1dBi における受電電力(prx)は何mW?
(答3 : 前提) PRx = EIRP – Lfs + GRx = 36dBm – (32 + 6)dB + 1dBi = -1dBm (PRx = 受電電力[dBm], Lfs = 自由空間損失[dB])
(答3 : 3dB Step) -3dBm と 0dBm の間だから 0.5mW ～ 1W の間
(答3 : 1dB Step) -1dBm = 9dBm – 10dBm = (3×3)dBm – 10dBm = 2^3/10^1 mW = 8/10mW = 0.8mW
(答3 : 電卓) -1dBm = 0.7943…mW ≈ 0.8mW

いかがでしょう？
これぐらいの計算であれば頭の中で暗算できそうな気がしませんか？
この方法であれば、整数のデシベル値であれば±0.5dBの精度で暗算することができます。
皆様のご参考となれば幸いです。

次回は WPT と周波数の話に戻りたいと思います。

第一級陸上無線技術士
Expert
勝永　浩史