商品基礎情報
製品概要
自動車、航空宇宙、精密メカトロニクス機器の開発現場において、NVH(騒音・振動)対策や実験モード解析(EMA)、伝達経路解析(TPA)の重要性は年々高まっています。設計品質の向上やCAEモデルのコリレーション(実測値との整合検証)を行うためには、高精度な周波数応答関数(FRF)や構造伝達関数の取得が不可欠です。
しかし、実際の試験現場では「狭小部で加振器を設置するクリアランスが確保できない」「外部治具やスティンガーの軸合わせ(アライメント)に多大な時間を要する」「インパルスハンマー打振では打点や角度のばらつき、複数チップ交換の手間が生じる」といったセットアップ上の課題が日常的に発生しています。さらに、加振器自体の質量や剛性が供試体に影響を与え、本来の動特性を歪めてしまう「質量付加効果(マスローディング)」も無視できない問題です。
本記事では、これらの構造加振におけるトレードオフを解消するソリューションとして、ベルギーQsources社が開発した一体型小型加振器「Qwis(Wide-Range Integral Shaker)」の技術的優位性と、エンジニアにもたらす具体的な設計・計測上のベネフィットを技術的視点から詳しく解説します。
製品仕様
- コア周波数範囲:25 Hz 〜 2,400 Hz(拡張周波数範囲:10 Hz 〜 3,000 Hz / 高重量対象時は最大3,150 Hzまで対応)
- 測定対象物への付加質量:わずか 5 g(推奨周波数範囲内の平均連成質量)
- 最大加振力(正弦波 @27 Hz):56 N(peak-to-peak)
- ブロードバンド・ランダム加振力:10 N RMS(コア周波数帯域、ピンクノイズ加振時)
- 最大ストローク:9 mm(peak-to-peak)
- 内部摩擦/非線形性:最大 1 N 以下
- センサー部:高分解能IEPE力センサー内蔵(公称感度5 mV/N、温度範囲10〜60℃において安定度0.5 dB以内)
- オプション:同軸インライン高分解能加速度センサーモジュール
- 外形寸法・重量:直径 29 mm × 全長 75 mm、本体重量 290 g
- 取付フットプリント:直径最大 18 mm(対象物への接着プレート方式、ねじ込み結合)
- 動作環境温度:10 ℃ 〜 45 ℃
- 適用対象物重量レンジ:標準 2 kg 〜 4,000 kg(試験条件・対象剛性により最大10,000 kgまで適用可能)
製品ラインアップ表
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モデル名 / 構成 |
コア周波数範囲 |
最大加振力 (Sine pk-pk) |
対象物への付加質量 |
内蔵センサー仕様 |
データシート |
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Qwis 標準モデル |
25 Hz 〜 2,400 Hz (拡張: 10〜3,000 Hz) |
56 N (@27 Hz) |
5 g |
高分解能 IEPE 力センサー内蔵 (3.5 mV/N) |
[データシートへのリンク] |
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Qwis 加速度センサー内蔵オプション |
25 Hz 〜 2,400 Hz (拡張: 10〜3,000 Hz) |
56 N (@27 Hz) |
5 g(+センサーモジュール部) |
高分解能 IEPE 力センサー + 同軸インライン加速度センサー |
[データシートへのリンク] |
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専用パワーアンプ Qam (別売周辺機器) |
広帯域対応 |
推奨連続出力 200 W (@4Ω load) |
— |
加振器保護機能内蔵、30V sspk 安定ピーク電圧出力 |
[アンプ仕様書へのリンク] |
Qwisの特徴
特長1: 特許取得の自己懸架・自己調芯機構による、狭小部・任意角度での即時加振
Qwisは、特許技術である独自のデカップリングサスペンションシステムとフローティングガイダンス構造を採用しています。外部の支持スタンドや治具、デリケートなスティンガー(ピアノ線・ロッド)を一切必要とせず、加振器自身が自立・調芯を行います。水平・垂直・斜めなど、360度どのような傾斜角度でも特性を損なうことなく安定して設置・加振が可能です。 利点: 従来の加振器ではアプローチが困難だったホイールハブ内部、エンジンルーム、ギアボックス近傍、航空機胴体などの狭小スペースに直接取り付けて加振できます。スティンガーのアライメント調整にかかる膨大な工数と調整ミスによる再測定リスクを完全に排除します。
特長2: わずか5gの超低付加質量とIEPE力センサーの一体化による高精度FRF計測
直径29mm・全長75mmの超小型ボディでありながら、測定対象物に連成する質量(Coupled mass)をわずか5gに抑制。さらに高分解能なIEPE力センサーを内部に直列配置しているため、加振点そのものの入力荷重を高精度に直接検出します。 利点: 加振器自体の重みによる質量負荷効果(マスローディング)や構造剛性への影響を極限まで排除。対象物本来の固有振動数や減衰比を歪めることなく計測できるため、CAEシミュレーションモデルとのコリレーション精度が劇的に向上し、手戻りのないNVH設計を支援します。
特長3: 接着プレート方式による多点加振の劇的な作業短縮と再現性の確保
測定対象にあらかじめ専用のアドヒージョンプレート(接着マウント)を貼り付けておくことで、加振器本体をねじ込むだけで確実・強固に固定できます。加振ポイントの移動は、本体を取り外して別のプレートへねじ込むだけで完了します。 利点: インパクトハンマー試験で発生しがちな「打撃角度のズレ」「作業者のスキル差による打撃力のばらつき」「ダブルヒット」を解消。多点加振を要するTPA(伝達経路解析)や実験モーダル解析において、試験作業者(エンジニア)が変わっても常に同一で高再現性なデータを短時間で効率的に収集できます。
使用アプリケーション
Qwisの「超小型・自己懸架・広帯域加振」という特性は、従来の加振器ではアプローチが困難であった様々な先端エンジニアリング領域で価値を発揮します。
- 自動車・モビリティ(車両NVH・伝達経路解析 TPA): 車載状態のハブベアリング、サスペンションナックル、ドライブシャフト、サブフレーム、ステアリングコラム周辺など、三脚治具が物理的に入らない狭小スペースでの直打ち加振を実現します。ロードノイズやドライブトレイン起因の車内騒音伝達経路を高精度に同定できます。
- 航空宇宙・防衛(機体構造・衛星・推進系コンポーネント): 航空機の胴体(フューズレージ)内部、ロケット・人工衛星の構造体、エンジンパイロンなどの実験モード解析(EMA)に最適です。薄板パネルや軽量複合材に対しても、わずか5 gの結合質量により構造本来のモード形状・減衰比を歪めることなく計測できます。
- ドローン・小型モビリティ・精密メカトロニクス: 小型化が進む電動モビリティやドローンのフレーム、白物家電のモーターマウント部など、軽量かつ複雑なリブ構造を持つ製品の振動・音響評価において、設置自由度の高さを活かした効率的なデータ取得を支援します。
- CAE・シミュレーションモデルのコリレーション: 有限要素法(FEM)による構造解析モデルのキャリブレーションには、境界条件が明確で再現性の高いFRFデータが求められます。Qwisは作業者の手作業による誤差を排除し、シミュレーション部門と実験部門の間で信頼性の高い比較検証を可能にします。
よくある質問FAQ
Q1: 従来の小型加振器(スティンガー方式)やインパクトハンマー試験とは何が違いますか?
A: 主な違いは「設置の手間」「マスローディング(質量負荷)」「測定の再現性」です。 従来の加振器では外部治具やスタンドで本体を固定し、スティンガーの軸合わせ(アライメント)に長時間を要していました。一方、インパクトハンマーは手軽ですが、打撃角度のブレや打撃力のばらつき、ダブルヒットによるエラーが課題でした。Qwisは対象物に直接ねじ込む自己懸架構造のため治具が不要で、連成質量もわずか5gに抑えられているため、ハンマー並みの手軽さと加振器ならではの定常的で高S/N比な加振を両立します。
Q2: 「コア周波数範囲」と「拡張周波数範囲」の違いは何ですか?どのように使い分けるべきですか?
A:
- コア周波数範囲(25 Hz 〜 2,400 Hz): 最も高い加振力レベルと高精度が保証される設計帯域です。厳密なモーダル解析やCAEモデルとのコリレーションなど、最高精度のFRF取得が求められる試験ではこの範囲を推奨します。
- 拡張周波数範囲(10 Hz 〜 3,000 Hz / 条件により最大3,150 Hz): 200 kgを超える重量対象物での低周波加振や、小型部品のトラブルシューティング、狭小空間での伝達経路探索など、利便性を優先して広帯域をスキャンしたい場合に適しています。
Q3: 測定対象物への取り付け方法と、多点加振の進め方を教えてください。
A: 直径最大18 mmの専用接着プレート(アドヒージョンプレート)を測定対象物の加振点に貼付し、Qwis本体先端のネジ部をねじ込んで固定します。あらかじめ複数の加振点にプレートを配置しておけば、加振器本体を外して別のプレートにねじ込むだけで数秒で加振点を変更できます。360度どのような傾斜角でも自立・調芯するため、治具の再セッティングは不要です。
Q4: どの程度の重量の製品・構造体に加振できますか?
A: 標準的な推奨対象物重量は 2 kg 〜 4,000 kg です。剛性や試験条件によって最大 10,000 kg(10トン)クラスの大型構造物(完成車、大型航空機胴体、衛星構造体など)まで対応可能です。小型メカトロニクス部品から実車全体まで、同一の加振器で加振点応答を取得できます。
Q5: 既存の計測システム(FFTアナライザ・データロガー)や他社製アンプと接続できますか?
A:
- センサー信号: 内蔵力センサー(およびオプションのインライン加速度センサー)は標準的な IEPE(ICP互換)仕様(定電流駆動)です。市販の主要な振動騒音アナライザやデータアクイジションシステムに直接入力できます。
- 駆動用アンプ: 最良の性能と安全性(過電流・熱保護)を確保するため、専用パワーアンプ Qsources Qam(推奨連続出力200W @4Ω)のご使用を推奨します。他社製アンプを使用する場合は、加振器保護モジュールの併用が必要です。