現場で役立つ 過電流保護機能の基本と動作

 Texas Instruments(以下、TI社と表記)の電源IC TPS62140を使用して保護機能の1つでもある、過電流保護機能を深掘りします。

過電流保護機能とは?

  • 過電流保護機能とは、“過電流による電源ICの破壊を避けるための保護機能”
    と言うのが皆さんもご存知の内容かと思います。
    しかし、実際のデータシートでは電源ICの保護機能動作について、文章で記載はされていますが、保護機能動作時の波形や出力電圧と出力電流の相関図は記載されていないのが現実です。
  • これでは「実際に保護機能が働いたときに電源ICはどのように動くの?」と疑問に思われる方も大勢いると思います。
    そこで今回は、TI社の電源IC評価ボード TPS62140EVM-505(降圧コンバータ)を使用して、過電流保護機能の動作について深掘りします。

TPS62140の特長

● TPS62140は、同期整流型降圧型コンバーターです。

  • 特長
    • 入力電圧範囲:3〜17[V]
    • 最大出力電流:2[A]
    • スイッチング周波数:1250〜2500[kHz]
    • シャットダウン時静止電流:17[µA]
    • DCS制御

デバイス詳細については下記リンク先よりご覧いただけます。

TPS62140EVM-505の特長

● TPS62140EVM-505はTPS62140 降圧コンバータ電源ICの評価キットになっており、3つのメリットがあります。

  • メリット1
    • 評価キットにはTPS62140を動作させるのに必要な周辺部品が実装されており、安定化電源と電子負荷を接続するだけで、すぐに測定を開始できます。
  • メリット2
    • 実際のアプリケーションで発生する定常状態、過渡状態などの様々な条件下で測定・評価をすることができます。
  • メリット3
    • ユーザーズ・ガイドも用意されており、それを見ながら使用条件に合わせて回路定数を変更して評価ができます。

  • TPS62140EVM-505の仕様動作条件
    • 入力電圧範囲:3.7~17[V]
    • 出力設定電圧:3.327[V]
    • 最大出力電流:2[A]
    • スイッチング周波数:1250 or 2500[kHz]

TPS62140EVM-505で評価

● 実際にTPS62140EVM-505を評価します。

  • 今回測定する項目
    • 過電流保護機能

動作させるTPS62140の回路図は以下の通りです。
以下の測定環境で評価します。
実際の測定の様子

  • TPS62140のデータシートにある過電流保護の項目には下記の①~⑤が記載されていますが、この内容を評価ボードを使用して波形で確認してみます。
  • TPS62140データシート(記載内容抜粋)
    • TPS6214xデバイスは、高負荷および短絡事象から保護されています。
      ①短絡(VOUTが0.5[V]未満になる)が検出されると、電流制限が1.6 [A] に低下します。
      ②出力電圧が0.5[V]以上に上昇すると、デバイスは通常の動作で再び動作します。
      ③重負荷では、電流制限によって最大出力電流が決まり、電流制限に達するとハイサイドFETがオフになります。
      ④シュートスルー電流を回避すると、ローサイドFETがオンになりインダクタ電流が減少します。ローサイド電流制限は標準で2.4[A]です。
      ⑤ローサイドFETの電流がローサイド電流制限スレッショルドを下回った場合にのみ、ハイサイドFETが再びオンします。
  • 評価内容
    • この①~⑤について実際に評価ボードを使用して波形で確認してみましょう。

    TPS62140EVM-505の測定波形

    通常動作時

    最初に出力電流が2.5[A]で設定している時の通常動作時の波形を見てみます。
    波形から安定して出力されていることが確認できます。

    各項目の説明の前に、過電流保護機能が働いたときの全体の波形を見てみます。
    過電流保護が働くと出力電流に対する電流制限がかかります。結果、出力電流が一定になるため出力電圧が下がっていることが確認できます。この波形をイメージしながら各項目を確認していくと、過電流保護機能をより理解しやすくなります。

    過電流保護動作①

    ①短絡(VOUTが0.5[V]未満になる)が検出されると、電流制限は1.6[A]に低下します。

    • 測定波形から
      • 出力電圧(VOUT)が0.5[V]未満になると出力電流が1.6[A]に制限がかかっていることが確認できます。

    過電流保護動作②

    ②出力電圧が0.5[V]以上に上昇すると、デバイスは通常の動作で再び動作します。

    • 測定波形から
      • 出力電圧が0.5[V]以上になると再び動作していることが確認できます。

    過電流保護動作③

    ③過負荷では電流制限によって最大出力電流が決まり、電流制限に達するとハイサイドFETがオフになります。

    • 測定波形から
      • “ハイサイドFETのオフとは”スイッチを止める動作では無く、スイッチング周波数を下げて、オン時間を短くする動作のことになります。このハイサイドFETのオフする動作を波形で確認できました。最終的に出力電圧が0.5[V]以下になると、オン時間が100[ns]まで短くなることが確認できます。

    過電流保護動作④

    ④シュートスルー電流を回避すると、ローサイドFETがオンになりインダクタ電流が減少します。
    ローサイド電流制限は標準で2.4[A]です。

    • 測定波形から
      • ローサイドFETのオン時間が長く(400[ns] → 1840[ns])なり、インダクタ電流が減少していることが確認できます。

    過電流保護動作⑤

    ⑤ローサイドFETの電流がローサイド電流制限スレッショルドを下回った場合にのみ、ハイサイドFETが再びオンします。

    • 測定波形から
      • “ハイサイドFETがオン”とは通常の動作のことになります。出力電流を2.88[A]から1.6[A]まで下げた時にローサイド電流制限の2.4[A]を下回り、通常の動作に戻ることが確認できます。

    TPS62140EVM-505の測定

    出力電流と出力電圧の相関図

    • 最後に出力電流を変化させた時の出力電圧をグラフにしてみました。
      1. 出力電流が0[A]~2.75[A]までは通常動作になっています。
      2. 出力電流が2.8[A]~2.87[A]までは過電流保護動作になっています。
        過電流保護動作が働き、出力電圧が低下していることが確認できます。
      3. 出力電流が2.88[A]以上になった時に出力電圧が0.5[V]以下になり、出力電流を1.6[A]に電流制限していることが確認できます。

    ※ページ内の測定結果は参考値であり、電気特性を保証するものではありません。

    担当エンジニアからの一言

    今回はTI社のTPS62140EVM-505を動かして、保護機能の1つでもある過電流保護の動作を確認しました。この実験で保護機能動作時の波形や出力電圧と出力電流の相関が確認できたと思います。

    TPS62140は過電流保護機能が働くとMOSFETを最小オン時間まで短くしてスイッチングをし続けます。また、負荷電流が制限しきい値を下回ると自動復帰する動作をする仕様になっているため、過電流保護が働いても電源ICを止めることなく自動で復帰することができます。

    そのため一度設置すると電源の再投入処理が難しいアプリケーションには、最適な電源ICの一つですので、ぜひご検討ください。

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