現場で役立つ 過電流保護機能の基本と動作

Monolithic Power Systems (以下、MPS社と表記)の電源IC MP2333Cを使用して保護機能の1つでもある過電流保護機能動作を実際に波形を測定しながら、動作について深掘りします。

過電流保護機能とは?

  • 過電流保護機能とは、“過電流による電源ICの破壊を避けるための保護機能”
    と言うのが皆さんもご存知の内容かと思います。
    しかし、実際のデータシートでは電源ICの保護機能動作について、文章で記載はされていますが、保護機能動作時の波形や出力電圧と出力電流の相関図は記載されていないのが現実です。
  • これでは「実際に保護機能が働いたときに電源ICはどのように動くの?」と疑問に思われる方も大勢いると思います。
    そこで今回は、MPS社の電源IC評価ボード MP2333C-TL-00A(降圧コンバータ)を使用して、過電流保護機能の動作について深掘りします。

MP2333Cの特長

MP2333Cは、同期整流型降圧型コンバータで、3つのメリットがあります。

  1. スイッチング周波数が固定動作となっているので、負荷変動の応答性に早く、ノイズ対策が容易です。
  2. 過電流保護、低電圧保護、サーマルシャットダウンなどの、デバイスを保護する機能が備わっています。
  3. ソフトスタート機能をユーザが設定することが可能です。

すぐに評価を始められる評価ボード

すぐに評価が始められる評価ボードと無償サンプルの提供が可能です。
下記の申し込みフォームより、「無償サンプル希望」とお問い合わせください。

EV2333C-TL-00Aで評価

実際にEV2333C-TL-00Aを動かして評価します。

今回、測定する項目
●過電流保護機能
 動作させるEV2333C-TL-00Aの回路図は以下の通りです。

MP2333Cのデータシート (記載内容抜粋)

  • MP2333Cは、過電流および短絡からICを保護しています。
    ①. Valley Limit コントロールで過電流を検出しています。
    ②. 過電流検出後はヒカップモードで保護されます。
    ③. 過電流保護機能が働くと、Power Good (PG)ピンが LOW になります。

Valley Limit コントロール

  • Valley Limit コントロールでは、過電流検出をローサイド側のFETで行います。インダクタ電流の谷にあたる部分が電流制限値を超えると過電流保護機能が働きます。
    ピーク電流モードの主な欠点であるブランキング時間がValley Limitコントロールでは生じません。
    そのため、スイッチング動作に伴うオーバーシュートによって生じる過電流についても、監視を行うことができます。ただし、過電流を検出後の動作はデバイス毎に異なります。

ヒカップモード

  • 短絡や過電流を検出すると出力を停止し、その後、自動的に再起動します。
    この動作は、過電流から復帰するまで自動的に繰り返されます。
    過電流状態が続くと、定期的にデバイスをOFFにすることでデバイスが高温になることを防ぐことができます。
    この方式の最大のメリットは、過電流状態が解消された際に自動で通常時の動作に移行するため、外部からの操作が不要な点にあります。

動作a  デバイスを再起動することで、過電流状態か通常状態か判断します。
    過電流状態であれば再び過電流保護を繰り返します。
動作b  過電流状態から復旧されれば通常動作に移行します。

Power Good(PG)

  • PGとは、出力電圧が内部の基準電圧に対して、正常な範囲にあるかを示します。
    MP2333Cでは、ソフトスタートが終了し、出力電圧が内部基準電圧と比較して92%より高く、120%より低い場合に、PG信号がHIGHになります。ソフトスタート終了後、出力電圧が内部基準電圧の87%を下回ると、PG信号はLOWになります。
    また、出力電圧が内部の基準電圧の120%を超えると、PGはLOWに切り替えられます。
    出力電圧が内部基準電圧の107%を下回ると、PG信号は再びHIGHに立ち上がります。
    ENがLOW、VINがLOW、過電流保護(OCP)、または過熱保護(OTP)がトリガーされると、PG出力がLOWになります。

評価内容

この3つの動作について、実際に評価ボードを使用して、波形で確認します。以下のような測定環境で、評価します。

実際の測定の様子

MP2333C-TL00Aの測定波形

通常動作時

出力電流が3Aで設定している時の通常動作時の波形です。
波形から安定して出力されていることが確認できます。

過電流保護動作1

過電流が検出されると、過電流保護が働きます。

  • 測定波形から
    • 過電流保護が働くと電流制限が生じます。

過電流保護動作2

Valley Limitコントロール

  • 測定波形から
    • インダクタ電流の谷が、4Aを超えると過電流保護が働くことが分かります。

過電流保護動作3

ヒカップモードの動作

  • 測定波形から
    • インダクタ電流から、デバイスを再起動するまでの間は、ハイサイド側のFETがOFFになっていることが分かります。
    • コンデンサの充放電に合わせて、デバイスを再起動しています。
    • 再起動のタイミングでインダクタ電流を監視し、復旧するか判断しています。

過電流保護動作4

ヒカップモードから復帰する際の動作

  • 測定波形から
    • ヒカップモードから通常動作に移行する際に、ソフトスタートしていることが分かります。
    • 過電流保護から回復するタイミングは、ヒカップモードの周期と同じです。

過電流保護動作5

PG動作

  • 測定波形から
    • 出力電圧が低下した際に、PG信号がLOWになっていることが分かります。
    • 過電流保護時にはLOWのままで、ソフトスタート後にHIGHになっています。

結果のまとめ

最後に下記の波形から、過電流保護動作時の出力電圧と出力電流をグラフにします。

  1. 出力電流が0 [A] ~4.6 [A] までは通常動作になっています。
  2. 出力電流が5.04 [A]を超えると過電流保護動作になっています。
    過電流保護動作が働き、出力電圧が低下していることが確認できます。
  3. 出力電流が4.88 [A] 以上になった時に出力電圧が0 [V]付近まで落ち込みます。

※ページ内の測定結果は参考値であり、電気特性を保証するものではありません。

担当エンジニアからの一言

今回はMPS社のMP2333C-TL00Aを動かして、保護機能の1つでもある過電流保護の動作を確認しました。この実験で、保護機能時の動作と波形が確認できました。
MP2333Cは、過電流検出をローサイド側のFETで行います。
そのため、ピーク電流で検出するよりも、リップル電流の影響が少なくなります。
また、ヒカップモードを採用しているため、負荷電流が制限しきい値を下回ると自動復帰します。
実際に過電流保護機能が働くと、先に出力電圧を制限してから出力電流を制限しますので、過電流保護が働いてもある程度は電流を供給できます。
PGピンも兼ね備えているため、外部から過電流保護が働いたか確認できます。
そのため、一度設置すると電源の再投入処理が難しいアプリケーションには、最適な電源ICの一つですので、ぜひご検討ください。

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