MPS 繰り返し使える電子ヒューズ(E-Fuse) MP5016
回路保護対策にはヒューズやポリスイッチが多く使われてきましたが、これらの部品を上回るスペックを持つE-Fuseをご存知でしょうか。
今回はMonolithic Power Systems(以下、MPS社と表記)の製品を例にE-Fuseの特長と機能をご紹介します。
E-Fuseとは?
E-Fuse(電子ヒューズ)とは、従来のガラス管ヒューズや復帰型のポリスイッチで行ってきた過電流の遮断を半導体スイッチに置き換え、さらに高速、高精度な保護を可能にしたICです。また、過電流保護のみでなく、過電圧・低電圧保護、サーマルシャットダウンなどの機能も持っており、回路保護に対する様々なご要望を1チップで実現することができます。
E-Fuseと従来部品との比較
E-Fuseと従来部品のガラス管ヒューズやポリスイッチを比較した表が下表です。
表の通り、E-Fuseは高速・高精度・豊富な保護機能を持っています。
自動復帰による交換作業の削減
- ガラス管ヒューズは保護機能が働いた際に、部品内部のヒューズエレメントを切断して回路を遮断します。そのため、保護機能が働く度に新しいヒューズに交換する必要があるため、コストや手間がかかります。
- E-Fuseは内部のFETをON/OFFして回路を遮断するため、保護機能が働いても部品の交換は必要ありません。
高速回路遮断
- ポリスイッチは温度がある値以上になると抵抗値が急激に上昇し、電流値を抑制(トリップ現象)します。このトリップ現象が生じる際の電流値を「トリップ電流」と定義しています。トリップ電流を超えたとしても、約10〜100ms程の間は、抵抗値が上昇し回路遮断するまで電流が流れ続けます。
- E-Fuseは過電流(ISCP)が流れると、約1usの遅れでMOSFETをオフするため、ポリスイッチと比較して1/10000と、極めて短い時間で回路を遮断できます。E-Fuseは短時間で回路を遮断するため、後段への影響を最小限に抑えることができます。
高精度の電流検出
- ガラス管ヒューズやポリスイッチは温度上昇によって素子を切断したり、抵抗値を上昇させるためデータシートには公称値のみを記載している場合がほとんどです。
- E-Fuseは電流検出しきい値のMin,Max値を規定しています。検出精度も±数%であるため、極めて高精度な過電流検出が可能です。また、過電流しきい値を外部抵抗で決定できたりなど、1つのICで様々な回路に使用できます。
豊富な機能
- 過電流保護以外に、過電圧保護や低電圧保護機能をディスクリート回路で実現しようとすると、コンデンサや抵抗など、多くの部品が必要です。また、部品点数の多さから回路規模も大きくなります。
- E-Fuseは豊富な保護機能をワンパッケージに収めているため、回路構成を大幅に簡略化でき、部品点数の削減・基板面積の縮小が可能です。
MP5016シリーズの特長
E-Fuse製品であるMP5016/MP5016H/MP5016-Lは豊富な保護機能を有しており、アプリケーションの用途に合わせて、保護方法を選択できます。
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E-Fuseの機能説明
過電流遮断(SCP)・電流制限(OCP)
- MP5016は2次側回路の短絡等で、ILIMIT端子で決定したLIMIT電流が流れた際に、内部MOSFETをオフして回路を一度遮断します。
- その後、電流制限(OCP)値で電流制限して再起動します。MPS社のE-Fuseは電流制限後の挙動について[ラッチオフ方式]と[リトライ方式]の2つがあります。
過電圧保護(OVP)
・E-Fuseの過電圧保護は入力電圧が過大な場合に、後段の設定電圧以上にならないように出力電圧をクランプし、後段回路を保護します。
・MP5016/MP5016H/MP5016-LではMODE端子を下記のように設定し、クランプ電圧を決めます。
①GNDに接続
②VCCに接続
③抵抗を介してGNDに接続
(③の場合、3.5〜20Vの範囲で設定が可能です。)
逆流防止(RCP)
・後段回路から入力に向かって逆流するのを防ぐ保護回路です。
・MP5016/MP5016H/MP5016-Lでは外付けFETをドライブするGATE端子があり、逆流を検出した場合に外付けFETをOFFすることで逆流を防止します。
・低電圧/Enable=Low/過熱シャットダウン時で、逆流防止が有効です。また、MP5016/MP5016H/MP5016-Lは吸い込み電流1.3mAで高速に外付けFETをOFFできます。
突入電流防止
・出力電圧立ち上げ時のスルーレートを調整することで、容量負荷に対する突入電流を緩和します。
・MP5016/MP5016H/MP5016-LではMODE端子か外付けコンデンサにて決定できます。
・外付けコンデンサで設定する場合でもMODE端子の設定によってK1の値が変化します。
その他機能
- 入力電圧低下監視(UVP/UVLO)
- 入力電圧が低下し、ICの誤動作を防止するための保護機能です。
- 過熱保護
- ICの温度が上昇し、破損・発火を防ぐための保護機能です。
- UL規格
- 国際安全規格を取得した製品も準備されており、UL2367やIEC60950-1を取得した製品があります。
担当エンジニアからの一言
保護回路は製品の安全を守るためにも、重要なICのひとつです。E-Fuseは従来部品やディスクリート回路よりも様々なメリットがあり、回路の小型化にも貢献します。回路保護には是非、MPS社のE-Fuse製品をご検討いただければ幸いです。
MPS社のE-Fuse製品のラインアップは、こちらをご確認ください。