できるMPLAB® X IDE [開発環境準備編]


Microchip Technology 社(以下、Microchip社と表記)のMCU 製品を使用する場合に必要な統合開発環境、MPLAB X IDE について説明します。
開発環境準備編では開発環境について説明します。
開発環境で行うこと
MCU や MPU を動作させるためは、次のような作業が必要です。
① 実行したい動作をプログラムとして記述します。
② プログラムを実行コードに変換(コンパイル・リンク)します。
③ 実行コードを読める場所(メモリ)に書き込みます。
④ 命令通りに実行できているか確認(デバッグ)します。
これらの一連の作業を行えるのが統合開発環境(Integrated Development Environment、略してIDE)と呼ばれます。
MPLAB X IDE
Microchip社は、統合開発環境として MPLAB X IDE を提供しています。
MPLAB X IDE は、Microchip社の提供するマイコン(MCU)・プロセッサ(MPU)製品に対して以下のような機能をサポートしています。
- プロジェクト管理
- プログラム入力・編集
- コンパイル・リンク
- デバッガやシミュレータによるデバッグ支援
- 様々なプラグインによる機能拡張
MPLAB X IDE は以下のマイコン製品に対応しています。
プログラマ/デバッガ
プログラムの実行にはシミュレータか、MCU/MPU が搭載された基板と通信するプログラマ/デバッガを使用します。
MPLAB X IDE に対応しているプログラマ / デバッガ
MPLAB® ICD 5
MPLAB® PICkit™ 5
MPLAB® PICkit™ 5
- PCレスでの書き込みに対応
- MPLAB PTG モバイルアプリによる Programmer-to-Go(PTG)サポート
- バランスの良いコストパフォーマンス
MPLAB® ICD 4
MPLAB® PICkit™ 4
MPLAB® Snap
MPLAB® ICD 4
Debugger Adapter Board
- プログラマ / デバッガと組み合わせて使⽤
- JTAG 接続を含め各種接続用のコネクタを用意
- リボンケーブルでターゲットと接続可能
プログラマ/デバッガの機能比較
MPLAB Snap | MPLAB PICkit 4 | MPLAB ICD 4 | MPLAB PICkit 5 | MPLAB ICD 5 | |
対応MCU/MPU※1 | PIC, AVR, dsPIC, SAM | PIC, AVR, dsPIC, SAM | PIC, dsPIC, SAM | PIC, AVR, dsPIC, SAM | PIC, AVR, dsPIC, SAM |
プログラマ/デバッガ 電源 |
USB | USB | USB | USB | USB |
ターゲットへの電源供給 | No | Yes – 50 mA | Yes – 1A※2 | Yes – 150 mA | Yes – 1A※3 |
設定可能な書き込み電圧 | No | Yes | Yes | Yes | Yes |
設定可能な動作電圧 | No | Yes | Yes | Yes | Yes |
ターゲットからの 引き込み電流 |
<1 mA | <1 mA | <1 mA | <2 mA | <2 mA |
過電圧・過電流保護 | OV only | Yes, SW | Yes, HW | Yes, SW | Yes, HW |
ハードウェア ブレークポイント |
Simple | Simple | Complex | Simple | Complex |
ソフトウェア ブレークポイント |
Yes | Yes | Yes | Yes | |
ターゲット用メモリ | No | Micro SD Card | No | Micro SD Card | No |
仮想シリアルポート | Yes | Yes | Yes | Yes | Yes |
量産書き込み対応 | No | Yes | Yes | Yes | Yes |
※1. 詳細はこちらの Documentation タブにある Device Support List を参照してください。
※2.ターゲットへの1A供給は外部電源を接続する必要があります。
※3. USB Type-C コネクタを備えたPCを使用することで、最大 1A をターゲットに供給できます。
評価基板
Microchip社の殆どの評価基板にオンボードデバッガが搭載されており、評価基板を PC に接続するだけで、プログラムの書き込み、実行、デバッグを行うことができます。
PIC16F18446 Curiosity Nano
PIC16F18446 Curiosity Nano
- PIC16F18446 搭載
- USB 接続で動作
- オンボードデバッガ
- 仮想シリアルポート
- LED、スイッチ搭載
- ブレッドボードに対応した拡張端子
まとめ
今回は開発環境編として統合開発環境についての概要、プログラマ/デバッガ、および、評価基板について説明しました。
『できるMPLABシリーズ』で使用する PIC16F18446 Curiosity Nano は搭載されているマイコンのペリフェラルが多いため扱いやすく、また、PC に MPLAB X IDE をインストールして USB ケーブルを接続すると自動的に使用できるようになるので、最初の1台としてお勧めの評価基板です。一方プログラマ / デバッガとしては、 MPLAB PICkit 4 が機能とコストのバランスに優れていますので、どれがいいか迷ったらこちらを選んでおくと良いでしょう。
次回は MPLAB X IDE のインストールについて詳しく説明します。