高速シリアルNOR/RAMインターフェースのご紹介


シリアルROM/RAMインターフェースの高速化
従来のNOR FlashやEEPROMでは、SPIやI2Cなどのシリアルインターフェースを使用するのが一般的です。非常に汎用的なインターフェースのため多くのマイコンやプロセッサで使用することができる一方、データ幅としては1bitであるため(SPIは全二重通信)、データ転送帯域が小さいことがデメリットとして挙げられます。例えば、これらのインターフェースを使用してNOR Flashをプロセッサのブートデバイスに使用した場合、起動時間が長くなりシステムとして問題となる場合があります。このような問題を解決するため、 Octal SPIやHYPERBUS™ を始めとするxSPI (eXpanded SPI) 準拠の高速シリアルインターフェース注1では次のような高速化が図られています。
データ幅の拡張
従来のSingle(1bitデータ幅)に加えて、Dual(2bit)、Quad(4bit)、Octal(8bit)のように複数のデータ幅をサポートしています。なお、これらは複数のデータ幅を持ちますがシリアルインターフェースに分類され、現在はあまり使われなくなったアドレス/データバスを別々に持つパラレルインターフェースのメモリとは異なります。
クロック同期の工夫
従来のクロックの片エッジに同期する SDR (Single Data Rate) に加え、クロックの両エッジに同期する DDR (Double Data Rate) をサポートしています。複数のDQピン(データピン)上でどのようなデータをやり取りをすればよいかは転送プロトコルによって決められています。インフィニオンテクノロジーズのNOR Flashでは、Legacy SPI (1bit) の転送プロトコルは 1S-1S-1S と呼ばれ、”コマンド” – ”アドレス” – ”データ” が全て1bit幅のSDRで転送されます。Quad SPI では 1S-4S-4S や 1S-4D-4D のように ”コマンド” が1bit幅のSDRで、それに続く ”アドレス” – ”データ” が4bit幅のSDRやDDRの転送プロトコルをサポートします。また、Octal SPIでは全て8bit幅DDRの8D-8D-8Dをサポートします。
クロックの高速化
従来のSPIのクロック周波数は最大で50MHz程度ですが、Quad SPIでは100MHzほど、Octal SPIやHYPERBUS™は200MHzに達します。
HYPERBUS™ / Octal SPI インターフェースの特長
高速データスループット
先の説明のとおり、 Octal SPIおよびHYPERBUS™の一番の特長は何と言っても高いスループットです。以下はインフィニオンテクノロジーズのシリアル/パラレルの各種インターフェースとスループットのグラフです。赤枠で示す200MHzのOctal SPI(OSPIと表記)とHYPERBUS™は共に400MBps (Byte/s) の高データスループットを実現します。(最新のHYPERBUS™ extended-IO (x16)のHYPERRAM™ 3.0@200MHzは800MBpsです。)
デザイン簡素化
HYPERBUS™ や Octal SPI を用いることで NOR Flashと疑似SRAM(PSRAM: Pseudo SRAM)のピンが共通化され、ピン数やPCBレイヤ数が少なく済むメリットがあります。以下は HYPERRAM™ とHYPERFLASH™ を用いた HYPERBUS™ による接続例です。
チップセットパートナー・エコシステムサポート
現在多くの半導体メーカーが HYPERBUS™ や Octal SPI インターフェースを持つICを提供しており、それらに対応したメモリを使用する場面が増えています。マイコン・プロセッサ・FPGA・SoC等の HYPERBUS™ や Octal SPI のサポート状況はMemory Chipset Partnersで確認できます。
インフィニオン テクノロジーズのシリアルインターフェースのメモリのご紹介
HYPERBUS™ や Octal SPI を使用してどのようなメモリに接続できるのでしょうか?
インフィニオン テクノロジーズは SEMPER™ や HYPERFLASH™ というNOR Flash、HYPERRAM™ という疑似SRAM (PSRAM)をラインアップしています。SEMPER™ は HYPERFLASH™ より新しい世代のNOR Flashです。
SEMPER™
- 動作電圧 : 1.8V or 3.0V
- インターフェース : HYPERBUS™, Octal SPI, Quad SPI
- DDR読み込み帯域 : 400MBps (Quad SPI: 100MBps)
- ISO 26262 ASIL-B準拠/ASIL-Dレディ, IEC 61508 SIL 2レディ
- データ信頼性 : ECC, CRC
- データ耐久性 : 100万回以上の高耐久性, 25年長期保持
- インダストリアルグレード : -40℃〜+85/105℃
- 車載グレード : -40〜+85/105/125℃
- パッケージ : 24-FBGA, 16-SOIC, 8-WSON注2
- 容量 : 512Mb, 1Gb, 2Gb
- 45nmプロセス注3
注2: HYPERBUS™とOctal SPIは24-FBGAのみ
注3: HYPERFLASH™の65nmからより微細化
HYPERRAM™ 2.0
- 動作電圧: 1.8V or 3.0V
- インターフェース: HYPERBUS™ or Octal SPI
- アクセスタイム: 35ns(最大)、クロックレート: 200MHz(最大)
- DDR読み込み/書き込み帯域: 400MBps(x8), 800MBps(x16)
- スリープ電流(Hybrid Sleep, データ保持可): 85℃で25uA(最大) [1.8V, 64Mb]注4
- アクティブ電流: 85℃で25mA(最大) [1.8V, 64Mb]注4
- インダストリアルグレード: -40℃〜+85/105℃
- 車載グレード: -40℃~125℃
- パッケージ: 24-ball BGA 6mm x 8mm (x8), 49-Ball 8mm x 8mm (x16)注5
- 容量: 64Mb, 128Mb, 256Mb, 512Mb
注4: 消費電流は電圧や容量で異なる
注5: x16は256Mb、インダストリアルグレードのみ
まとめ
今回は xSPI (eXpanded SPI) として標準化されている高速シリアルROM/RAMインターフェースである HYPERBUS™ と Octal SPI をご紹介しました。システム要件の複雑化・高密度化・高速化により、より高速でシンプルなメモリインターフェースが重要になります。 HYPERBUS™ と Octal SPIはその解決策の一つとなるでしょう。また、インフィニオン テクノロジーズでは、これらのインターフェースに対応する各種メモリを取り揃えておりますので、あわせてご検討ください。