商品基礎情報
製品概要
製品の複雑化、高密度化が進む現代において、構造物や音響システムの正確な周波数応答関数(FRF)を測定することは、製品開発の効率化と性能向上に不可欠です。しかし、従来の加振試験では、設置スペースの制約や高周波数域での精度維持といった課題がありました。
Simcenter Qsources インテグラルシェーカー Q-ISH は、これらの課題を解決するために設計された、革新的な加振ソリューションです。狭いスペースでも、迅速かつ高精度なFRF測定を実現します。
Q-ISHは、そのコンパクトなサイズにも関わらず、車両全体を加振するのに十分なパワーを備えています。 自動車の車体全体、パワートレイン、サスペンションシステムから、航空機、鉄道車両、さらには最大10m、15,000kgの機械まで、幅広い対象物の加振に対応します。
より狭い空間での三軸加振を可能にするオプション「Q-TRX」は、Q-ISH専用の面内加振アダプタです。加振方向の角度を変えた複数回の加振で、局所座標系やグローバル座標系でのFRF再構成を可能にします。
Q-ISHの主な利点
- 車両全体のFRF測定に対応: フルビークルレベルの加振試験に最適化されています。
- 広い周波数範囲: 20 Hzから2,000 Hzまでの広帯域に対応し、低周波から高周波までの現象を捉えます。
- 設置自由度の高さ: あらゆる取り付け角度に対応し、アクセスが困難な狭い場所でも加振が可能です。
- 容易な設置: 特許取得の自己支持・自己調心機能により、外部サポートや複雑なアライメント作業が不要です。
- インライン駆動点加速度センサー: 加振点での正確な応答測定を可能にします。
- 特許取得済み内部3Dサスペンションシステム: 慣性質量を動的に分離し、常に正確な方向に加振力を伝達します。
- 保護機能内蔵: 機械的および電子的な保護機能を備え、信頼性の高い運用を実現します。
効率的なテストプロセス
Q-ISHの最大の特徴は、特許取得済みの内部3Dサスペンションシステムです。 これにより、加振器本体の慣性質量が試験対象物から動的に分離され、加振力は常に内部スティンガーの軸方向に正確に伝達されます。 その結果、従来の加振器テストで必須だった外部サポートの設置や精密なアライメント調整といった手間のかかる作業が不要となり、テスト準備時間の大幅な短縮と効率の飛躍的な向上を実現します。さらに、オペレーターは1人でデータ収集作業を行うことが可能です。
Q-ISHの利用構成
Q-ISHは、目的に応じて2つの構成で利用できます。
駆動点(DP)加速度センサーとの組み合わせ
- 特殊なベルハウジング内に加速度センサーが統合され、エラストマーによって加振器本体から分離されています。
- 加振力はベルハウジングを通して伝達されるため、加速度センサーは加振点中心の表面加速度のみを正確に測定します。 これにより、非常に高精度な駆動点FRF測定が可能です。
M5ダイレクトマウントスタッドの使用
- 加振点に外部加速度センサーが設置されている場合に適しています。
- 各加振点にあらかじめM5マウントスタッドを取り付けておくことで、Q-ISHを加振点から加振点へと移動させながら測定を行う「ロービング加振」を効率的に実施できます。 ドライブラインやサスペンションのインターフェース箇所などのFRF取得に有効です。


Q-ISHのアプリケーション事例
Q-ISHは、その汎用性と高精度な性能により、様々な分野の振動・音響試験で活躍します。
構造伝達関数測定
- 使用方法: 部品間やシステム全体の振動伝達特性を評価します。Q-ISHの小型・軽量性と自己支持機能により、複雑な構造の任意の位置・角度で正確な加振が可能です。
直接音響振動FRF測定
- 使用方法: 車室内騒音など、構造物から放射される音響応答を測定します。構造物への直接取り付けが可能で、音響空間への影響を最小限に抑えつつ加振できます。
駆動点FRF測定
- 使用方法: 加振点自身の応答を正確に測定します。統合された駆動点加速度センサーにより、加振力と応答加速度を同一箇所で高精度に測定でき、モーダル解析の入力データなどに活用できます。
伝達経路解析 (TPA)
- 使用方法: エンジン、モーター等の加振源から乗員の耳元やシートレールなどの応答点までの振動・騒音伝達経路を特定します。 Q-ISHは小型なため、エンジンマウントやサブフレーム取り付け部といった、ハンマー加振では困難または不可能な狭隘箇所でも3方向からの加振が可能です。
構造モーダル解析
- 使用方法: エンジン単体やパワートレイン全体など、コンポーネントの固有振動数、モード形状、減衰比を同定します。 自己支持・自己調心機能と駆動点加速度センサーの組み合わせにより、セットアップが容易で高精度なモーダルテストを実現します。
車体ベンチマーキング
- 使用方法: 競合車や従来モデルとの車体剛性や振動特性を比較評価します。一貫性のある条件下で再現性の高いFRFデータを取得できます。
ターゲット設定
- 使用方法: 設計初期段階で、目標とする振動・騒音性能を達成するための構造特性目標値を設定します。シミュレーションモデルの妥当性検証や感度解析に活用されます。
Q-ISH 技術仕様
|
3軸加速度センサー付き |
M5マウントスタッド付き |
寸法 (直径 x 高さ) |
Ø40 x 87 mm |
Ø40 x 76 mm |
総質量 |
0.38 kg |
0.37 kg |
試験体への質量負荷 |
26 g |
19 g |
設置面積 (直径) |
– |
Ø20 mm |
センサーコネクタータイプ |
マイクロドット(10-32) |
|
電源ケーブルコネクター |
オス バナナプラグ |
|
センサーケーブル長 |
50 cm |
|
電源ケーブル長 |
4 m |
|
スティンガー接続ネジ |
M5 |
|
周波数範囲 (ランダム) |
20 ~ 2,000 Hz |
|
周波数範囲 (サイン) |
40 ~ 2,000 Hz |
|
加振力レベル (RMS) |
7 Nrms (20-2000Hz 平均 6Nrms) |
|
センサータイプ |
力センサ、加速度センサ(どちらもIEPE) |
IEPE |
推奨アンプ |
Q-AMP |
面内加振アダプター Q-TRXについて - 3次元加振と超狭所測定を実現
Simcenter Qsources 面内加振アダプター Q-TRX は、Q-ISHの能力をさらに拡張するスマートなアクセサリです。 特にスペースの制約が厳しい場所や、3次元方向からの正確な加振入力が必要となる測定において、その真価を発揮します。
従来のハンマー加振や標準的なシェーカーでは、狭い箇所へのアクセスや多方向からの入力が困難な場合がありましたが、Q-TRXはこの課題を解決します
Q-TRXの主な利点
- 迅速かつ正確な伝達関数取得: ローカル座標系(取り付け面の座標系)での伝達関数を効率的に取得します。
- 加振準備の削減: 狭所での複雑なセットアップ時間を短縮します。
- 正確な駆動点情報: 統合された3軸加速度センサーにより、面内方向を含む駆動点応答を高精度に捉えます。
- FRFメタデータエラーの回避: 再現性と精度の高いFRF測定を短時間で実現します。
- 統合された3軸加速度センサー: 接着面での3方向の加速度応答を測定します。
- 最適化された設計: 3Dプリンティング技術を活用し、重量と剛性の最適なバランスを実現しています。
- 多角度からの加振: ローカルマウント方向に対して、16の固定された角度からQ-ISHを取り付け可能です。
Q-TRXの使用方法
- 取り付け: Q-TRXインターフェースを専用ツールで位置合わせし、瞬間接着剤で加振対象箇所に接着します。
- 加振: Q-ISHをQ-TRXに、定義された複数の角度(最大16角度)で順次取り付け、FRFを測定します。 付属のスティンガーエクステンションを使用することで、よりアクセスしにくい場所への加振も容易になります。
- データ処理: 測定された角度付きFRFセットは検証され、ソフトウェア処理によって目的の直交座標系(ローカルまたはグローバル座標系)のFRFに再構成されます。Siemens TestLabを使用することで直交座標を簡単に設定することができます。
- 駆動点測定: Q-TRXの3軸加速度センサーとQ-ISH内部の力センサーを組み合わせることで、インピーダンスヘッドとして機能します。これにより、インパクト試験で必要となるオフセットツールによる動的モーメントの影響を受けることなく、正確な駆動点情報を取得できます。
- 再利用: 測定後、インターフェースはクリーニングツールを使用して取り外し、次の加振箇所のために準備できます。
Q-TRXのアプリケーション事例
Q-TRXは、Q-ISHの適用範囲をさらに広げ、特に以下のような場面で有効です。
- 構造伝達関数: 狭隘部や複雑な接合部で、面内方向を含む多方向からの入力が必要な伝達特性評価。
- 直接音響振動FRF: アクセスが困難な内部構造からの音響放射測定。
- 伝達経路解析 (TPA): 特に複雑な取り付け部(ブッシュ、マウントなど)における、ローカル座標系での正確な3次元伝達特性評価。
- 構造モーダル解析: 複雑な形状を持つ部品や、取り付け状態での面内方向の挙動が重要な場合のモーダルパラメータ同定。
- 駆動点FRF: 面内方向を含む、より完全な駆動点応答特性の測定。
Q-TRX 技術仕様
周波数範囲 |
20~800 Hz(Q-ISHとの組み合わせ) |
質量 |
13g |
取り付けネジ (Q-ISH用) |
M5 |
設置面積 (直径) |
Ø20 mm |
接続方法 |
接着 |
センサータイプ |
IEPE 3軸加速度センサー |
ケーブル長 |
250cm(BNC接続) |
まとめ
Simcenter Qsources インテグラルシェーカー Q-ISHは、自己支持・自己調心機能、内蔵駆動点センサー、そして広い周波数範囲により、狭所での高精度かつ効率的なFRF測定を実現する画期的な加振器です。さらに、面内加振アダプター Q-TRXを組み合わせることで、スペースの制約が非常に厳しい場所や3次元入力が必要な測定にも対応可能となり、現代の複雑化する製品開発における振動・音響試験の可能性を大きく広げます。
高精度、高効率、そして優れた操作性を備えたQ-ISHとQ-TRXは、自動車、航空宇宙、産業機械など、幅広い分野における製品性能向上と開発期間短縮に貢献します。