商品基礎情報
製品概要
Simcenter Qsources Q-HSHは、これまでの常識を覆す超小型・軽量設計ながら、最大13kHzまでの高周波領域で、極めて高い再現性を持つ構造加振を実現するために開発された高周波シェーカーです。
自動車部品、精密機器、電子デバイスなど、ますます複雑化・小型化する製品の振動特性評価において、測定対象物への影響を最小限に抑えつつ、アクセスが困難な狭小スペースでも正確なデータを取得したいというニーズが高まっています。
Q-HSHは、特許取得済みの独自の内部サスペンション機構により、シェーカー本体の質量(イナーシャマス)が試験対象物に与える影響(マスローディング)を2g未満という驚異的なレベルまで低減しました。これにより、対象物本来の動特性を損なうことなく、信頼性の高い周波数応答関数(FRF)測定を可能にします。
内蔵された高精度な1軸力センサーと組み合わせることで、加振点における力を正確に捉え、高周波域までカバーする高精度なデータ収集を実現します。
主な特徴
- 超小型・軽量設計: 直径20mm、質量わずか30g。限られたスペースへの設置に最適です。
- 極めて低いマスローディング: 試験対象物への動的質量負荷は2g未満。対象物への影響を最小限に抑えます。
- 広帯域加振: 250Hzから最大13kHzまでの高周波領域をカバーします。
- 高精度1軸力センサー内蔵: 加振力を正確に測定し、高精度なFRF測定を実現します (ICP® / IEPE互換)。
- 特許取得済み3D内部サスペンション: イナーシャマスを動的に分離し、あらゆる方向での設置と正確なアライメントを維持します。
- 効率的なロービング加振: 交換可能なスティンガーを複数設置し、1つのドライブユニットを付け替えることで、多点測定を効率化します。
- アセンブリ内部への設置可能: 製品を組み立てた状態での内部加振試験が可能です。
- 電子保護回路内蔵: 過負荷からセンサーと駆動回路を保護します。
導入メリット
- 測定限界の打破: エンジンルーム内部、ギアボックス、電子機器筐体など、従来は加振器の設置が不可能だった箇所での測定が可能になります。
- 高精度なデータ取得: 試験対象物への影響を最小限に抑えることで、より現実に近い、信頼性の高い測定結果を得られます
- 設置自由度の向上: 内部サスペンションにより、垂直・水平・斜めなど、あらゆる方向での設置が可能です。
- 試験効率の劇的向上: ロービング加振や、複数のシェーカーを用いたMIMO試験[10]により、測定時間を大幅に短縮できます。
- ダウンタイムの削減: 交換可能なスティンガー設計により、万が一の破損時も迅速な復旧が可能です。
Q-HSH 搭載技術の解説
革新的な構造:内部サスペンションシステム
Q-HSHの最大の特徴は、イナーシャマス(駆動部)とスティンガー(加振接触部)を動的に分離する、特許取得済みの内部3Dサスペンションシステムです。スティンガーはコイル巻線の土台となり、試験対象物に接着剤で直接固定されます。駆動電流が流れると、イナーシャマスが反力を発生させますが、このイナーシャマスは内部サスペンションによって支えられており、スティンガーとは独立して動きます。これにより、シェーカー本体の質量が試験対象物に固定される影響(マスローディング)を極限まで低減し、2g以下という値を実現しました。このユニークな構造が、対象物の動特性に与える影響を最小限に抑えた高精度な加振を可能にします。
精度な力測定とFRF取得
イナーシャマスには、加振方向(スティンガーに垂直な方向)の力を高精度に測定する1軸力センサーが内蔵されています。このセンサーは、汎用性の高いICP® (IEPE)タイプであり、既存のデータ収録システムとの接続も容易です。測定された加振力データと、別途計測した応答(加速度など)から、信頼性の高い周波数応答関数(FRF)を算出できます。
効率的な測定プロセス:ロービング加振とMIMO
Q-HSHは、試験の効率化にも大きく貢献します。予め測定したい箇所に複数のスティンガー(コイルアセンブリ)を接着しておけば、一つのイナーシャマス(ドライブユニット、力センサー内蔵)を付け替えていくだけで、多点の加振試験を迅速に行うことができます(ロービング加振)。 さらに、複数のQ-HSHシェーカーとSimcenter Testlabソフトウェアなどを組み合わせ、それぞれに非相関な信号を入力して同時に加振するMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)試験を行えば、データ収集時間をさらに短縮することが可能です。
優れた設置性と耐久性
手のひらに収まるほどの超小型サイズ(Ø20 x 25mm)により、複雑な構造物の内部や部品間の狭い隙間など、これまでアクセスが困難だった場所への設置が容易になりました。内部サスペンションは、どのような取り付け角度でもイナーシャマスのアライメントを適切に保つため、設置方向の制約が少ないのも利点です。 また、消耗部品であるスティンガーは交換可能な設計となっており、長期的な運用コストの削減とダウンタイムの最小化に貢献します。内蔵の電子保護回路は、意図しない過大入力から内部センサーと駆動回路を守ります。
アプリケーション事例
Q-HSHは、そのユニークな特性を活かし、幅広い分野における高周波振動試験、モーダル解析、伝達経路解析(TPA)、異音(NVH)解析などで活躍します。
高周波FRF試験 (最大13kHz)
- 用途: 部品単体から複雑な構造物まで、高周波域における動特性(共振周波数、減衰比、振動モード)を正確に評価します。
- 対象例: 各種センサー、小型アクチュエーター、電子基板、軽量構造部品など。
車両全体
- 用途: エンジン、トランスミッション、排気系、ブレーキシステム、ステアリング、ドアミラー、インストルメントパネル、車体パネルなどの振動・異音(NVH)解析に使用されます。
- 活用例: エンジンルームやトランスミッション内部など、狭く高温になる可能性がある箇所での加振、サブフレームやボディの伝達特性評価。
サブコンポーネント
- 用途: 自動車部品(ターボチャージャー、インジェクター、ポンプ、モーター、ECU)、航空宇宙部品、家電製品のコンポーネントなどの単体振動試験、耐久性評価に適用されます。
- 活用例: 小型部品の精密なモーダル解析、高周波での共振点特定。
メカトロニクス製品
- 用途: ハードディスクドライブ(HDD)のアクチュエーターやヘッドアセンブリ、光学ドライブのピックアップ、精密モーター、医療用精密機器、カメラモジュールなど、微小な振動が性能にクリティカルな影響を与える製品の特性評価、品質管理に利用されます。
- 活用例: 製品内部の微小部品への直接加振による共振特性評価、動作時振動のシミュレーション。
技術仕様
寸法 |
Ø20 mm × 高さ25 mm(ケーブル込み30 mm) |
総質量 |
30 g |
試験体への動的質量負荷 |
< 2 g |
スティンガー接地面直径 |
Ø7 mm |
センサーコネクター |
マイクロドット (10-32) |
センサーケーブル長 |
50 cm |
電源ケーブル長 |
4 m |
電源ケーブル端子 |
オス型バナナ端子 |
加振周波数範囲 (メーカー推奨) |
250 Hz ~ 13,000 Hz |
センサー周波数範囲 (±2dB) |
300 Hz ~ 10,000 Hz |
出力加振力(rms) |
0.8 N |
内蔵センサータイプ |
IEPEタイプ |
推奨アンプ |
Q-AMP |