WPTと周波数 (2)

今回は前回に続き WPT とその周波数の特徴についてもう少し深掘りしてみようと思います。

目的は下記の WPT の3 つの周波数帯の違いについて理解を深めることにあります。

最初に波長について考えてみたいと思います。

【波長 (Wavelength)】

波長とは、波の周期的な長さの事を言います。周波数と密接な関係があり、周波数と波長は反比例します。
真空中の光速 (Speed of light) を c [m/s] 、波長 (Wavelength) を λ [m]、周波数 (Frequency) を f [Hz] とすると、真空中の波長は以下のようにあらわすことができます。
λ=c/f
真空中の光速は 299,792,458 [m/s] ≒ 300M [m/s] であることから各周波数帯の波長は以下のようにまとめることができます。

波長はWPTを構成する様々なパラメータに関与します。

【空中線 (アンテナ : Antenna)】

マイクロ波という電波で電力を伝送する WPT は電波伝搬にアンテナを用います。
(アンテナの事を電波法下では空中線と呼びます。)
一般的にアンテナのサイズと波長は比例関係にあります。

この事を最も構造が簡単な線状アンテナの基本形であるダイポールアンテナで示します。

ダイポールアンテナは 2 本の直線状の導体 (エレメント) で構成されます。
各エレメント長は λ/4、全体で λ/2 です。(厳密には数%短縮します)
ダイポールのサイズはλに比例するため、波長が長い (周波数が低い) ほどサイズが大きくなることがわかります。
920MHz帯 (16.3cm) と比較して 2.4GHz帯 (6.1cm) は 1/2.3、5.7GHz帯 (2.6cm) は 1/6.3 のサイズです。

もう一つよく使われる平面アンテナの基本形である矩形マイクロストリップパッチアンテナ (以下パッチアンテナ) で示します。

パッチアンテナは誘電体基板とその両面に放射導体板と地導体板で構成されます。
ここでも放射導体板の基準となる長さは λ’/2 です。
(λ’ としているのは誘電体基板による波長短縮を考慮しているためですが、ここでの議論においては波長と考えていただいて差し支えありません。)
このことから、一般論としてアンテナサイズという点においては周波数が高い方が有利です。

小型のアプリケーションを志向する場合、周波数の高いシステムを選択することはアンテナ設計という観点でハードルが下がると言えます。
ただし、波長の長い920MHz帯において、アンテナを小さくできないかというとそういうわけではありません。
課題であるアンテナサイズの小型化は920MHz帯のシステムにおける差別化の1つのポイントと言えるのではないでしょうか。

次回は波長についてもう少し掘り下げ、電波伝搬における各周波数帯の違いを見てみたいと思います。

第一級陸上無線技術士
Expert
勝永　浩史