医療環境で求められる演色性(CRI)とチアノーゼ観測指数(COI)について解説
医療施設の照明環境において、単なる「明るさ」以上に重視すべきスペックをご存知でしょうか?
正確な診断や処置が求められる現場では、血液や臓器の「赤色」を忠実に再現する能力や、患者の顔色の変化(チアノーゼ)を瞬時に見抜くための特殊な光の特性が不可欠です。しかし、一般照明の基準だけでは、これらの「医療の質」に関わる光の要件を満たせない場合があり、専門的な知識が必要です。
本記事では、医療用LED選定の重要指標である「演色性(CRI)」、特に赤色の再現を示す「R9」の値と、チアノーゼの早期発見に関わる「COI(チアノーゼ観測指数)」について掘り下げます。なぜ医療現場でこれらの数値が厳格に求められるのか、また規格で推奨される基準値とは何かについて、分かりやすく解説した記事をご紹介します。
医療環境において演色性(CRI)はどのように適用されるのか、そしてチアノーゼ観測指数(COI)とは何か?
医療現場における照明の重要性
特定の屋内環境、たとえば医療施設における診察室や手術室などには、独自の照明要件が存在します。外科手術室の光は、外科医が組織、血液、身体構造を見分けるために、赤色のトーンの微細な濃淡を識別できるものでなければなりません。
救急部門(ER)などの診察室においては、臨床医は目、肌の色艶、臓器の色を確認する必要があります。「色」は、感染症、血行不良、黄疸(おうだん)、その他の重要な診断情報を明らかにします。このような環境の照明には、色温度とCRI(演色性)のバランスが求められます。本来の色を見るためには、自然光が鍵となることもあります。最適な照明は、診断と治療におけるスピードと正確性をサポートするのです。
また、適切な照明は、臨床や手術以外のスペースの質も高めます。待合室や、老人ホームなどの居住施設において「温かみのある」色温度(CCT)の照明を用いることは、スタッフや患者、そして面会に訪れる友人や家族に視覚的な安らぎ(快適さ)を提供します。光源の色温度は、患者の睡眠や気分にも影響を与えることが示されており、これらは治癒やウェルビーイングを促進する要因となります。(このトピックの詳細については、下記ホワイトペーパー『健康のための照明:ヒューマンセントリックライティング(人間中心の照明)』をご参照ください)
照明レベルまたは照度 (Illuminance)
照度とは、光源から放射された光のうち、特定の平面に入射する光の量を指します。単位は「1平方メートルあたりのルーメン」で測定され、これはルクス(lux)とも呼ばれます。
医療施設においては、医師や医療従事者が業務を正確に遂行できるよう、作業面(ワークサーフェス)や処置エリアで十分な照度を確保することが極めて重要です。
具体的な利点は以下の通りです。
- エラーの削減: 医療チームによる複雑な処置や、投薬時のミス(ヒューマンエラー)を減らすことができます。
- 視覚のサポート: 視覚に障害を持つ方々の助けになります。
- 治癒の促進: 適切な照度は良質な睡眠を促し、患者の回復を高めます。さらには、患者の動揺(不穏・興奮状態)を鎮め、痛みを和らげる効果さえあります。
また、照度は物理的な危険やその他のリスクから高い安全性を維持するためにも不可欠です。医療施設の照明には、廊下やその他の機能的なエリアを照らすために、十分な明るさ(ルクス)を提供することが求められます。
照明基準
北米照明学会(IESNA)は、『病院および医療施設の照明(Lighting for Hospitals and Healthcare Facilities)』に関する具体的なガイドラインを提供しています。この出版物には、医療施設内のあらゆる種類のスペースにおける推奨照度(ルクス)が記載されています。これらのガイドラインは、州やその他の医療照明基準、ならびに規制要件において広く参照されています。
CCTとCRIを用いた最適な医療照明の設定
CCT(相関色温度) 患者の診察や観察が行われる臨床現場において、最適な光の温度(色温度)は 4000 K〜4500 K、あるいはそれ以上です。ただし、色温度や光色が異なれば、患者の異なる状態を際立たせることができます。 例えば、3500 Kの照明は、赤や黄色の色調を強調します。一方で、5000 K付近の照明(昼光色に近い)は、人間の目にとって特に負担が少なく、長時間の手術により適している可能性があります。
CRI(演色評価数) 臨床環境において色の再現性(演色性)は重要であり、手術室においてはとりわけその重要性が高まります。手術用照明としては、高い色忠実度を提供する CRI値 90〜100 の範囲が最適です。
CRIは通常、標準的な色見本(R番号でラベル付けされたもの)のグループに対する光源の全体的な再現精度を示す平均値(Ra:平均演色評価数)として報告されます。臨床用照明においては、特に赤色の色見本である「R9」の値が高い必要があります。これは赤色のトーンを正確に再現できることを意味し、組織や臓器を識別する上で極めて重要です。
(推奨基準)
- 診断室、検査室、手術室、および処置室エリア: CRI 90以上の照明を使用すべきです。
- 非臨床および非手術エリア: CRI 80以上でも許容されます。
- 同一エリア内のすべての照明器具(Luminaires)は、同じCRI値で統一するべきです。
医療用照明における追加の考慮事項:チアノーゼ指数 (COI)
臨床用照明を評価するもう一つのアプローチとして、「チアノーゼ指数(COI)」があります。 チアノーゼとは、皮膚や粘膜が青紫色に変色する状態を指します。この状態は、血液循環の悪化や、赤血球中の酸素レベルの低下を示唆するものです。通常、何らかの医学的治療を要する基礎疾患の兆候となります。 したがって、クリニックや病院の照明には、こうした病状を容易に発見できるよう、肌の色調を正確に再現することが求められます。
「チアノーゼ観察指数(COI:Cyanosis Observation Index)」は、オーストラリアおよびニュージーランドにおいてガイドラインとして確立されており、規格『AS/NZS 1680.2.5:2018』に記載されています。 「チアノーゼ対応(Cyanosis Compliant)」とみなされるためには、医療用診察灯は以下の条件を満たす必要があります。
- COIが 3.3 以下であること (※COIは、2種類の血液タイプ(酸素飽和度100%と50%)を照らした際の「試験光源」と「4000Kの基準光源」との見え方(CIE 1976 UCS色度図上の座標)から算出されます。数値は低いほど優れています。)
- CCT(相関色温度)が 3300 K 〜 5300 K の範囲内であること
- CRI(演色評価数)が 80超(>80)であること
以下の表は、Luminus社製白色LEDの代表的なCOI値を示しています。
|
Luminus LED製品シリーズ |
CCT-CRI-ファミリーコード |
COI |
|
Smooth White (TS31) |
40-95-TS31 |
0.26 |
|
Smooth White (TS31) |
50-95-TS31 |
0.27 |
|
Gen 4 Standard (AC40) |
40-95-AC40 |
0.5 |
|
Gen 3 Standard (AC30) |
40-95-AC30 |
0.62 |
|
Hospitality (TC41) |
40-95-TC41 |
0.69 |
|
Gen 3 Standard LED (AC30) |
35-95-AC30 |
1.41 |
|
Salud (21C2) |
MP-3030-21C2-35-90 |
1.47 |
|
Smooth White (TS31) |
35-95-TS31 |
1.7 |
|
Salud (21C2) |
MP-3030-21C2-40-90 |
2.19 |
|
Gen 4 Standard (AC40) |
35-95-AC40 |
2.2 |
|
Gen 4 Standard (AC40) |
50-95-AC40 |
2.78 |
|
Gen 3 Standard (AC30) |
50-95-AC30 |
2.79 |
|
Hospitality (TC41) |
35-90-TC41 |
2.87 |
まとめ
医療環境で求められる演色性(CRI)とチアノーゼ観測指数(COI)とは?
医療現場における照明は、単なる明るさの確保ではなく、医師の「目」を正確にサポートする機能が求められます。 その選定において鍵となるのが、今回解説した2つの指標です。
1つ目は、血液や臓器の「赤」を忠実に再現するための演色性(CRI)であり、特に一般的な指標(Ra)には含まれない赤色再現指数「R9」の高い数値が不可欠です。 2つ目は、酸素不足による皮膚の変色を早期に発見するためのチアノーゼ観測指数(COI)です。国際規格では、この数値が3.3以下であることが推奨されています。
「高いR9」と「低いCOI」を両立した光源こそが、安全で信頼性の高い医療環境を実現します。当社では、これら厳しい医療要件を満たすLuminus社のLED製品をご提案可能です。最適なスペクトル選定について、ぜひお気軽にご相談ください。