商品基礎情報
製品概要
Simcenter Qsources Mid High Frequency Volume Source (Q-MHF) は、中周波数から高周波数領域 (150 Hz ~ 10,000 Hz) における周波数応答関数 (FRF) の測定に特化した、汎用性の高いモノポール体積加速度音源です。
本体内部には高精度な参照センサーが統合されており、音源強度 (体積加速度) を正確に測定できます。 この音源は、特に自動車業界のOEMメーカーや部品サプライヤーにおいて、伝達経路解析 (TPA) や空中音源定量化 (ASQ) といったNVH (騒音・振動・ハーシュネス) 関連の詳細な調査・解析に広く活用されています。
特徴
Q-MHF は、効率的で高精度な音響測定を実現するための様々な特長を備えています。
- 広帯域な中高周波加振: 150 Hz から 10,000 Hz という広い周波数範囲で、安定したモノポール音響加振を提供します。
- 理想的なモノポール音源: ノズル先端 (Ø30mm) からの音響放射は、ほぼ完全な無指向性を持ち、回折の影響も無視できるレベルに抑えられています。 これにより、再現性の高い正確な測定が可能になります。
- 高精度な内蔵センサー: ノズル開口部に統合された参照センサーにより、体積加速度を直接、かつ正確に測定します。 このセンサーは、測定環境の音響的な影響をほとんど受けません。
- 迅速な相反FRF測定: 高い測定精度と再現性により、相反定理に基づいた音響伝達関数の測定を迅速かつ効率的に行うことができます。
- モジュラーチューブ設計: 放射ノズルに繋がるチューブはモジュラー式 (標準で2mと4mが付属) となっており、長さを選択することで特定の周波数帯域にエネルギーを集中させることが可能です。例えば、パスバイノイズ評価向けに150Hzから10,000Hzまでの測定をカバーする長さや、5kHz以上の高周波数域でより高いレベルが必要な場合に適した長さを選択できます。
- 堅牢性と信頼性: 強化された軽量ドライバーハウジングと、過大入力からドライバーを保護する電子回路を内蔵しており、長期間にわたる安定した動作と高い耐久性を実現しています。
- 簡単な設置 (オプション): 専用のヘッドレスト位置決めツール (Q-MHF-EPT) を使用することで、工具不要で簡単かつ正確に音源を設置でき、無指向性能を最大限に引き出すことができます。


導入メリット
- 開発期間の短縮: 高精度かつ迅速な測定により、車両開発プログラムにおけるサウンドパッケージの性能評価や対策効果の検証を効率化し、開発期間の短縮に貢献します。
- 高精度なデータ取得: 環境の影響を受けにくい内蔵センサーと理想的なモノポール特性により、信頼性の高い音響伝達関数データを取得できます。
- 多様なNVH課題に対応: 自動車の車室内音響、部品単体の振動音響特性評価、音響透過損失測定など、幅広いNVH関連の測定・解析ニーズに対応します。
- 長期的な安定運用: 堅牢な設計と保護回路により、研究開発部門における長期的な使用にも耐えうる信頼性を提供します。
アプリケーション事例
Q-MHFは、以下のような様々な音響測定・解析アプリケーションで活用されています。
- 空中音源定量化 (ASQ: Airborne Source Quantification)
車両内外の空中音源の寄与率を特定できます。エンジン、排気系、タイヤなど、車両内外の様々な音源からの音響パワーや寄与度を正確に特定します。Q-MHFを既知の音源として使用し、マイクロホンアレイなどで測定した音圧から逆算して音源情報を得ます。
- 伝達経路解析 (TPA: Transfer Path Analysis)
各構造・空間の経路を通る音や振動の伝達関係を定量化します。騒音・振動が車室内などの受音点に到達するまでの経路 (構造伝播、空気伝播) を特定・定量化します。Q-MHFは、空気伝播経路の寄与を評価するための正確な空中音加振源として機能します。
- 振動音響モード解析 (EMA: Vibro-acoustic Modal Analysis)
構造の固有振動特性を評価し、音響応答と相関分析に使用します。車室空間やコンポーネントの音響モード形状や周波数特性を特定します。Q-MHFで音響空間を加振し、マイクロホンで応答を測定することで、音響モードパラメータを同定します。
- 統計的エネルギー解析 (SEA: Statistical Energy Analysis)
高周波数帯域における複雑な構造の振動・音響エネルギー伝達特性を解析します。Q-MHFを用いてサブシステム間の音響結合損失係数などを実験的に求める際に利用されます。
- 車両/ボディの空中音遮断性能評価 (Vehicle/Body Airborne Isolation)
外部騒音の侵入を低減する設計検証に使用します。車体パネルやシーリングなどの遮音性能を評価します。Q-MHFを車外または車内に設置して加振し、反対側での音圧レベルを測定することで、透過損失などを評価します。
- ボディパネルおよびトリムの透過特性評価 (Body Panel and Trim Transmissibility)
各部品の音響透過率を評価し、防音設計に反映させることができ、ダッシュパネル、ドアトリム、フロアカーペットなどの個々の部品が音をどの程度透過・吸収するかを評価します。Q-MHFでパネルを加振し、透過音や吸音特性を測定します。
技術仕様
ノズル直径 |
Ø30mm |
チューブ長 |
2m、4m、6m(交換式) |
質量 |
8kg |
センサーコネクタ |
マイクロドットコネクタ(10-32) |
電源ケーブルコネクタ |
オス バナナ型 |
電源ケーブル長 |
4m |
周波数応答(±2dB) |
150Hz〜10,000Hz |
音圧レベル |
109dBLw ホワイトノイズ |
95dB(1m 半自由空間) |
|
内蔵センサータイプ |
電圧出力、IEPEタイプ |
推奨アンプ |
Q-AMP |
まとめ
Simcenter Qsources Q-MHFは、自動車分野を中心とした高精度NVH解析において、再現性と信頼性の高い中高周波音響加振器です。高周波領域での空間伝達関数の取得や防音パッケージの評価に最適で、柔軟なチューブ構成と内蔵センサーにより、設置や測定も容易です。高周波対応のモノポール音源をお探しの方は、ぜひSimcenter Q-MHFの導入をご検討ください。